八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

衆議院国交委員会会議録(2月24日、3月5日)

 第174回国会の国土交通委員会において、八ッ場ダムに関する集中審議が行われています。すでに終了した委員会の議事録が衆議院のホームページに掲載されていますのでお知らせします。
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm 
上記より一部転載

●2010年2月24日
○川内委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中島正純君。

○中島(正)委員 民主党・無所属クラブの中島正純でございます。本日は、質問の機会をいただきまして、大変光栄に思っております。ありがとうございます。

 本日は、八ツ場ダムについて御質問をさせていただきます。

 民主党及び前原大臣は八ツ場ダムの建設中止を訴えておられ、前政権のもとで行われてきたこの事業でありますので、本来、今からお話しする内容を前原大臣に質問すること自体、お門違いなことかもしれませんが、今回、八ツ場ダム事業でさまざまな不透明なことがわかりました。それを全国の皆様に知っていただくためにも、あえて御質問させていただくことを御了承ください。

 まず冒頭、八ツ場ダム問題に関して、地元の皆様の御意思を尊重され、意見交換を重ねていらっしゃる前原大臣に敬意を表します。

 私がなぜ八ツ場ダムのことについて質問をさせていただくことになったかといいますと、この八ツ場ダムについては、今まで民主党の議員の方々がいろいろな不透明なことについて御質問をされてまいりました。一番最近では村井議員も、八ツ場ダム建設地の砒素問題について御質問をされました。

 この八ツ場ダムについては、本当に不透明で疑惑の多い事業であります。私自身もいろいろな黒いうわさを聞くようになりました。それは何かといいますと、八ツ場ダムならぬ、群馬県の地元の議員さんの名前を入れて○○ダム、議員さんの名前を入れたダムの名前と地元の皆様はうわさをされております。実際に、そのうわさは本当に飛び交っております。ですから、私自身、何かこのダムには利権の問題などがあるのではないかということで調査をいたしました。そして、本日、いろいろわかったことについて御質問をさせていただきたいと思います。建設を中止すべきであるということを前提とした質問をさせていただきます。

 それでは、一つ目の質問をさせていただきます。

 昭和二十七年ごろから、この八ツ場ダムの計画の話は持ち上がりました。五十七年間が経過いたしました。しかし、ダムの本体工事はいまだ何も着手されておりません。それなのに、昨年末、平成二十一年末時点で三千四百三十四億五千万円ものお金が既に使われております。八ツ場ダムの総事業費として四千六百億円が計上されておりますが、単純に計算しても、残りは一千百六十五億五千万円しか残っておりません。

 民主党としては八ツ場ダム建設中止をうたっておりますが、前原大臣にお伺いいたします。もし建設を続行しておれば、この残り一千百六十五億五千万円でダムは完成するとお考えでしょうか。

○前原国務大臣 中島委員にお答えをいたします。

 中島委員も御承知だと思いますけれども、このダムの建設当初の総工費費用見積もりは二千百億円でございました。改定が重ねられて、最終的に四千六百億円になっているわけでございますが、今後続けたとしても四千六百億円でおさまるかどうかということについては、私は極めて不透明だと思っております。

○中島(正)委員 私自身も、到底、一千百六十五億五千万円でダムが完成するとは思えません。本体工事、湖面橋の建設、地すべり対策などなど、これからさまざまな費用が必要になるかと思われます。そうすると、また追加の予算を計上しなければならない状況になるのではないかと危惧いたしております。プラス、下流区域の関連事業などを含めると、もっと膨大な費用を国民の血税で負担しなければならないとも言われております。

 大臣政務官にお尋ねいたします。おおむねで結構ですが、今後もダム建設を続けていくとすれば、下流区域の関連事業などもすべて合わせて、ダム完成には一体どれぐらいの費用が必要となるのでしょうか。

○三日月大臣政務官 お答えをいたします。

 まず、ダム事業ですね。今大臣から御答弁がありましたように、ダム事業は当初二千百億円で計画していたものが、現在、総事業費四千六百億円で見積もりをしておりまして、平成二十年度までに三千二百十億円を執行し、平成二十一年度以降で千三百九十億円。これは内訳を申し上げれば、千三百九十億円の内訳は、本体に六百二十億円、そして生活再建関係で七百七十億円、費用を見積もりしております。

 また、水源地域整備計画、これは水源地域対策特別措置法、いわゆる水特法に基づく公共事業関係費で、総事業費九百九十七億円計画をしておりまして、うち、平成二十年度までに五百十三億円使い、平成二十一年度以降、四百八十四億円の費用が必要だということで見積もりをしています。

 また、中島委員から御質問のありました下流都県の事業費、これは総事業費が未確定でございますが、平成二十年度までに四十一億円使っており、その後幾らかかるかということについては未確定ということになっております。

○中島(正)委員 わかりました。

 今、私がお手元にお配りしております資料をごらんになっていただきたいんですが、この表は、国交省と群馬県の県土整備部提出資料及び群馬県選挙管理委員会届け出の収支報告をもとに作成しております。膨大な資料でございましたが、これを一つ一つ見比べていって、一覧表にいたしました。

 まずは資料一の方を見ていただきたいんですが、表紙に「八ツ場献金」、八ツ場ダム事業受注者からの政治団体に対する献金の一覧表。これは三年間でございます。最近の直近三年間だけで、群馬県の議員に対して四千九百二十五万円の献金がなされております。

 そして、一枚めくっていただきまして、一番上の項目のところをごらんになってください。左から、代表者名、そしてその右、政治団体の名称、献金企業、金額、年、受注件数、発注元となっております。この一番左の代表者名というのは、群馬県所属の議員の名前でございます。そして、その横に書いてあるのが、その政治団体の名称でございます。そして、八ツ場ダムの受注をしている工事業者のみピックアップしまして、その業者がこの議員たちの政治団体に献金をしている業者のみを記載いたしました。そして、その横には金額が記載されております。そして、その横には受注件数が記載されております。献金をした業者がどれだけ工事の受注をしているかということがわかりやすいように、受注の件数を記載しております。

