前原大臣再任への反響

2010年6月9日
 このところ、八ッ場ダムの水没予定地では、以前にもまして工事車両が増えています。水没予定地域の人々は工事現場の中に取り残され、政権を担う人々に現場を見てほしいと訴えています。「生活再建」を切望してきた人々の思いは、いつになったら届くのでしょうか?
 川原湯温泉では観光名所の”萩の小道”が分断され、アベック地蔵も周辺の林と一緒に姿を消しました。凄まじい地形の改変が進む中で、残された緑が萌え、季節の花が咲き乱れています。

 ダム中止方針の前原大臣再任をダム推進の大沢群馬県知事と高山長野原町長が歓迎するという下記ニュースは、一般には理解しがたいことと思いますが、ダムの関連事業は続行しており、水没予定地では政権交代が実感できません。「ダム推進」のはずの地元住民と「推進派」の地元代表との意識の隔たりもニュースから伝わってきます。

◆2010年6月9日 朝日新聞社会面より
ー再任 宿題胸に 八ッ場地元まずは歓迎 前原国交相ー

 「57年かけてやろうとしてできなくて、方向転換して8ヶ月半で解決するほど甘くはない」。前原誠司国土交通相は鳩山内閣での離任会見で、群馬県の八ッ場ダムについてこう振り返った。
 昨年9月、官邸での就任会見前に、民主党のマニフェスト通りに建設中止を打ち出し、「相談も説明もない」と地元住民の反発を招いた。
 新政権でも国交相に再任され、「八ッ場」に引き続き向き合うことになる。
 予定地である群馬県長野原町の高山欣也町長は8日、「前原さんは聞く耳を持っている人。どんな大臣か分かってきたところだから、新しい人に代わると困ると思っていた」と再任を歓迎した。
 当初、「地元無視」と猛反発した高山町長が前原氏を評価するようになったのは、移転先となる代替地に橋を架けるのを認めてくれたからだ。
「住民の声を大事にしてくれた」と思った。ただ、この橋だけで建設費は52億円。「下流都県が納得できる代案が出てくれば、中止もやむを得ない。だが、そうでなければ中止の撤回を求めていく」

◆2010年6月9日 朝日新聞群馬版より転載
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000001006090002
-前原国交相再任 八ツ場地元、評価割れるー

 菅直人内閣が8日発足、国土交通相に前原誠司氏が再任された。昨年9月、就任直後の建設中止表明に反発した八ツ場ダムの地元、長野原町では「期待しない」「聞く耳を持っている」などと、再任への評価は割れた。

 「党の方針でやっている以上、仮に大臣が代わっても中止は撤回しないでしょ」

 ダム建設で全戸が水没する予定だった川原湯温泉街で飲食店を営む水出耕一さん(55)は、そう話した。

 温泉街ではこの春、老舗(しにせ)の柏屋旅館が休業。水出さんの店近くの山木館も6月から1カ月半、一時休業に入った。「お客さんに『観光地に来た気がしない』と言われる。疲弊じゃない、つぶれかかっているんだ」

 移転先の代替地は未完成で、引っ越せない。すでにダム湖の用地として国に売られた旅館や住宅は、次々更地になっている。水出さんは「国の有識者会議の再検証の結果は来春に出すと言っているが、待てない。前原さんには理想ではなく現実をみてほしい」と話した。

 一方、ある旅館経営者は「再任は良かったのではないか」と話す。就任直後、いきなりの中止表明で地元の反発を買った。だがその後は頭を下げ、何度か地元に入って声を吸い上げようと努めたと思う。湖面1号橋建設も前に進めてくれた。「じっくりダムの必要性を検証し、行動してくれる」と期待している。

 別の考えの人も。「絶対権力者」とまでいわれた小沢一郎前幹事長にも高速道路無料化の問題などで異を唱える前原氏について、「自分の信念に自信を持っている。交代してくれたほうが八ツ場には良かった」。

 川原湯地区の町議冨澤吉太郎さん(70)も、新政権を厳しい目線で見つめる。前原国交相は地元住民の声を聞き入れなかった、沖縄の米軍普天間飛行場移設問題で県民の思いがかなえられなかったのと同じだと思う。「新政権には期待はない」と話した。
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 大沢正明知事は八ツ場ダムについて、「(菅新首相は)長く市民運動に取り組まれてきたと聞いているので、地元住民の目線で問題に対応していただけると期待している」とコメントを発表した。
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 前原氏の再任について、今夏の参院選群馬選挙区で再選を目指す民主党現職の富岡由紀夫氏(46)は、「前原氏は就任当時はいきなり中止会見をしてつまずいたが、その後は地元の要望を理解して生活再建に取り組んでいる。継続性という観点からは留任してよかったと思う」と記者団に述べた。

◆読売新聞群馬版より転載
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20100609-OYT8T00058.htm

ー菅内閣発足 国交相再任会見 八ッ場中止方針変わらずー

 奇兵隊内閣――。菅首相は8日、組閣後の就任記者会見で幕末の志士高杉晋作になぞらえて「果断な行動」を新内閣のテーマに掲げ、参院選群馬選挙区に立候補予定の富岡由紀夫参院議員(民主)も「民主党は生まれ変わった」と鼻息を荒くした。対する中曽根弘文元外相(自民)は、政治とカネの問題をうやむやにする「小沢隠し内閣」と激しく批判し、他の野党陣営からも、再任大臣が並ぶ「居抜き内閣」などと、厳しい指摘が相次いだ。

