群馬県のホームページに大澤知事の2010年最後の記者会見の内容がアップされました。
大澤知事は、政権交代後、国交大臣が「生活再建事業は必ず全部やる」と言ったのに、生活再建事業の法的手続きも一切しない、と不満を述べています。
私たちは、ダム中止後の補償法案の制定を国に求めてきました。大澤知事はダム本体工事の着工を求めていますので、私達とは立場が180度異なりますが、その主張には共通する部分もあります。民主党政権は、こうした点を見極めながら、具体的な施策に取り組む必要があるのではないでしょうか。
今夏に予定されている東京都知事選のことも取り上げています。石原東京都知事は、八ッ場ダム推進の中心人物の一人です。都知事選の結果は八ッ場ダムの行方に大きな影響を及ぼします。
群馬県のホームページより八ッ場ダムに関連する箇所を転載します。
◆群馬県ホームページ 平成22年12月28日の記者会見より
http://www.pref.gunma.jp/cts/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=101298
○八ッ場ダムについて
(記者) 八ッ場ダムの関係なのですが、来年度の事業費として152億8400万円。具体的に、どの事業にどのように使われていくかというのは、まだ見えないところでありますけれども、あらためて、この金額についてのご評価をしていただけますでしょうか。
(知事) 先日も少しお答えしたのですが、詳細な内容が分からないので何とも言えませんが、前年度と大体同額ということです。私は、前原前国土交通大臣が、昨年の政権交代時に、「中止の方向で予断なく検証する」と言いながら一方で、「生活再建事業は必ず全部やる」ということも言っていただきました。私は、二面作戦でいっていただけるものと、大きな期待を持っていました。結果的に、一年たっても、生活再建事業の法的手続も一切しないで、この状態できました。その結果、1都5県が負担金を払わないという状態になったら、「生活再建事業が止まる」と言って、地元の方々は非常に不安を抱きました。生活再建事業を国の施策として最後まで責任を持ってやると言ったのであれば、なぜそれを、この間にしっかりとできなかったのか、私は非常に不満に思っています。その中で、今年度と大体同額という形で組まれましたが、政府の真意が読み取れないという気持ちで、「正確な情報が出るまでコメントは差し控えたい」と申し上げました。国がもっと、生活再建に真剣に取り組む姿勢が欲しかったと思っています。
(記者) その国なのですが、菅首相が年明けにも内閣改造をするのでは、という見通しを伝える報道もあります。そうなりますと、仙谷官房長官を含め、馬淵国土交通大臣も同時に更迭される恐れが高まっているのですが、仮に大臣がまた新しい人になってしまうのだとしたら、大臣が代わってしまうという事態が起きるのだとしたら、どういう対応を政府に望まれますでしょうか。
(知事) (国は)何を言うのですかね。国から見て、八ッ場ダム問題はどういう位置付けなのか、非常に疑問に思います。確かに、国の事業は幅広いですから、八ッ場ダムは一つの事業かもしれません。しかし、58年も地元に苦労を押しつけてきて、この1年半足らずで大臣が3人も代わったら、地元としたら誰に真意をぶつけたらよいのか。政府に対して、不信感を持たざるを得ません。まだ、馬淵大臣は、前原前大臣の時に副大臣で、今年の1月24日に会談した時には馬淵大臣も副大臣として出席していらっしゃいました。大臣に代わって、馬淵大臣はしっかりと状況を掌握していらっしゃって、地元の方々にもしっかりと対応してくれていると、私は一定の評価をしています。またこれで大臣がお代わりになるということは、言葉がありません。
(記者) もし代わるのだったら、地元にある程度理解のある三井さん(国土交通副大臣)とか…。今の副大臣だったらまだしも、と思うのですが。
(知事) 代わらないで、来年の秋までに一日も早く検証結果を出すとおっしゃっているのですから、政局うんぬんではなく国民生活を第一に考えて、国のかじ取りをしていただきたいというのが、私の気持ちです。
(中略)
○八ッ場ダムについて(再)