 次に、資料二を見ていただけますでしょうか。献金企業の八ツ場ダム事業落札状況一覧表ということになっております。これは、事業は、平成十三年度から二十年度分の百万円以上に限る工事の受注の分を記載いたしました。献金については、同じく十八年から平成二十年の三年間分しか記載しておりません。そして、落札率が九五%以上の件数が二百六十四件中百八十件あるということでございます。二百六十四件というのは、この献金をしている企業が平成十三年度から平成二十年度までの間に二百六十四件の受注をしている。そのうち、落札率が九五%以上というのが百八十件もあるということでございます。

 この資料のとおり、群馬県選出の議員に献金をしている業者の工事の受注回数が非常に多いことがわかります。

 さらには、資料二の五ページ目をごらんになってください。番号三十八の南波建設株式会社、これは、群馬県の自民党県議会議員で、自民党群馬県連の幹事長南波和憲議員の奥さんが代表取締役を務める会社です。この会社は、平成十三年度から二十年度の間に二十一回も受注をしております。

 次に、資料二の一ページ目をごらんになってください。番号一のJV受注の中に入っている佐田建設、JV受注なので四社の合計ですが、十八億七千九百五十万円の受注をしております。この佐田建設は、自民党の佐田玄一郎衆議院議員の祖父に当たる元参議院議員佐田一郎さんが設立された会社で、平成十六年四月まで佐田玄一郎議員のお父さんが代表取締役をしていた親族会社です。

 さらには、八ツ場ダム受注業者から、群馬県選出の議員に多くの献金が行っております。

 ここで総務省選挙部長にお伺いいたします。業者から、小渕優子衆議院議員が代表を務める自民党支部と小渕優子衆議院議員と関連が深い自由民主党群馬県ふるさと振興支部には、最近の三年間、平成十八年から二十年の間でどれだけの寄附がなされていたのでしょうか。

○田口政府参考人 お答えいたします。

 本日配付された資料と同旨のものを質問通告いただいており、当該資料の政治団体の名称、寄附をした法人その他の団体の名称、金額、年について、群馬県選管で公表された収支報告書の要旨で確認した結果に基づいてお答え申し上げますと、まず、通告のございました株式会社ヤマトから自由民主党群馬県第五選挙区支部に対する平成十八年から平成二十年分までの寄附については、合計すると百八万円となっております。

 また、通告のございました上原建設株式会社ほか二十三の法人その他の団体から自由民主党群馬県ふるさと振興支部に対する平成十八年から二十年分までの寄附につきましては、合計すると七百六十五万円となってございます。

○中島(正)委員 それでは、再び総務省選挙部長にお伺いいたします。

 同じく、中曽根弘文参議院議員が代表を務める自民党支部には、最近の三年間、平成十八年から二十年の間でどれだけの寄附がなされていたのでしょうか。

○田口政府参考人 お答えいたします。

 配付資料の政治団体の名称、寄附をした法人その他の団体の名称、金額、年につきまして、選管の収支報告書の要旨を確認した結果に基づきましてお答え申し上げますと、通告のございました株式会社日さくほか十の法人その他の団体からの自由民主党群馬県参議院選挙区第一支部に対する平成十八年分から二十年分までの寄附については、合計すると六百四万円となってございます。

○中島(正)委員 たびたび申しわけございませんが、総務省選挙部長にお伺いいたします。

 きょう皆様のお手元にお配りしている資料を事前に総務省に確認依頼をしました。この私どもで作成した資料の内容に間違いはないでしょうか。

○田口政府参考人 本日配付されました資料の政治団体の名称、寄附または政治資金パーティーの対価の支払いをした法人その他の団体の名称、金額、年につきまして、群馬県選挙管理委員会で公表された収支報告の要旨で確認をした結果につきましてお答えを申し上げます。

 通告のございました株式会社ヤマトなどの法人その他の団体から、同じく通告のございました自由民主党群馬県第五選挙区支部ほか群馬県選管所管の二十一政治団体に対する平成十八年から二十年分までの寄附並びに政治資金パーティーの対価の支払い、収入の状況につきましては、寄附は合計で四千八百三十五万、政治資金パーティーの対価に係ります収入は合計で九十万、両者を足しますと四千九百二十五万円となるところでございます。

○中島(正)委員 ありがとうございます。

 それでは、資料一を見ていただくと、先ほど質問したとおりに、自民党小渕優子衆議院議員の政治団体には、平成十八年から二十年度の三年間だけで、八ツ場ダム工事受注業者から八百七十三万円の献金を受けております。しかし、私たちの調べられたのは政党支部だけの分でございまして、時間と人の問題で、後援会の分が調べられませんでした。ですから、これ以上にもっともっとあると思われます。これは政党支部だけでございます。

 そして、自民党の中曽根弘文参議院議員には六百四万円、自民党の山本一太参議院議員には五百万円、自民党の尾身幸次元衆議院議員には二百五十二万円、自民党上野公成元参議院議員には一千三百七十万円などなど、もっともっと多くの議員が、この一覧表を見ていただければわかるように、受注業者から多くの献金を受けておられます。

 そして、これらの群馬県選出の議員の方々が、こぞって建設推進を訴えておられます。多くの献金をもらっておられるから建設推進を支持しておられるのかと思ってしまいます。また、議員に献金をしている業者の中には、何と六十二回も受注をしている業者もあります。献金業者の大半が複数回受注をしております。

 群馬県選出の議員が多くの八ツ場ダム工事受注業者から献金をもらっている、そしてそれらの業者が複数回受注しているということは、大きな疑念を抱かざるを得ない状況であります。前原大臣は、この状況を聞かれてどのように思われますでしょうか。

