八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム 洪水時の最大流量示す資料は存在せず

◆2010年10月22日 東京新聞夕刊政治面より転載
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2010102202000195.html

ー八ッ場ダム根拠の最大流量 算出資料確認できずー

 馬淵澄夫国土交通相は二十二日午前の閣議後の記者会見で、八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)建設の根拠となる利根川の最大流量(基本高水)の算出方法について「具体的にどのように流出計算が行われたかについての資料が、現時点では確認できなかった」と述べた。

 国交省はこれまで、利根川の治水基準点・八斗島(やったじま)(同県伊勢崎市)での基本高水は、毎秒二万二千立方メートルだと説明。ところが、この計算の際、保水力を示す係数「飽和雨量」が市街地(二〇~四〇ミリ)を上回る程度で小さすぎるなど、算出方法を疑問視する声があがっていた。このため、馬淵氏は算出方法を見直すよう、同省河川局に指示していた。

 会見で、馬淵氏は一九八〇年に基本高水を計算した当時の資料を調べるように河川局に命じたが、飽和雨量などの係数や降雨量は地方整備局などの資料で確認できたものの、詳細な資料や経緯などが現時点で見つからなかったと話した。

◆2010年10月22日 15時9分 NHKニュースより転載
http://www.nhk.or.jp/news/html/20101022/t10014755011000.html

ー八ッ場ダム 洪水水量再算出へー

馬淵国土交通大臣は22日の記者会見で、群馬県の八ッ場ダムを建設する根拠とされてきた、洪水の際に利根川に流れる水の量が、どのように算出されたか定かでないとして、最新のデータを基に算出し直す考えを明らかにしました。

八ッ場ダムは、200年に1度起きる洪水の際に、利根川の群馬県伊勢崎市で流れる水の量が1秒当たり2万2000トンになるという予測の数値を根拠にして、建設が進められてきました。これについて馬淵国土交通大臣は、22日の記者会見で「具体的にどう計算されたのか確認できないことがわかった。まったく新しいところから考えないといけない」と述べ、最新のデータや技術を使って建設の根拠となっている数値を算出し直す考えを明らかにしました。建設中止の方針が示されている八ッ場ダムをめぐっては、国土交通省と地元の自治体が新たな評価基準に沿って、ダムが必要かどうかの検討を始めています。今回の数値の見直しは、これとは別に検証作業を進めるもので、馬淵大臣は会見の中で「当然数値の変更はありうる」と述べ、ダム建設を中止する手続きの一環として計画の根拠自体を検証し直す考えを強調しました。

◆2010年10月22日22時43分 朝日新聞社会面より転載
http://www.asahi.com/national/update/1022/TKY201010220482.html

ー八ツ場ダム 洪水時の最大流量示す資料は存在せずー

 利根川水系で200年に1度の大洪水が起きた時の最大流量(基本高水)を算出した根拠を示す資料が国土交通省内に存在しないことを、馬淵澄夫国交相が22日、明らかにした。基本高水は、国が八ツ場(やんば)ダム(群馬県)の建設が必要だと主張する最も重要な根拠。馬淵国交相は調査を命じたが、これまでのダム政策の妥当性が大きく揺らぐ可能性がある。

 馬淵国交相は、「どのようにして(基本高水の)計算が行われたかという資料が、現時点では確認できない」と語った。水の浸透度や流れる速度といった最終結論の前提となる数値は断片的に残っていたが、最終的に毎秒2万2千トンという数値に至った計算過程を体系的に記録した資料が存在しなかったという。

 また、国の審議会は2005~06年、利根川水系の基本高水が妥当か否か議論した上で、数値をそのまま踏襲しているが、審議会が踏襲を妥当と判断した根拠を示す資料も存在しなかった。馬淵国交相は「(妥当とした)肝心な記載はわずか3行。これはおかしいということで徹底調査を命じた」と語った。

 9月に就任した馬淵国交相は、基本高水がどのように決められたのか、同省河川局に説明を要求していた。

 洪水の被害を防ぐため、利根川水系では、国内最高レベルとなる200年に1度の洪水を想定。基本高水は1980年に中流にある八斗島(やったじま)地点(群馬県伊勢崎市)で2万2千トンと設定された。

 200年に1度の洪水は、47年のカスリーン台風をモデルにしたが、八斗島付近での川の流量の実測値はなく、国は仮定や想像上の数字をあてはめて洪水状況を再現し、2万2千トンと算出した。うち八ツ場ダムを含め上流のダムで5500トンを抑え、残る1万6500トンは堤防の強化などで対応することになっている。しかし、すでに完成した六つのダムの効果は計1千トンにすぎない。八ツ場ダムが完成しても効果は600トンにとどまり、さらに数基から十数基のダム建設が必要とされる。

 八ツ場ダムを巡っては今月1日、ダム建設が必要か否かの検証を、国と6都県などが始めている。馬淵国交相は今後、この検証作業の中で、利根川水系の基本高水の算出方法の見直しを指示している。

 民主党政権は、八ツ場ダム以外にも83カ所のダム事業の見直しを進めている。今後、利根川水系の基本高水の算出方法の見直しが引き金となって、各地の河川の基本高水も見直され、ダム建設の根拠が根本的に揺らぐ可能性もある。(歌野清一郎)