民主党政権は八ッ場ダム本体工事の中止を表明していますが、関係都県ではあくまでダム本体は造られるとの想定で来年度の予算付けがされています。
群馬県は、八ッ場ダム直下の吾妻渓谷に水力発電所を計画してきましたが、この発電所は八ッ場ダム本体と一体の計画のため、ダム本体が中止になれば計画は頓挫します。けれども、来年度の県予算にはこの発電所の関連費用も組み込まれています。
2010年2月14日 東京新聞群馬版より転載
ー宙浮く計画に県予算 八ッ場ダム水力発電所 関連費1億円計上ー
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20100214/CK2010021402000104.html
県企業局は、吾妻川での八ッ場(やんば)ダム(長野原町)建設を前提に、ダム本体に付属して設置を計画する水力発電所の関連費用として、県の二〇一〇年度当初予算案に約一億円を計上した。発電所はダム本体と同じ一五年度の完成が予定されたが、前原誠司国土交通相のダム建設中止表明で、設置計画は宙に浮いた状態となっている。 (中根政人)
設置が予定された水力発電所の名称は「県営八ッ場発電所」。〇八年九月に八ッ場ダムの基本計画が変更された際、利用目的に「発電」が追加された。建設費は約六十億円を暫定的に見込み、最大出力は一万千七百キロワットが想定された。
県企業局は「百メートル以上に及ぶダム本体と下流部の落差や、ダム湖の貯水力を有効活用できる」と発電所建設の意義を強調する。だが肝心のダム本体建設は政権交代で凍結状態となり、発電所建設の見通しも立たない。
また、法的な中止を意味するダムの基本計画廃止に向けた調整は手付かずで、ダムの発電利用を目的とした県の負担金(総額四億六千万円)が発生している。県企業局は「『ダム建設』の目標は変わっていない」とし、当初予算案に一〇年度の負担金など一億九百万円を盛り込んだ。
一方、吾妻川は東京電力が水力発電に活用しており、ダムを完成させた場合、ダム湖の貯水量確保が必要になるため、東電が利用できる水量が減少、吾妻川での発電量が大幅に低下する恐れがある。ダムの建設計画では、国が東電に一定額の補償金を支払うことが検討されている。
県企業局は「ダムが東電の水力発電事業に与える影響を、現段階で見積もることは困難だ」という。これに対し、ダム建設中止を求める市民団体「八ッ場あしたの会」の渡辺洋子事務局長は「八ッ場発電所をつくっても、東電が失う発電量の穴埋めはできない」と指摘。補償金は数百億円に上ると試算され、ダムの総事業費は現在の四千六百億円を大幅に超えると訴えている。