2010年5月15日 東京新聞群馬版より転載
ー中和事業の品木ダム 上流に貯砂ダム建設へ 年度内に着工予定ー
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20100515/CK2010051502000095.html
八ッ場(やんば)ダム建設予定地がある吾妻川の酸性水質を改善する「中和事業」を進める品木ダム(中之条町)への土砂流入を食い止めるため、国土交通省は十四日、品木ダム上流の大沢川に土砂を貯蔵するため、「貯砂ダム」を新たに建設する方針を固めた。本年度中に着工予定。国交省は「中和事業の抜本的な改良が必要」として堆積(たいせき)した土砂の再利用も研究する。 (中根政人)
中和事業は、草津温泉や鉱山跡などから吾妻川支流に流れ込む水の酸性濃度を下げるため、液状にした石灰を二十四時間体制で支流へ投入。品木ダムには、石灰投入によってできた硫酸カルシウムや塩化カルシウムなどの「中和生成物」を含む土砂を貯蔵し、川の真水と分離させて下流に放流している。
だが、四十年以上前に建設された同ダムの湖底では、土砂の堆積が進行。現在は湖底の土砂を掘削し、付近の山間部にある処分場に廃棄している。
貯砂ダムは土砂災害防止を目的とした砂防ダムに類似し、上流から流れ込む土砂を川の水と分離する構造。湯川と谷沢川の計二カ所では、既に二〇〇八年に完成している。土砂の堆積は同ダムの処理機能低下に直結するため、国交省はダム上流に三カ所目の貯砂ダム建設を計画した。
一方、現行の中和事業では、中和生成物を含む大量の土砂を廃棄する処分場が常に必要。貯砂ダムについても、将来的に許容量が限界に達した場合は、土砂を処分する必要が出てくる。
だが、処分場となる土地の確保には限界があるため、国交省品木ダム水質管理所(草津町)では、同ダムなどに堆積した土砂をセメントの原料として再利用する研究をしている。同管理所は「技術的な問題は解決されており、現在は事業の採算性を検証している段階」と強調している。