○前原国務大臣 一般論でお答えをしたいと思いますけれども、公共事業を受注している企業から多額の献金をもらうことはいかがなものかという感想を持っております。

○中島(正)委員 さらには、落札率についても述べさせていただきます。

 資料二を見ていただけますでしょうか。平成十三年から平成二十年にかけて八ツ場ダムにかかわる事業のうち百万円以上の事業を請け負った受注業者の中で、さらには政治献金をしている業者をピックアップいたしました。

 自民党議員に政治献金をしているある業者は、受注件数がぬきんでて多い上に、そのほとんどが九五%以上というような異常なほど高い率で落札をしております。この高い率での落札が当然のようなこのシステム、何か特別なからくりでもあるのでしょうか。常識的に考えても不思議でなりません。

 前原大臣にお伺いいたします。この状況を見ると、談合が行われていたと思われても仕方ないような数字だと思うのですが、大臣はどのように思われますでしょうか。

○前原国務大臣 中島委員の提出をしていただいたグラフ、表を見ますと、明らかに落札率が高過ぎるという認識を持っております。

 一般論として申し上げれば、談合をすれば落札率は当然高くなります。これが談合が行われていたかどうかということについては、調べておりませんのでその因果関係は明らかではございませんけれども、談合は法律違反でございまして、決して許されるものではございません。

 だんだんと落札率を下げていく努力、一般公開入札の拡大であるとかあるいは総合評価方式の透明化であるとか、こういったものはなされてきているわけでありますが、さらにそういったものを進めて、このような客観的情勢の中で、疑われることのないような仕組みを今後さらに民主党政権ではつくり上げていきたい、このように考えております。

○中島(正)委員 通常、入札においては、最低の価格で入札した者が落札者とされます。それなのに、予定価格に極めて近い価格で落札されるのはなぜでしょうか。例えば、この中を見ていただきますと、九九・八二%という数字も出ています。このような数字を出せるのは、それこそ魔法遣いか超能力者ぐらいでないと無理だと思います。

 この入札のシステムについて、国交省の担当の方にお尋ねをいたしました。ここでその仕組みについて御説明をさせていただきたいと思います。(パネルを示す)

 ここにいらっしゃる方々には釈迦に説法かもしれませんけれども、全国の公共事業というのは、ほとんどがこのような状況で落札されております。予定価格というものがあります。これが伏せておられる部分でございます。そして、低入札調査基準価格というものを設定いたします。予定価格に対して、大体八割強ぐらいの価格をこの八ツ場ダムについては設定したそうです。そして、この約二〇%の間で入札を争い合わせるということです。そして、だれでもそうですが、スーパーに行っても安いものを買うのが当然の話です。同じもので値段が違うものであれば、安いものを買うのが人間の心理です。本来であれば、このあたり、低入札調査価格、この一番安いところで競り落とした人になる、事業が決まるというのが当然の話なんです。

 しかし、今回のこの八ツ場ダムの事業については、ほとんどが予定価格の直近、九五%以上というのがほとんどでございます。九九・八二%というのは、普通あり得ない話です。大体、この一番下の価格で競り落とされるのが当たり前の話です。しかし、このような状況になっております。

 そうすれば、どういうことが考えられるかというと、予定価格を一円でも出た業者は失格になります。また逆に、低入札調査基準価格というものを一円でも下回った会社も失格になります。ですから、例えば十社がこの入札に参加したとするならば、九社が失格状態になっているということです。そして、一社だけがぎりぎりのところでひっかかって、この業者が落札するという仕組みになっているのです。本当に正当な入札がなされていたのでしょうか。不思議でなりません。

 前原大臣にお伺いいたします。多くの落札がこのように九五%を超えているというような数字である以上、談合が行われていたと思われても仕方ないような結果をいかが思われますでしょうか。

○前原国務大臣 個別の契約については調べてからでないと私は物を言える立場ではございませんが、一般論としては、今委員が御指摘されたように、私も地方議員から国会議員、ずっとこの問題に取り組んでまいりましたけれども、これだけ予定価格に張りついているということは極めて異常でありますし、客観的に見れば、談合が行われていたと疑われるような状況ではないかというふうに思っております。

○中島(正)委員 そして、さらにはその契約種別を見てみると、ほとんどが指名入札となっております。

 契約種別には、主に三つのものがあります。指名入札、一般入札、随意契約、この三種類があります。きょう、ここにいらっしゃる方々に、これも釈迦に説法かもしれませんけれども、指名入札というのは、ある一定の会社を集めて指名して、あなた方の中で戦いなさいよということでございます。一般入札というのは、幅広く募集して、そして多くの会社から公募した中で入札を行わせるというシステムでございます。随意契約というのは、あなたの会社がやりなさいといきなり受注の指示が来るというのが随意契約でございます。その中でも、指名入札が異常に多い。そして、中には随意契約もありました。

 非常に指名が多いということに疑問を抱かざるを得ない状況でございますが、この点について、前原大臣はどのように思われますでしょうか。

○前原国務大臣 指名競争入札というものが談合の温床というふうに言われていたわけでありまして、また、新たに挑戦する企業の参入障害にもなっていたということであります。

 平成十六年ごろまでは一般競争入札は大体七・三億円以上で行われておりましたけれども、徐々に一般競争入札の拡大がなされてきまして、現状においては、平成二十年から六千万円以上の事業について一般競争入札というのが行われている。今委員が御指摘をされたものについては、それ以前のものだというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、委員が御指摘をされましたように、できるだけ公平、客観性を持った入札制度というものを取り入れて、だれもがチャレンジできるという仕組みに変えていくために、これからもさらなる検討を加えて、そして実施をしていきたいと考えております。

○中島(正)委員 このように、非常に納得のしがたい八ツ場ダムの入札結果です。

 大臣政務官にお伺いをいたします。入札はだれの権限によって行われているのでしょうか。

○三日月大臣政務官 決まりとしてお答えすれば、会計法十三条及び地方整備局会計事務取扱標準細則第二十二条に基づいて、国土交通省が発注する公共工事等については、原則として、予定価格が三億円以上の契約は地方整備局長が、予定価格が三億円を超えない、三億円未満の契約については事務所長が、入札の執行、契約の締結等の権限を有しております。

