2010年10月14日 朝日新聞群馬版より転載
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581010140001
「三井国交副大臣が知事や町長らと会談」
「ダムの検証と生活再建はしっかり分けてほしい」と力説する大沢正明知事
この日の視察や意見交換を通じて「事情はよくわかった」と話す三井辨雄・国交副大臣(写真右)。写真左は津川祥吾政務官=いずれも長野原町林のやんば館
民主党政権が中止を打ち出した八ツ場ダム(長野原町)の建設予定地へ約9カ月ぶりに国土交通省の副大臣と政務官が訪れ、知事や長野原・東吾妻の両町長らと意見交換した。ダム必要性の検証がいつ終わるのかについて、この日も国交省側から具体的な回答はなく、生活再建事業への影響を懸念する地元側は改めて早急な対応を求めた。
政務三役の現地入りは1月の意見交換会以来。三井辨雄(わき・お)副大臣は9月の内閣改造で、津川祥吾政務官は6月の菅直人内閣発足でそれぞれ就任し、就任後初めて現地に入った。住民らの移転先の代替地の造成工事や、ダム本体予定地、川原湯温泉街などを視察し、ダム広報センター「やんば館」で会談に臨んだ。
「(再検証を進める)工程表を出して、生活再建事業に遅滞がないようにしていただきたい」。大沢正明知事が口火を切った。
八ツ場ダムの事業費は今年度、本体工事を除く生活再建関連などに約154億円が予算計上されている。しかしダムの必要性の再検証の日程を早く示すよう求める受益6都県側が、事業費の6割を占める負担金支払いを留保しており、生活再建事業への影響も懸念されている。
大沢知事は「(下流の)1都5県は別に止めたくて止めているわけではない。地元や我々にいらだちがあるなかで、こういう形になっている」と述べた。長野原町の竹内良太郎・町議会議長も「検証結果を一日でも早くお願いしたい」と訴えた。
三井副大臣は「できるだけダムに頼らない治水ということで、みなさんにご迷惑をおかけしているが、できるだけ検証の日程も生活再建もスピードを上げてやりたい」と積極姿勢を示した。だが具体的な答えは「(馬淵澄夫国交相を含めた)政務三役で協議して進める」と明言を避けた。
このほか東吾妻町の中沢恒喜町長や一場明夫町議会議長らは、ダム建設の中止方針を改めて批判し、町内のダム関連工事を予定通り進めるよう求めた。
終了後、長野原町の高山欣也町長は「(大臣ではなく)副大臣と政務官では内容のある話ができないのはやむを得ない。ただ、代替地工事と補償契約の遅れへの懸念は伝えられた。聞いておしまいにはしないでほしい」と話した。
◇「八ツ場生活再建」議連が19日に発足◇
県内を地盤とする民主党国会議員らが19日、「八ツ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」を発足させる。
八ツ場ダムなど公共事業が中止になった場合に、地元住民ら周辺に及ぼす打撃を研究し、打撃を最小限にとどめる政策提言をするという。宮崎岳志(衆院群馬1区)、石関貴史(同2区)、柿沼正明(同3区)、三宅雪子(衆院比例北関東)、中島政希(同)、桑原功(同)6氏らを含む衆参11人の議員が発起人に名前を連ねている。
19日の勉強会は、嶋津暉之・水源開発問題全国連絡会共同代表、渡辺洋子・八ツ場あしたの会事務局長が講師を務める。