八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

群馬県民へのアンケート結果(上毛新聞)

 上毛新聞に八ッ場ダムに関する群馬県民対象の世論調査の結果が掲載されていました。
 大づかみにまとめると、八ッ場ダムの必要性は感じていないけれど、苦渋の決断でダムを受け入れた地元の方々のことを考えると、ダムを作るべきだという意見が主流、ということのようです。
 八ッ場ダムについては、2009年の総選挙で民主党が八ッ場ダム中止を打ち出すまでは群馬県内でも一部を除いて関心が薄いというのが実態でした。政権交代後、マスコミが流し続けた「ダム中止に反発する地元住民」の情報が世論に大きな影響を与えた結果、ダム中止に反対する割合はむしろ上昇しました。地元の一般の方々にすれば、下流域の都市住民のためにやむなくダム建設に同意しているのに、水没する自分たちのためにダムを造るといわれても・・・、と思われるのではないでしょうか。

 私たちは、ダム事業による生活再建事業に多くの問題があり、ダム事業をこのまま継続しても、地元の方々が望んでいる生活再建や地域振興は実現しないこと、八ッ場ダムがダム予定地や下流域に大きな災害をもたらす危険性があることを訴えてきました。こうした情報が広まれば、アンケートの結果は全く違うものになっていたのでしょうが、市民団体がホームページで発信するのがせいぜいの情報では、一般の認知度はまだまだです。

 実際、現実は複雑で、ダム事業を進めれば地元の方々が満足する、というような容易なものではおよそありえません。ダム事業を容認することで、地元への責任を果たせると考えるとしたら、政治も世論もあまりに安易です。

◆2011年1月5日 上毛新聞より転載

 ー2011 変わる暮らし 上毛新聞者・群馬大社会情報学部共同調査 【4】 八ッ場ダム 建設支持、中止の倍 水害、渇水 危機感は薄く

 2009年9月に建設中止が表明されて以来、混迷が続く八ッ場ダム問題。馬淵澄夫国土交通相は、今年の秋までにダム本体建設の是非の検証結果を出す目標を掲げている。同ダム建設の賛否について尋ねたところ、「建設すべきだ」が42.6%で「中止すべきだ」の21.9%を上回った。
 政党支持別では、計画浮上から50年以上にわたって事業を進めてきた自民の支持者の65.6%が「建設すべきだ」とし、「中止すべきだ」は5.9%にとどまった。一方、政権交代に伴って中止を打ち出した民主の支持者をみると、「中止すべきだ」が38.6%、「建設すべきだ」が25.4%と自民に比べて意見が分かれた。
 八ッ場ダム建設の目的である本県や東京、埼玉など利根川流域の治水安全度の向上や水源確保への認識についても質問した。
 本県を含む利根川流域で大規模な水害が発生する可能性を「低い」(どちらかと言えばを含む)と思う人は40.4%で、「高い」(同)の23.5%を上回った。特に自宅が被害に遭う可能性を「低い」(同)と考える人は77.1%に上り、「高い」(同)は9.6%しかなかった。
 関東地方に大きな被害をもたらした1947年のカスリン台風以降、利根川本川の破堤による甚大な被害がないこともあり、流域住民の水害に対する危機感が薄れつつあるとみられる。
 治水だけでなく、日常生活に支障が出るような渇水が起きる可能性についても「低い」(同)が58.5%で「高い」(同)の16.9%と大きく差が開いた。
 水害や渇水の危機意識が低いのにダム建設を求める人が多いのは、長年にわたる反対闘争の末に「苦渋の決断」として建設を受け入れ、ダム前提の将来設計を描く長野原町の地元住民に対する気遣いが背景にあると推測される。

 県民世論調査(数字は%)
 
 八ッ場ダム

問 国は八ッ場ダムを造るべきか、やめるべきかの検証を始めました。八ッ場ダムについてどう考えますか。

①建設すべきだ 42.6
②建設を中止すべきだ 21.9
③分からない・どちらとも言えない 35.5

問 将来、県内を含む利根川流域で大規模な水害が発生する可能性についてどう思いますか。

①高い 5.2
②どちらかと言えば高い 18.3
③どちらかと言えば低い 26.8
④低い3.6
⑤分からない・どちらとも言えない 36.1

問 自宅が浸水被害に遭う可能性についてどう思いますか。

①高い 2.7
②どちらかと言えば高い 6.9
③どちらかと言えば低い 33.0
④低い 44.1
⑤分からない・どちらとも言えない 13.4

問 日常生活に支障が出るような浸水が起こる可能性についてはどう思いますか。

①高い 3.7
②どちらかと言えば高い 13.2
③どちらかと言えば低い 35.8
④低い 22.7
⑤分からない・どちらとも言えない 24.6