 したがって、御指摘のあった八ツ場ダム建設事業に係る入札は、関東地方整備局長または八ツ場ダム工事事務所長が入札を行っております。

○中島(正)委員 では、たびたび済みません、大臣政務官にお伺いいたします。

 その現地の事務所長は、本省でいえばどのくらいのクラスの方がつかれているのでしょうか。

○三日月大臣政務官 八ツ場ダム工事事務所の事務所長は、本省のポストでいえば企画官クラス、これは、省庁の部局でいえば、大体室長、企画官クラスなんです。警察官をされていた中島委員でいえば、大体イメージしていただければ、県警の部長さんというようなイメージではないかと思います。

○中島(正)委員 ありがとうございます。

 それでは、政官業の癒着があったと思わざるを得ないこの八ツ場ダム工事、地域の方は政治に翻弄されてきて本当に大変な思いをされてきたと思います。それに対する生活再建は、政治の責任としてきっちりと行っていかなければならないと思います。ただ、地域の方は今述べたような事実があることを御存じではないと思います。

 民主党が建設中止をうたっていることについて、今の段階では地域の方は反対をされております。しかし、このような事実がわかれば、このダム建設中止に地域住民の方も賛同していただけるのではないかと強く思います。まさに利権のために建設しようとしているとしか思えません。

 大臣にお伺いいたします。前政権がつくり上げたこの負の遺産に対して、どのように今後対処され、またどのように地域の再生を行っていかれるつもりなのか、お考えをお聞かせください。

○前原国務大臣 この八ツ場ダムにつきましては、地元の皆さん方は当初は反対をされていて、しかし、時間の経過とともに苦渋の選択を受け入れられて、ダム推進にかじを切られたわけであります。それは、すべてが下流の方々の安全、治水、そしてまた利水のためを思って決断をされたことでございまして、そういう意味では、私は、地元の方に対しては心からおわびを申し上げ、政策転換の犠牲者だと思っておりますので、真摯に対応していきたい、このように思っております。

 現在、この八ツ場ダムにつきましても、他のダムと同様に不断に検証作業を行っておりまして、ダムによらない治水、利水というものをこれから提示させていただくことになろうかと思っております。

 それとあわせて、先ほど委員が御指摘をされたことで大事なことは、地元の方々の生活再建をどのような形で図っていくのかということでございます。生活再建については、まずは地元の方々の御要望を承るというのが筋でございますけれども、我々としても、地元の方々の御要望があれば真摯に耳を傾けて、ダムによらない生活再建というものをしっかりと議論させていただきながら進めてまいりたい、このように考えております。

○中島(正)委員 治水、利水の面から見ても、さまざまな有識者の方々も、この場所にこれだけの大きなダムは必要ないと言っておられます。そして、このようなさまざまな疑惑のある八ツ場ダム建設には、これからも莫大なる血税を投入すべきではないと思いますし、ダムの建設には強く反対をさせていただきます。

 今の民主党政権に対して野党自民党は、政治と金の問題で国会の進行を妨げるような形で追及し、いたずらに時間を引き延ばしております。それを目の当たりにして、私は大変残念に思いました。国民は、国会で与党と野党が足の引っ張り合いをすることを望んでおりません。本来国民のための政策議論をすべき場所なのに、足の引っ張り合いをしていることを肌で感じ、本当に情けなく、見苦しく思っております。

 野党が、特に自民党がこれ以上国会の場で足の引っ張り合いをするのであれば、この八ツ場ダムに絡んだ政と官と業の癒着がもっともっといろいろありますので、国会議員や秘書を大量に投入して本格的な調査チームを組んで、徹底的に明るみにしていくべきだと思いますが、大臣はこの調査チームに関してどのように思われますか。

○前原国務大臣 党としてさまざまな形で調査をしていただくということは大変結構なことだと思いますし、政府として御協力できることについては、できる限りの協力をさせていただきたいと思います。

○中島(正)委員 それでは最後に、大臣は落札率が極めて異常とおっしゃいました。私たちも本当にそのように思っております。私たちは公正取引委員会に告発でもしたいというふうに考えております。

 そこで、大臣に詳しい調査をお願いいたしますが、どうでしょうか。

○前原国務大臣 具体的な数字を挙げてきょうお示しをいただきましたので、省内で過去の、捜査権は国土交通省にはございませんので、どれだけ調べられるかということについての限界があるかもしれませんが、できる限り調査をさせていただきたい、このように考えております。

○中島(正)委員 ありがとうございました。

○川内委員長 中島君の質疑を終了いたしました。

 次に、村井宗明君の質疑に移ります。村井君。

○村井委員 民主党の村井宗明です。

 先ほどの中島議員の質問は、本当に意義が大きかったです。大臣からも、この八ツ場ダムに関する献金企業の極めて異常な落札率、極めて異常というふうに言っていただきました。我々も、余りにもこの八ツ場献金の金額と、そしてこの献金した企業の異常な落札率、ここはしっかりと問題としていかなければならない、八ツ場ダムについてのこの利権を解明しなければならないというふうに思っています。

 それと同時に、きょうはもう一つ、八ツ場ダムで注目されていることについてお話をしたいと思います。

 十二月二十四日、TBSで特集番組が組まれました。八ツ場ダム砒素問題についての特集番組が組まれたのですが、大臣や副大臣はごらんになられたでしょうか。本当にあの番組で、多くの都市部の人が、ダムがつくられた場合、異常な砒素濃度の水を飲まされる。特に、あの砒素問題でいえば、ダムをつくらない限りは取水地では濃度が低い、だけれども、あそこでダムをつくってしまった場合、砒素は水よりも比重が重いわけですから、入り口の砒素が約十二倍から五倍ぐらいになっていて、それがどんどんどんどん流れ込んでいく。そして、秋、冬、春は問題ないけれども、夏の渇水時に、沈殿した非常に砒素濃度の高い水を飲まされることになれば、本当に八ツ場ダムをつくったら、都市部の住民に危険性が及んでしまうという大きな問題があります。