(記者) 先ほどの八ッ場ダム1都5県との連携という話の続きなのですが、東京都知事選挙が行われるということがありまして、まだ石原さんは進退を明らかにしてないというかいろいろご発言があり、いろんな候補が取りざたされています。いずれの候補が出るにせよ、群馬県として東京都知事に対してどういうスタンスで巻き込んでいくのか、逆に石原さんは割とリーダーシップを持っていらっしゃる方なのですけど、その辺を含めて教えていただけますでしょうか。
(知事) 石原都知事は非常に八ッ場ダム問題について、真剣に取り組んでいただきまして、自ら東京都のヘリコプターを持ってきて、関係都県の知事を全部乗せて上空から視察させて、各県の知事に八ッ場の理解を深めてもらうとか、群馬県が本当はやらなくてはならないようなことまで都知事にやって頂きまして非常に感謝しております。1都5県の中でも当然、都知事の存在感という大きなものがありますし、石原さんの経歴から見ても、国に対して物申す立場というのは非常に高い位置づけがあります。私としては、石原都知事が続投していただければ一番良いと思っていますけど、石原都知事のお考えですから何とも申せません。
(記者) 知事としてのスタンスは、東京都という大きな、石原さんという経歴もあったりとかして、石原さんになって欲しいというのもあると思いますが、なるにせよならないにせよスタンスとして次は知事が新しくなる、または再任されるということに対して、また新たなミッションというかアクションを起こしたりというのはありますか。これまで通りのスタンスという感じでしょうか。
(知事) これまで通りです。
(中略)
○八ッ場ダムについて(再々)
(記者) 八ッ場ダムに戻るのですが、国の予算の関係で、先ほど生活再建に真剣に取り組んで欲しかったとのお話がありましたが、この(予算)額に関して知事としては不満ということなのですか。
(知事) 額についても、私は、もっと早く(生活再建を)仕上げてもらいたいから、額は増やしてもらえば大いに結構なのですが、それよりも、昨年、前原大臣が政権交代直後にすぐ言ったのではないですか。(八ッ場ダムは)中止の方向で、そして生活再建はしっかりとやりますと。ですから(ダム)本体と切り離しても生活再建をもしやるのであれば、1都5県が負担金を払う払わないという問題以前に、国が責任を持ってやるといっているのであれば、負担金問題があれだけクローズアップされる必要はなかったのではないかという思いが強いということです。
(記者) 額というより姿勢に対してということですか。
(知事) そうです。
◆2010年12月29日 東京新聞群馬版より転載
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20101229/CK2010122902000080.html
ー生活再建「真意読めない」 知事、国に不満 今年最後の会見ー
大沢正明知事は二十八日、今年最後となった定例会見で、八ッ場(やんば)ダム問題の一年間の動きを振り返り「国にもっと、地元の生活再建へ真剣に取り組む姿勢がほしかった」と強い不満を訴えた。民主党政権が生活再建の代替案を示さないことについても「建設中止宣言から一年以上が経過したが、(補償法制定などの)法的手続きも一切しないままだ。真意が読めない」と疑問を投げかけた。 (中根政人)
国の現状の対応について、大沢知事は「政権交代時に『生活再建事業に最後まで責任を持つ』と言っておきながら、その後も何の政策も打ち出せなかった」と痛烈に批判。「流域六都県が本年度事業負担金の支払いを留保したことが、結果的には地元住民に『事業が止まる』という不安を与える事態になってしまった」と訴えた。
さらに、ダム中止を宣言した前原誠司氏から馬淵澄夫氏に国土交通相が交代した点にも「地元としたら、誰に思いをぶつけたらよいのか。不信感を持たざるを得ない」と強調。ダム問題に関する民主党政権の熱意に疑いを向けた。
一方、子ども手当の地方負担が来年度も継続されることについては「非常に遺憾。地方負担について、国は『本年度限り』と言ったはず。地方との信頼関係に重大な問題が生じる」と強い不快感を示した。