付替え国道の記事の続き

2011年1月6日

 昨年12月19日に開通した八ッ場ダムの付替え国道については、翌20日に各紙が記事を掲載しましたが、その後の状況を年が明けてから上毛新聞が1月4日の紙面で報じています。

◆2011年1月4日 上毛新聞より転載
 ー国道145号八ッ場バイパス 開通しても誘導標識なし 
  管理する県「暫定的で渋滞の懸念」
  観光関係者「県外者分かりづらい」

 昨年12月に開通した国道145号八ッ場バイパスについて、管理する県が「暫定的な開通で、車が集中すると渋滞が懸念される」などとして、バイパスに誘導する道路案内標識の設置を控えていることがわかった。草津温泉など多くの観光地を抱える西吾妻地域へのアクセス向上の役割を期待されている同バイパス。観光関係者からは「(年末年始の行楽シーズンを迎え)せっかく通れるようになったのだから、県外の人も利用しやすいような表示をしてほしい」との声が上がっている。
 バイパスは、八ッ場ダムの生活再建事業として国、県が整備を進めてきた付け替え国道。全長10.8キロのうち、東吾妻町松谷の雁ケ沢ランプから長野原町長野原までの9.4キロ区間が12月19日に国道として開通した。草津方面へのアクセスはこれまでより5分ほど短縮され、従来の国道とともに、生活、観光両面で利用されている。
 県は①バイパスの途中に工事個所がある②雁ケ沢ランプ付近のバイパスと国道の接続部分が急傾斜、急カーブで、JRの踏切もあり、渋滞が懸念されるーことなどから、「全線が完成したわけではなく、バイパスに積極的に導く段階ではない」として、主に従来の国道側に誘導している。
 これに対して、草津温泉の旅館関係者は「せっかく便利になったのだから、観光客にもわかるような案内表示をしてほしい」と要望。通行したドライバーの一人は「案内がないと県外の人には分かりづらい」と指摘している。

—転載終わり—

 東日本最大の温泉地といわれる草津温泉へ行くには、八ッ場ダム予定地を通るルートが一般的です。一大観光地である草津温泉にとって、道路整備が八ッ場ダム事業を意味するといっても過言ではなく、1980年代からたびたび八ッ場ダム事業と付け替え国道の早期完成を国に要望してきた経緯があります。
 ところが、1990年代に完成するはずだった付け替え国道はいつになっても出来上がらず、ダム予定地を走る現在の国道はダムで水没するからと旧来のままで、その上、関連工事が佳境に入ってからはダンプトラックが大量に行き交うようになり、観光客にはいたって不評です。 

付替え国道には多くの問題がありますが、一般のメディアには殆ど取り上げられてきませんでした。今後さらに問題が顕在化することが予想されます。
 以下にまとめた主な問題点を転載します。
 ↓
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=1102

○付替え国道の下流部1.4キロの工事の見通しが立っていない。
 下流部1.4キロ区間には現在のJR吾妻線と交差する箇所がある。JR吾妻線の用地買収(川原湯温泉の新駅周辺)のメドが立っておらず、鉄道の付替えが終了しないと、付替え国道も完成しない。

○付替え国道の予算は残りわずかとなっており、残事業費で完成するかどうか不明。
 そもそも、付替え国道は四車線を予定して国、関係都県の予算が組まれており、国交省の八ッ場ダム計画図でも四車線が描かれているが、完成しているのは二車線のみであり、トンネルが二本通る予定の場所はどこも一本しかトンネルが造られていない。今後、造るかどうかも不明。計画が杜撰であったことは明らかである。

○付替え国道は地形地質の面から見ると悪条件の中で建設しているため、今後、災害の危険性に見舞われる可能性があり、維持管理費も莫大になることが予想される。
 現在の国道は狭い渓谷内を走っているため、災害に弱いといわれ、連続降雨120ミリになると通行停止になる。大雨の時など上流町村が陸の孤島となってしまうため、より利便性の高い道路が求められてきた。しかし、まだ周辺工事が完成していないためか、付替え国道も連続降雨120ミリで通行停止となる。
 付替え国道は今春から暫定開通が始まったが、吾妻渓谷に近い川原畑地区は地質が脆い場所を通るため、雨が降った9月、11月と二度も落石事故が発生している。
 この他、川原畑地区の代替地周辺では法面崩落が続いており、その対策工事のためにアンカーボルト工が実施されている。また、周辺の松葉沢付近では、地滑りの対策工事が未だに行われており、そのため工事現場では道路が迂回している。周辺の地質条件から見て、アンカーボルト工法、抑え盛土工法などが最終的な解決になるか疑問との専門家らの指摘がある。

○付替え国道の開通により、現国道が通っている吾妻川右岸にある川原湯温泉に立ち寄る観光客が減少する。
 これは現在の温泉街が移転する予定の川原湯地区の打越代替地にも共通する問題である。打越代替地のライフラインとなる付替え県道は未だに未完成で、現在の温泉街より更にアクセスが悪いという問題を抱えている。

○付替え国道の開通により、現国道をどうするのか、という問題が生じる。ダムに沈むのであれば仕方がないが、ダムを造らない場合、水没予定地に住み続けたい住民にとって、現国道は必要なライフラインである。また、現国道は名勝・吾妻渓谷の中を走り、国の天然記念物・川原湯岩脈を間近に見ることが出来る優れた観光道路である。八ッ場ダム計画はこれらの貴重な自然遺産を沈めることになるが、ダムができないのであれば、現国道を有効に活用することは地域の再生にとって重要なポイントとなる。