 そして、その中で、これまでのダム建設に関する環境評価のずさんさが的確に示されました。そして、多くの国民が、今、このダム建設にかかわる環境評価のずさんさに注目をしています。

 そこで、私は、一体、全国のダム、この環境評価はどうやっているんだろうか、きっと、国交省が発注しているダムの環境影響評価をするところは、よっぽど公正中立なところでなければならないと思うし、まさかまさか、ダムの建設会社からお金を集めてつくられた財団法人に発注しているということは、あってはならないと思うし、そうではないと期待していました。

 そこで、調べさせていただきました。このダムの環境評価をして、公正中立が最も求められる団体、財団法人ダム水源地環境整備センターは、多くのダム建設会社から合計十億七千万円の出捐、財団法人でいえば出資は出捐というんですが、出捐を集めてつくられた財団法人です。そして、今、順番にその資料を説明していきますが、五年合計百三十三億、何と落札率九八%という異常な数字で仕事をとっていることが本当にいいのかどうか。国交省からは、事業仕分けの話は国土交通委員会ではありませんよと言われたのですが、大臣に最後にその所見を聞き、後半にはもう一つ、クリーニングの別の質問をしたいと思います。

 まず、一遍めくっていただきたいんです。連日、こうやって、八ツ場ダムの砒素濃度については多くのマスコミから注目をされています。先日も、共同通信で全国に、八ツ場ダムの砒素濃度、もう毎月毎月基準値を超えているというのが公表されています。

 もう一枚めくっていただいて、計量証明書をつけさせていただきました。問題となっている貝瀬地域の砒素濃度、この最新のデータでも、一月十四日時点でも出ていたというふうにこの計量証明書は書いてあります。

 そしてまた、もう一枚めくっていただいて、吾妻川の流域図を見てください。まさにこの八ツ場ダムのとめるポイントの入り口は、貝瀬と与喜屋の二カ所です。そして、この貝瀬の濃度、〇・〇一が環境基準なんですが、一体、まあ右側に書いてしまってはいるんですが、実際に三日月政務官にお聞きします。

 この問題となっている貝瀬で砒素濃度は超えているのかどうかと、今後はさらに調査ポイントをふやすべきだと思うんですが、三日月政務官はどう考えておられるでしょうか。

○三日月大臣政務官 村井委員が、八ツ場ダム問題、とりわけこの砒素濃度の問題について精力的に調査をしていただいていることに、まず敬意を表したいと思います。

 その上で、貝瀬地点での数値については、お示しいただいたとおりでございます。

 なお、公表につきまして、これは利根川支川、八ツ場ダムが建設される吾妻川においてこの水質調査を行ってきたんですが、昭和五十年代からずっと行ってきたんですが、風評被害というものを恐れて公表されてきませんでした。それを村井委員の指摘により、また十一月十八日の前原大臣の答弁及びその後の指示により、ことしの一月から、これはさかのぼって、毎月行われていた調査の結果について、ホームページも含めて公表をさせていただいているところであります。

 なお、このポイント数につきましても、調査のポイントをふやすべきではないかという村井委員からの御指摘に沿って、現在、ダムサイト付近と貝瀬、与喜屋の三ポイントでダム周辺においては調査を行っているんですが、なお詳細にこの砒素濃度等を把握するために、ポイントを一つ追加いたしまして、調査を来年度から、平成二十二年四月から行わせていただく予定としております。

○村井委員 三日月政務官、そして前原大臣の本当に素早い対応のおかげで、こうやって一番ポイントになっているダムの中心部、もちろん、貝瀬と与喜屋の二カ所から流入してきて、貝瀬でオーバーしているわけですからその中心部は一定程度は薄まると思うんですが、そこのポイントをしっかりとって、二つまざった時点での濃度、そして、そこの部分で、今後万が一ダムをつくった場合、そこに水よりも重い砒素が沈殿していくわけですから、そこをちゃんととらなければならないと思います。そういった意味で、調査ポイントをふやしていただいたというのは本当にすばらしいと思います。

 そして、その次のページをおめくりください。このダム水源地環境整備センターの出捐会社リストを配付させていただきました。

 まず、今の前原大臣や政務官は、できるだけダムに頼らない治水というのを掲げておられます。このできるだけダムに頼らない治水を判断するに当たって、環境影響評価は判断基準の一つに含まれるんでしょうか、どうでしょうか。政務官、お願いします。

○三日月大臣政務官 今、村井委員から御紹介いただきましたように、私たちは昨年十二月に、今後の治水対策のあり方に関する有識者会議というものを設置いたしまして、できるだけダムに頼らない治水のあり方について今検討を重ねていただいておりますし、我々も参加して議論をさせていただいております。

 村井委員御指摘のとおり、環境への影響評価というものは、新しい評価軸を策定するに際しても、また個別ダムの検証、再検証を行うに当たっても含まれる。環境への影響評価というものは含まれるものだと存じております。

○村井委員 とすれば、まさに今、判断基準の一つに含まれるということは、ダムを建設するか否かの判断基準もある。つまり、そうであれば、この財団法人ダム水源地環境整備センターにダム建設をするかどうかの判断基準の一つを振るわけですから、当然、公平中立性が求められます。まさかまさか、ダムの建設会社からお金をもらってつくられたような財団ではないというふうに期待しているんですが、そこで政務官にお聞きします。

 この表を、特に「確約書」に入れている各建設会社の名前を見ながら、本当にこのダム建設に当たってダム水源地環境整備センターは公平中立な団体でしょうか、どうでしょうか。

○三日月大臣政務官 若干補足をいたしますと、さっき答弁いたしました有識者会議におきまして、ことしの夏ごろをめどに、治水対策を考えていくに当たっての実現可能性及び新しい評価軸というものを策定いたします。当然、その中に環境への影響評価というものが含まれるものというふうに私たちは考えております。

