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八ッ場ダム建設根拠の変化無視(東京新聞)

2010年10月14日 東京新聞一面より転載
ー八ッ場ダム建設根拠の変化無視ー
 
 利根川の最大流量(基本高水)の計算で重要な要素となる上流部の保水力について、国土交通省は基本高水計算時と比べて、近年は大幅に大きくなっていることを実質的に把握していたことが十三日、分かった。前提条件が変わったにもかかわらず、同省は基本高水の再計算を行っていない。

 基本高水は八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)建設の根拠。保水力が大きくなれば基本高水が低くなり、再計算によってダムの必要性が揺らぐ可能性がある。

 一九八〇年に定められた基本高水は、保水力を示す係数の「飽和雨量」を四八ミリにした計算モデル(計算式)を使って導かれた。

 ところが八二年と九八年に起きた利根川での洪水の水の出方を使って、計算式の正しさを証明する際、国交省は飽和雨量を四八ミリではなく、一一五ミリと一二五ミリに引き上げていた。十二日の衆院予算委員会で、馬淵澄夫国交相が明らかにした。

 森林の飽和雨量は通常一〇〇~一五〇ミリ。専門家らは「戦後の荒廃した森林が育ってきたことを考えれば四八ミリとの飽和雨量は小さすぎる。少なくとも一〇〇ミリ以上にして基本高水を再計算すべきだ」と指摘してきたが、国交省は「近年の森林の状況による洪水流量でも再現性がある」と計算式の正しさを強調。再計算は不要としてきた。

<利根川の基本高水> 国土交通省は1980年の「利根川水系工事実施基本計画」で、47年のカスリーン台風並みの雨(3日間で319ミリ)が降った場合、利根川の治水基準点である八斗(やった)島(群馬県伊勢崎市)に最大毎秒2万2000立方メートルの水が流れると試算。八ッ場ダム(同県長野原町)の建設根拠としてきたが、「飽和雨量を100ミリで計算すれば、最大流量は毎秒1万6500~1万8700立方メートル程度だ」との専門家の指摘もある。