八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

注目の「基本高水」有識者会議始まる

2011年1月21日

 八ッ場ダムの目的(治水)と関連の深い利根川の「基本高水」を検証するために、国交省が日本学術会議に依頼して発足した有識者会議の初会合が昨日開催されました。

 有識者会議については、こちらに解説しています。
 ↓
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=1125

 昨日の初会合における配布資料は、日本学術会議の以下のページに掲載されています。
 ↓
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/bunya/doboku/giji-kihontakamizu.html
 
 この有識者会議に対して、八ッ場ダム訴訟弁護団より要請書が提出されました。要請書全文を転載します。


2011年1月19日
日本学術会議 土木工学・建築学委員会
河川流出モデル・基本高水評価検討等分科会
 委員 各位

                 八ッ場ダム公金支出差止住民訴訟弁護団
                     弁護団長  高橋利明
                 
      
       利根川の基本高水設定手法の検証に関する要請書
       
今回、国土交通省河川局からの依頼により、日本学術会議に貴分科会が設置され、利根川の基本高水設定手法の検証に取り組まれることになりましたが、この検証に関して、次の4点を要請いたします。
真摯に受け止められるよう、お願いいたします。

1 国土交通省の説明を受けるだけではなく、利根川の基本高水流量の基本的な問題点を提起してきた私たちが推薦する専門家にも説明を求めてください。

2 別添の付属資料「カスリーン台風が再来しても、八斗島地点毎秒1万6750?/秒だから、八ッ場ダムは要らない」で明らかにされていることを十分に踏まえて検証を行ってください

3 河川流出モデルの検証は机上の計算の良否だけで判断するのではなく、利根川上流部の堤防の現状を把握し、それを踏まえて行ってください。

4 現在の基本高水流量毎秒22,000?/秒について国土交通省は飽和雨量を48mmから125mmに上げても3%しか小さくならないという計算結果を示していますが、その計算に使用した流域分割図、流出モデル図は公表されておらず、この計算の真偽は定かではありません。この計算を私たちも検証できるように、国交省に対して流域分割図、流出モデル図の公開を求めてください。

                             以上

連絡先 〒160-0003東京都新宿区本塩町9 光丘四谷ビル 四谷見附法律事務所
                        電話 03-3356-0434

—転載終わり—

この要請書は会議の終わりで委員会に配布され、要請事項について小池俊雄委員長(東大教授)が答えました。
 その内容は、概略以下のようなものでした。

1 国土交通省の説明を受けるだけではなく、利根川の基本高水流量の基本的な問題点を提起してきた私たちが推薦する専門家にも説明を求めてください。

 委員長:外部の専門家の意見を聞く場は設けることは考えており、次回提案する。

2 別添の付属資料「カスリーン台風が再来しても、八斗島地点毎秒1万6750m3/秒だから、八ッ場ダムは要らない」で明らかにされていることを十分に踏まえて検証を行ってください。
 *付属資料はこちらに掲載しています。
  ↓
https://yamba-net.org/wp/modules/karyu/index.php?content_id=1#bengodan

 委員長:よく読ませてもらう。

3 河川流出モデルの検証は机上の計算の良否だけで判断するのではなく、利根川上流部の堤防の現状を把握し、それを踏まえて行ってください。

 委員長:答なし

4 現在の基本高水流量毎秒22,000m3/秒について国土交通省は飽和雨量を48mmから125mmに上げても3%しか小さくならないという計算結果を示していますが、その計算に使用した流域分割図、流出モデル図は公表されておらず、この計算の真偽は定かではありません。この計算を私たちも検証できるように、国交省に対して流域分割図、流出モデル図の公開を求めてください。

 委員長:国交省が答えたとおりである。

 今回のような要請について

 委員長:或る段階で検討結果を説明する場を設け、ルールをきめてヒアリングを行うようにしたい。

 今回は第1回で、大半の時間が国交省の説明で使われてしまいましたので、本格的な議論、作業はこれからになります。
 この委員会は、基本高水についての最新の科学的知見を駆使した議論に基づいて結論を出すことを期待されています。

  関連記事を転載します。

◆2011年1月20日 東京新聞群馬版より転載
 -八ッ場ダム 基本高水検証始まる 有識者会議「河川整備全体に影響」―
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20110120/CK2011012002000064.html

 八ッ場(やんば)ダム建設の根拠となっている利根川の最大流量(基本高水)について、馬淵澄夫前国土交通相が「ゼロベースで新たな流出計算モデルを構築する」として再計算する方針を示したのを受け、計算内容の可否などを検証する有識者会議が十九日発足し、東京都内で初会合を開いた。九月末を目標に、国交省が実施する再計算の内容評価をまとめる。

 基本高水の再計算については、国交省が十三日付で日本学術会議に内容評価を依頼。同会議の「河川流出モデル・基本高水評価検討等分科会」が有識者会議の役割を担った。

 有識者会議の委員長に就任した小池俊雄・東大教授は、基本高水の再計算結果について「(八ッ場などの)ダム建設の是非だけでなく、(利根川水系の)河川整備計画全体に影響する」と明言した。

 初会合では、国交省が、一九四七年のカスリーン台風並みの雨が降った場合、利根川の治水基準点となっている伊勢崎市八斗(やった)島の最大流量が毎秒二万二千立方メートルに達するとした現在の計算内容を説明した。

 さらに、上流の森林保水力を考慮して、飽和雨量を現状の四八ミリから一二五ミリに増やして再計算した場合でも、最大流量は約3%の減少にとどまるとの試算も提示。馬淵氏の方針とは裏腹に、現在の計算が妥当との主張をにじませた。

 有識者からは「国内外で予測困難な水害が多発する中、過去の降雨データだけで基本高水を計算することが本当に適切か」との疑問が示された。このほか、「(八ッ場ダムの是非については)国民の関心が高い。シンポジウムなどを開催し、有識者会議の議論をわかりやすく報告することが必要」と、開かれた検証を求める意見も出された。 (中根政人)

◆2011年1月20日 上毛新聞一面より転載
 
 ー日本学術会議分科会初会合 八ッ場関連 基本高水の評価 報告「極力早める」-

 八ッ場ダム問題に関連し、国土交通省による利根川の「基本高水流量」の検証を学術的に評価する日本学術会議土木工学・建築学委員会の分科会初会合が19日、都内で開かれた。委員長に就任した小池俊雄東大教授は記者団に、国交省への最終報告期限を9月末としながら、「専門的な議論を尽くした上で極力早めようと思っている」と述べ、可能な限り報告を前倒しする考えを示した。
 分科会は9月30日までの時限設置で、大学教授ら委員12人で構成。初会合では国交省の担当者が委員に対し、これまでの数値の算定方法について説明した。
 基本高水流量は利根川で起こりうる最大規模の洪水流量で、国はこの数値を基に八ッ場ダム建設を含む利根川治水の基本方針を定めている。
 基本高水流量をめぐっては、馬淵澄夫前国交大臣が数値の妥当性の検証を指示。大畠章宏国交相は数値の見直しを踏まえてダム本体の再検証を進め、「秋までに結論を得るよう努力したい」としている。