 なお、今、村井委員から資料に基づいて御指摘のあったダム水源地環境整備センター、この出捐者にはダム建設を行う会社も含まれております。そして、私たちもいろいろと調べましたけれども、一般的に、調査業務の請負を行う会社、これはコンサルタント会社も民間会社も財団法人もさまざまあるんですけれども、これらの法人等には、今御指摘のあった財団法人ダム水源地環境整備センターに限らず、その出資者や出捐者にダム建設事業に関連する工事等を受注する企業が含まれている場合があります。

 したがって、私たちは、大切なこととして、基本になることとして、その出捐者、出資者いかんにかかわらず、受注であれ発注であれ、そして工事であれ、それが適切に行われること、及び水質に関しても、調査であれ環境への影響評価であれ、それがダム事業を受注しているいかんにかかわらず、公正に行われることが基本であるというふうに考えております。

○村井委員 今の質問をもう一個、前原さんに聞きたいと思うんですが、公平中立かというのを大臣に判断していただきたいんです。

 この確約書で、三日月さんはダム建設会社が含まれると言っているんですが、私が調べさせていただいた感じでは、ほとんどダム関連会社です。本当にこのダム建設をするかどうかのかかわる部分で公平中立性が求められるときに、この財団法人はダム建設側とダム建設反対側との間で公平中立な団体と断言できますか、そうでしょうか。

○前原国務大臣 この村井議員が提出された資料というのは、私は極めてすばらしい資料だと思います。

 今、政務二役に私からお願いをしておりますのは、国土交通省の公益法人、このお示しをいただいた財団法人ダム水資源環境整備センターも含めてでございますけれども、他の民間企業などでできるものについてはゼロベースで見直していく、こういうことをお願いしております。

 つまり、民間でできることを何で公益法人でやらなきゃいけないんだ。そして、公益法人については、当然ながら天下りという問題がついて回ります。そういう意味で、私は、財団法人道路保全技術センターというものの解散をまず手始めにやらせていただいたわけでございますが、この財団法人ダム水資源環境整備センターも、その点からゼロベースでまず見直しさせていただくということ。

 あと、この資料のすばらしいのは、ダム受注利益企業から出捐をされているということ、そして、理事長、理事、常勤の役員がすべて国交省の天下りであるということ。これは私は許してはいけない団体であるというふうに思っておりまして、これについては、委員の御指摘がありましたので、ほかの企業で代替できるのであれば基本的にこの財団法人は要らないのではないかという観点から、かなり厳しく精査をさせていただきたい、このように思います。

○村井委員 前原さんに大分言っていただいたのですが、もう一回、ちょっと三日月さんに戻らせていただきたいと思います。

 一つは、次のページへ行って、契約のところを、一覧表、四ページにわたって書かせていただいています、見ていただきたいんです。ほとんど随意契約なんです。左側を見てわかるように、ほとんど随意契約なんです。全部かもしれませんね、十九年も二十年も。そして同時に、一番右端に出ている落札率を見ていただきたいんです。いやあ、この落札率のすごさ。

 落札率を平均値でとった場合どうなるかというと、合計値で最後の落札率を出す場合とそれぞれの落札率の平均値を出す場合、数学上、どっちでとっていくかによって最後答えは変わるんですが、合計値からいく場合とそれぞれの平均値の平均をとった場合、どっちにしても五年間の平均落札率は九九・六八もしくは九九・四八です。さらに、五年合計で百三十三億六千万円、随意契約で受注しています。

 三日月政務官にお聞きします。本当に、随意契約でこの落札率、今後もこういうふうに続けるべきでしょうか、いかがでしょうか。

○三日月大臣政務官 お答えいたします。

 大臣の前に答弁をして、極めて官僚的な答弁をいたしましたが、事実に関する答弁と、また一般的な考え方に基づく答弁であったということで御了承いただきながら、大方針は、前原大臣初め政務三役で統一をしながら、今、進めさせていただいております。

 委員御指摘のように、天下りする元公務員の多さ、そして随意契約の多さ、それによる払わなくてもいい税金を支出していることの可能性。いずれにしても、そういったものをしっかりと見ながら、この財団法人水源地環境整備センターのあり方についても、今大臣が答弁したように、しっかりと見直してまいりたいと思いますし、当然、その中で、随意契約で発注されている発注体制というものについても、しっかりと見直してまいりたいと思います。

 このダムに関する環境評価についても、既に民間企業も入札に参加し得る発注方式に移行しておりますが、これも我々野党時代にいろいろと指摘していましたとおり、企画競争に当たって、その参加に当たってかなり条件が限定的に絞られている可能性もありますので、その点も含めてしっかりと見直しを行ってまいりたいと思います。

○村井委員 ダムについての最後のペーパーを、もう一枚めくっていただいて一番最後のペーパーで、役員名簿を見ていただきたいと思うんです。一番最後のここですね。いやあ、常勤役員三人、やはり国土交通省出身。

 次の質問に入る前に、このダムの最後の質問を大臣に感想をお伺いしたいんですが、先ほどちょっとゼロベースでの見直しと言っていただきました。

 今、第二次事業仕分けで、財団法人に対しての、天下り法人についての事業仕分けなども議論がされています。それも含めまして、この財団法人ダム水源地環境整備センターなる組織に、これまで随意契約で百三十三億、五年間、しかも落札率九八%。そして、実際、今その中で、ダムの環境評価について非常に多くの国民から疑いが上がっている中で、この財団などに環境評価を発注し続けることについての大臣の感想、意気込みなどをお聞かせいただければと思います。

○前原国務大臣 まず冒頭、名前が間違っておりましたので訂正いたします。ダム水源地環境整備センターということで、水資源と申し上げておりまして、済みませんでした。

 先ほど御答弁したとおりでありますが、まず、他の民間企業等で代替できるものについては、基本的に公益法人でやるべきではないと私は思っております。あとは、道路保全技術センターでも三年間かけて解散するということは、働いている方がおられますので、解散をする場合にそういった方々へのいわゆる転職、こういったものをどう考えていくのかということもあります。

