八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

林地区の直売所構想

◆2010年11月13日 上毛新聞二面より転載

ー八ッ場ダムの林地区直売所 株式会社で運営 住民出資、12年春目指す 対策委が構想ー

 長野原町の林地区八ッ場ダム対策委員会(篠原茂委員長)は12日までに、地域振興の拠点として同地区に計画されている農産物・加工品の直売所について、地元住民らが出資する株式会社による運営を目指すことなどを柱とした構想をまとめた。直売所と運営会社の名称をもとに「八ッ場ふるさと館」とする方針も決めた。構想をたたき台に施設内容や運営方法を検討、2012年4月のオープンを目指して準備を進める。

 直売所は、県や下流都県が拠出する利根川・荒川水源地域対策基金を活用して整備することを町が計画。施設内容が固まった段階で設計に入る。
 構想では、国道145号付け替え道(八ッ場バイパス)沿いに整備。地域の農産物や加工品、民芸品などを販売する直売所のほか、レストランや軽食コーナー、情報発信コーナー、足湯、駐車場などを併設する。
 住民らが中心となって会社を設立し、町から施設の運営委託を目指す。また、直売所での出荷希望者を募り、直売所利用組合を立ち上げる。
 同地区は2007年度から直売所の内容や運営方法を検討。一定の方向性がまとまったため、11日の同委員会で概要を説明し、了承された。

—転載終わり

 当初、下流都県の拠出による公社方式で運営される筈だった利根川・荒川水源地域対策基金事業による地域振興策は、下流都県が難色を示したため(群馬県の県議会における説明)、群馬県は株式会社方式への転換を図ってきました。

 水没予定地の中で大きな集落は、川原湯、林の両地区ですが、株式会社方式によるエクササイズセンター構想が頓挫している川原湯地区と基金事業が具体化しつつある林地区では様相が大きく異なります。全戸水没予定の川原湯地区では、観光業が中核であるため、「ダム湖」と地域振興策を切り離すことができませんが、農村地帯の林地区では概して「ダム湖」と地域振興は一体のものという捉え方はされていません。上記の直売所についての記事でも、「八ッ場」というダム名が店名に利用されることを伝えていますが、ダム湖そのものには言及していません。
 直売所の場所は、付替え県道と付替え国道が交差する地点で、国交省のPR館”やんば館”の裏手上方、長野原第1小学校にも近く、対岸の堂岩山、丸岩、金鶏山を一望できる立地条件です。

 この地域には、群馬県により地滑り対策が施されており、地質の専門家らはダムで貯水すれば地滑りが起こると警鐘を鳴らしてきました。
 川原湯地区の人口が激減した現在、水没四地区(最上流の長野原地区を除く)の中では100世帯近くの人口を抱える林地区が最も人口が多い集落となっており、林地区の地域振興は八ッ場ダム予定地の地域振興策にとって重要な意味を持ちます。林地区の地域振興にとっては、直売所の運営だけでなく、直売所を支える林地区の農業の建て直しが重要なポイントとなります。