 同日夕、前橋市内で記者会見を開いた富岡氏は「若く行動力のある内閣。本来のクリーンな政治を行える」と胸を張り、鳩山政権下で廃止した政策調査会の復活について「自由闊達(かったつ)な議論ができる。国民の声を聞いて政策をアピールしたい」と意気込んだ。

 参院選のマニフェストに八ッ場ダム(長野原町)をどう記載するかについては「地元の意見を無視した方針は困る。『地元の納得を前提に中止する』なら構わない」と、選挙戦を見据えた言い回しをした。

 一方、中曽根氏は「今回の組閣は、『小沢隠し』以外の何ものでもない。『クリーンな政治』を目指すなら、証人喚問で小沢氏が国民に説明する必要がある」とのコメントを発表。文書で「支持率回復目当ての首相退陣により、自民党にとって選挙の情勢は一層厳しくなった」と締めくくった。

 菅内閣に対する県内の政党関係者の評価は、与野党で180度異なる。

 久保田務・民主党県連幹事長は、40歳代の玄葉光一郎政調会長と蓮舫参院議員の入閣を踏まえて「世代交代宣言内閣」と命名。「昨夏の衆院選でマニフェスト実現に期待してくれた無党派層を呼び戻すためにも、政策の練り直しを進めてほしい」と訴える。

 真下誠治・自民党県連幹事長は、参院選目当ての「選挙管理内閣」と揶揄(やゆ)。無党派層の民主党回帰が始まっていることを受けて、「県内でも地域によっては、内閣支持率は下がらないだろう。危機感を持って参院選を戦うしかない」と警戒する。

 加藤修一・公明党県本部代表は「小鳩退場は小沢前幹事長が描いたシナリオ。大芝居を打って支持率回復につなげた」と語り、「衆院選のマニフェストに続いて国民を欺く『Wだまし内閣』だ」と批判する。

 小林人志・社民党県連幹事長は「社長だけが替わって、従業員がそのまま後を引き継ぐ『居抜き内閣』」と表現し、小菅啓司・共産党県委員長は、小沢、鳩山両氏を表舞台から消してクリーンに見せかける「カムフラージュ内閣」と評した。

 前原国土交通相は8日、再任後初めての記者会見を開き、菅首相から国直轄の大型公共事業の全面的見直しの指示を受けたと明かし、八ッ場ダムについては、「再検証の中に入れているが、中止の方向を打ち出し、予断なく検証している」と、改めて本体工事の中止方針を示した。

 建設中止後の住民の生活再建については、「当該自治体には迷惑をかけたが、その方々への申し訳ない気持ちを形にするのが大切」と述べて、生活再建の枠組みなどを盛り込んだ新法案を来年の通常国会までに出す方針を明らかにした。

 長野原町の高山欣也町長は前原国交相の発言について、「再検証結果が出ていない段階では、それしか言えないだろう。『予断なく』は、白紙ということで、中止撤回の可能性もあると思う。結果が出るまで待つしかない」と語った。

◆東京新聞群馬版より転載

http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20100609/CK2010060902000087.html

ー菅内閣発足 前原国交相再任 八ッ場ダムの長野原町 『安心』『落胆』思い交錯ー

 菅新内閣が誕生した八日、八ッ場(やんば)ダム建設中止問題に揺れる長野原町では、前原誠司国土交通相の再任をめぐり、「安心した」と評価する半面、「別の大臣に代えてほしかった」と落胆の声も漏れるなど、さまざまな思いが交錯した。現地で住民に話を聞いた。 (山岸隆)

 この日も同町川原湯地区の代替地造成現場では、大型トラックや重機など工事用車両が狭い山道をせわしなく行き交い、いつもと同じ光景を見せていた。

 町役場の町長室で職員と打ち合わせ中だった高山欣也町長は「前原さんは住民の意向調査をして生活再建に必要な湖面1号橋の建設を認めるなど、以前よりも地元住民の声に聞く耳を持つようになった」と説明。その上で「次の大臣に『やっぱりダム建設は中止』と言われるのが最も困る。前原さんで良かった」と語った。

 ダムの湖底に沈む予定だった川原湯温泉街。平日とあって人影もまばらだ。川原湯地区ダム対策委員長の樋田洋二さん(63)は「前原さんは自分の意見を絶対に曲げない人。ダム問題でも中止の考え方はぶれない。ほかの人に代わってもらいたかった」とぽつり。三月末から休業中の柏屋旅館の豊田治明会長(74)も「新政権には何の期待もしていない。だれが国交相になっても同じ。最盛期は二十軒以上もあった旅館が不況で今は三分の一以下に減った。早く住民が生活再建できるようにしてほしい」と憤りをあらわにした。

 一方、同温泉街の近くで牛乳製造販売業を営む豊田武夫さん(58)は「ダム建設中止の方針を貫き、これまでの国土交通行政の失敗を政治主導でただしてほしい」と前原氏にエールを送った。