 そういうことも含めて、私は、今見せていただいた資料を拝見する中で、今の二つの点をしっかり留意した上で、クリアできるんだったら、基本的にこの財団法人は私は要らないというふうに思います。そういう観点で、ゼロベースで見直しを省内で進めていきたい、このように考えております。

○村井委員 まず、ダムについては本当にありがとうございました。大臣から、まさにゼロベースで、事業仕分け的な形になるのかどうかはともかくとして、ゼロベースで解散も含めて検討していただけるということに、本当にありがたいと思っています。 (以下略)

●2010年3月5日
○川内委員長 これより会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件、特に八ツ場ダム問題等について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子恭之君。

○金子(恭)委員 おはようございます。自由民主党の金子恭之でございます。

 きょうは、全国的にも大変注目されており、また、今後の我が国の治水、防災の方向に非常に大きく影響を与える八ツ場ダムの集中審議、トップバッターということで大変ありがたく思っているところでございます。

 私は、御案内のとおり、東の八ツ場、西の川辺と言われるんでしょうか、川辺川ダムの地元から選出をされている議員でございます。川辺川ダムの本流であります球磨川の二十メーターぐらいのところに住んでおりまして、子供のころから、大雨が降るたびに、あの轟音ですね、いつ堤防が切れるかわからないような状況、避難をしたこともございます。そういうことがありまして、非常にやはりこの治水対策、防災対策というのは、私の政治生活の中においても中心に置いてやっているところでございます。

 きょうは、これから八ツ場の御地元の小渕先生、佐田先生が質問に立たれますので、私自身は、治水、防災、大きな基本的なところを、大臣もダムについては川辺にもしょっちゅう来ていただいたようでございますし、お互いに議論をさせていただければありがたいと思っております。

 我々国会議員あるいは国家というのは、国民の生命財産あるいは安全で安心な生活を守るというのが大きな責務の一つだというふうに考えております。ですから我々は、今、地球温暖化の影響もあるんでしょう、近年一時間に百ミリというのはざらにありますよね、ゲリラ的な豪雨がある。降らないときはからから、降るときは物すごく降ってしまうという意味で、私は、昔に比べて逆に今は治水、防災の面で大変厳しい対応が望まれているんだろうというふうに考えているところでございます。

 一たび自然災害、地震やあるいは台風、洪水等が起こりますと、大きな被害が出るわけですね。公共施設については公的な支援というのがありますけれども、国民個人においては、ひょっとしたら国家が、国がすべて補償してくれるんじゃないかというような、そういう思いの方も多分大勢おられると思うんですね。

 阪神・淡路の大震災以来、政府においても被災者の生活再建支援対策というのは充実をしていただいているところでございますが、今申し上げました自然災害、河川も含めた、あるいは洪水も含めたもので、一般の個人の方々の家とかそういう財産が破壊をされたり、流されたりしたときの支援というのはどういうものがあるのか、大変申しわけありません、大島副大臣、お答えいただきたいと思います。

○大島副大臣 金子委員にお答えをいたします。

 一定規模以上の自然災害により生計維持者が死亡した場合には最大五百万円、その他の者が死亡した場合には最大二百五十万円の災害弔慰金を支給いたしております。

 もう一つ、先ほど委員からも御指摘がありました、一定規模以上の自然災害により住宅を失った場合、住宅の被害程度や再建方法等に応じ、最大三百万円の被災者生活再建支援金を支給いたしております。

 以上です。

○金子(恭)委員 ありがとうございます。

 それでも、この支援制度でいくと、一たび災害が起きてしまったときに、個人への支援というのはほとんどわずかなものだというふうに思います。という意味では、その災害が起きないように、防災担当副大臣でございますので、しっかりやっていただきたいと思います。

 一つのデータとして、平成十七年のアメリカ・ニューオーリンズで起きましたハリケーンのカトリーナ、あれが来たときに、事前に予防措置をしておれば、防災対策をきっちりしていれば、堤防とかそういったものも含めて強化をしていれば二千二百億円で済んだものが、実際、十四兆円の災害が起きているわけですね。また、日本においても、平成十二年の東海豪雨、これも、まだ防災対策がうまくいっていなかったものだから、七百十六億あれば五千五百億の災害を防ぐことができた。

 ということを考えますと、今、残念ながらまだまだ、予防的な施設を強化しなければいけないということなんですが、できていないという状況の中で、ぜひ、今のことも踏まえて、起きてはもう遅いので、できるだけこれは起きないように努力をしていただきたいと思うんですが、そのことについて、大島副大臣の決意を表明していただきたいと思います。

○大島副大臣 御質問いただきまして、まことにありがとうございます。

 前原大臣もつい先日までは防災担当の大臣でございまして、金子委員のそのお気持ちは十分に私たちも共有をさせていただいております。

 先生おっしゃるとおり、地震列島あるいは災害列島と言われている日本列島に私たちは暮らしておりまして、大きな自然災害が日本を見舞うときのために万全の備えをするのが政治の第一の役割だと私たちは考えております。これは金子先生と同じだと思います。

 御指摘のとおり、災害を未然に防ぐための事前対策は重要であり、例えば、住宅や学校、病院等の公共施設の耐震化など地震に強いまちづくり、そして、先般も津波がございました、津波、高潮に対する堤防の整備やハザードマップの整備などの対策を進めておりまして、御承知のとおり、地震、台風など、現実に発災した際には、政府の先頭に立って緊急的な応急対策や迅速な復旧復興に全力で取り組んでいるところでございます。

 最後に、防災は行政のさまざまな分野に横断的に関連する広がりを持ったテーマでございまして、関係各省連携して被害対策を進めてまいりたいと考えております。

 ありがとうございます。

○金子(恭)委員 大島副大臣、どうぞもうお帰りいただいて結構でございます。

 今申し上げましたように、基本とするところは、災害を起こさない、これが第一なんだろうと思います。

 私、この前、前原大臣の所信表明を聞かせていただき、あるいは予算概要説明を聞きまして、ちょっとおかしいんじゃないかということを感じました。それは何でかというと、「治水事業については、できるだけダムに頼らない治水へ政策転換」と言われたんですね。

