馬淵大臣がダム予定地の住民との意見交換を希望しているとのニュースが流れていますが、意見交換をするより先に、ダム予定地の住民の生活再建対策に取り組む必要があります。中でも重要なのは、ダム中止後の生活再建や地域再生を可能とする法整備です。わが国には、ダムを前提とした法律しかなく、長年ダム計画で地域や生活を破壊されてきた住民へのセーフティーネットが何一つ用意されていないからです。
けれども、政策を前へ進めるためのこうした取り組みは、先送りが繰り返されています。ダム中止後の再生に一歩踏み出そうとしている川辺川ダム予定地の五木村では、補償法案を先送りしている国交省への不満が高まっています。民主党政権はなぜ、自らが進めようとしている政策に沿った動きをしようとしている五木村の声に真摯に耳を傾けないのでしょうか?
以下の熊本日日新聞(15日付)の記事と同趣旨の記事が、同じく12月15日に上毛新聞にも掲載されました。記事本文は同じですが、タイトルは、「ダム中止で国交省方針 補償法案またさきおくり時期通常国会も 八ッ場で自民に配慮」となっています。「八ッ場で自民に配慮」というのが本当であれば、それは国民を欺くことです。熊本日日新聞は続報を載せています。ダム計画からの自立再生を目指している五木村にエールを送ります。
◆2010年12月15日 熊本日日新聞
ー五木村生活再建補償法案 通常国会提出見送り 国交省方針ー
http://kumanichi.com/feature/kawabegawa/kiji/20101215001.shtml
国土交通省は14日、ダムなどの公共事業を中止した場合に関係自治体や住民の生活再建を財政支援する補償法案について、次期通常国会への提出を見送る方針を固めた。モデルケースとする川辺川ダムの補償内容をめぐり国と県の調整が難航しているほか、「ねじれ国会」で八ツ場ダム(群馬県)の建設を求める自民党の反対が予想されることなどにも配慮した。
政権交代時は今年の通常国会への提出を目指していたが、延期は2度目。「ダムに頼らない治水」を掲げて各地でダム事業の検証作業が行われており、中止の大前提となる補償の根拠法が宙に浮く事態への地元の反発は必至だ。
法案は、公共事業を中止した場合、連動してインフラ整備もストップするなどの不利益が生じる自治体が再建計画で示す生活道路整備などの事業ごとに、国の補助割合を明記することを想定。川辺川ダムの中止に伴う五木村の生活再建策をモデルに補償対象を決め、来年度の予算関連法案として提出を検討していた。
五木村の生活再建策は今年11月に国、県、村が道路整備や再建基金創設など大枠を決定。しかし、具体策をめぐって国交省は「国が補償する事業が多すぎる」と難色を示し、基金への国と県の拠出割合も主張に大きな差があるなど、協議は暗礁に乗り上げている。
◆2010年12月16日 熊本日日新聞
ー補償法案見送り報道 国交省に説明要求 五木村ー
http://kumanichi.com/feature/kawabegawa/kiji/20101216002.shtml
国土交通省が公共事業中止後の地元補償法案の次期通常国会への提出を見送る方針を固めたとの報道を受け、川辺川ダムの水没予定地を抱える五木村は15日、同省川辺川ダム砂防事務所(相良村)の豊口佳之所長に、事実確認のための説明を求めた。
役場を訪れた豊口所長は和田拓也村長や村議らに、「方針を固めたとは聞いていない」と報道を否定。「記事が間違っていると受け止めていいのか」との質問には、「承知していないということ。知る限りにおいては根拠不明」と答えた。(本田清悟)