 私は、御案内のとおり、半年ぐらい前まではそちらに座らせていただいたわけでありますが、これまでもダム事業というのは検証しながらやってきたわけであります。ダムをつくるための事業ということで、ダムをつくりたいということではなくて、平成七年からこれまで、百十四の事業、ダムが中止されてきているのは御存じだと思います。特に平成十二年、自公の連立政権のときに、連立の合意の中できちんとこれをやっていこうということで、その年は四十七のダム事業を見直したということであります。そういうことからしても、私は、政策転換というようなことでなくて、これまでも、そこに幹部の方がおられますけれども、しっかりと頑張ってこられたんだろうと思います。

 私は、貴重な経験を昨年させていただきました。去年の三月に、第五回の世界水フォーラムに政府を代表して参加をさせていただきまして、閣僚級の国際会合、閣僚級の円卓会議の議長までやらせていただきました。

 話を聞いていますと、途上国の中には、うちは大きなダムをつくったとか、うちは堤防をつくったということを胸を張って言われるんですね。しかし、我が日本国は世界のトップリーダーだと私は思うんです。水系ごとに、ここはどういう治水対策がいいのか、堤防をした方がいいのか、掘削をした方がいいのか、遊水地をした方がいいのか、あるいはダムをつくった方がいいのか、そういうことをやりながら、あるいはダムをつくる場合は、濁った水をよけるために清水バイパスというのをつくったり、選択取水ということをつくったりして、これは本当に世界でもトップを走る、環境に優しい、そして治水対策もしっかりとやってきたのが我が日本であります。

 という意味では、大臣もいろいろ、今までの国土交通行政の中で官僚の皆さん方に対して不信があられるんだろうと思います。しかし、そのことを踏まえても、私はぜひ、政策転換というような言葉は私とすれば少し異議があるわけでございまして、そのことについてどうぞお願いします。

○前原国務大臣 金子委員にお答えをいたします。

 国土交通副大臣として国土交通行政の推進に御尽力をいただいておりましたこと、心から敬意を表したいというふうに思いますし、また、昨年、川辺川ダムの見直しの会議を熊本県の人吉で行ったときに、わざわざ御出席をいただきましたことに御礼を申し上げたいと思います。

 今委員おっしゃったように、今までも、百十四のダム事業を中止するなど自公政権でもやってこられたというのはそのとおりだと思っております。

 それにまた、逆の言い方をするようでありますが、我々は別にダムがすべて悪いと言っているわけではございません。よくお話をするように、人口が減っていく、少子高齢化が進んでいく、GDPの一・七倍以上もの長期債務がある、そういった中で税金の使い方を見直していく、変えていくという中で、公共事業のあり方をすべて方向転換するというか、使い方を変えていくということが政権交代によって行われていることでございます。

 現在、堰堤の高さが十五メートル以上の既設ダムが二千八百九十以上あると思っております。これは、国とか県とかあるいは発電所管理者もすべて含めてですね。そうなると、今度、この維持もお金がかかってくるということになります。

 また、一たびダムをつくれば、砂がたまり、また砂が流れないために海岸の侵食なんかも起きるということで、水質の問題と同時にまた新たな公共事業というものをやらなきゃいけないということで、そういうトータルの観点からの公共事業の見直しをさせていただくということと同時に、先ほど委員がおっしゃった河川の基本方針、河川ごとの基本方針というのがありますけれども、基本方針に基づいて整備計画というのがなされているんですが、では、それを本当に突き詰めてやったときにどれだけのお金が一体かかるのかといったことも含めて、その考え方も含めて見直しをさせていただくということで、すべての百四十三のダムについての見直しをさせていただき、そして昨年末には、本体工事にかかっているか、かかっていないかを一つの判断材料として、進めるか凍結をするかということを決めさせていただいたわけでございます。

 今までの国土交通行政、河川行政をすべて否定するものでもありません。しかし、今の置かれている財政状況とか社会的変化の中でこの河川整備のあり方というものを根本的に見直す中で、水系ごとに河川の管理のあり方というものを考えていきたいと思っております。

 最後に、先ほど金子委員がおっしゃったように、ゲリラ豪雨というのがこれからふえてくると思います。ゲリラ豪雨というのはどこに降るかわからぬわけですよね。そういった場合に、上流にダムをつくるということも排除されない一つの選択肢だと思いますけれども、それよりは、どこで降るかわからないということであれば、やはり堤防の強化を含めて河川全体で、そういった新たな降り方にもどう対応していくかということも加味しながら河川整備を考えていくことがいいのではないか、そういう思いで申し上げているところでございます。

○金子(恭)委員 しかし、我々も、ここに前金子大臣がおられるわけでありますが、長いことダム事業が時間がかかっているという中で、検証をしようということでダム事業プロセス検証タスクフォースというのをつくりまして、今の有識者会議とは多少違うんでしょうけれども、真剣にそのことも含めて議論を始めたところでございました。

 という意味では、我々も、政策転換というような大きな違いはないんだろうと私は思います。しかし、それを何か、いかにも我々だけがやっているみたいな、非常に誇張されると、我々もちょっといらっとする。ちょっと言い方はあれですが、その表現はやめてほしいなと。我々も一生懸命やってきたわけだから、そのことはぜひわかっていただきたいと思います。

 それから、質問をいろいろ考えていたんですが、今大臣が言われたので、触れることにさせていただきます。

 私も、一時期、事業を凍結する話があったわけでありますが、八ツ場ダムについては、予断をかけないでというような話ですけれども、実際は中止と言われているんでしょうけれども、一方、いろいろな談合問題等々で話題になっております胆沢ダム、この二つのダム、八ツ場には、副大臣のときに去年の六月、それから選挙後の十月に谷垣総裁と参りまして、十一月には国土交通部会で参りました。非常に