八ッ場ダムをはじめとして、全国のダム予定地で脱ダムに激しい反発が起こるのは、わが国にはダム事業を中止することを前提とした法律がなく、ダム事業の中止=ダム予定地住民の切捨てが公然と行われてきたからです。長い歳月の間に国策だからとダム事業を無理強いしてきたにもかかわらず、このような棄民政策が行われるのでは、地元住民が反発するのも当然です。ダム事業を中止するためには、ダム予定地住民のセーフティーネットともいうべき法整備が必要です。
ところが、民主党政権は法整備に取り組む姿勢がまるで見られません。本当にダム行政を転換する気があるのかと疑問の声があがるゆえんです。
国交省はダムの検証を行うというものの、議論はなかなか前に進まず、この間、ダム予定地では政策が進まないまま、住民は生殺しの状態に置かれ、深刻な状況が続いています。
八ッ場ダム予定地では未だにダム推進の声が大きく、ダム事業中止の前提となる法整備を求める声は表立っては聞こえませんが、ダム中止の条件が整っている川辺川ダム予定地を抱える熊本県では批判の声が日に日に高まっています。五木村に対して何の対策もとらないのは、全国のダム行政への波及を恐れる官僚の抵抗があるからでしょうか?
法案提出の先延ばしは、両院で与党が多数を占めていた前原大臣の時代からの方針です。この問題について、政治は何の説明責任も果たしていません。
◆2011年1月20日 熊本日日新聞より転載
http://kumanichi.com/feature/kawabegawa/kiji/20110120001.shtml
-五木村補償法案提出見送り 村長「怒り覚える」―
国土交通省が24日開会の通常国会に、公共事業中止後の地元補償法案の提出を見送ったことを受け、川辺川ダムの水没予定地を抱える五木村の和田拓也村長は19日、「村の生活再建はまったなし。法案整備を早急にやってほしい」と憤りをあらわにした。
補償制度の創設は、2009年9月に同ダム中止を表明した前原誠司国交相(当時)が、同月末に村を訪問した際に表明した。和田村長は「大臣が住民の前で約束しながら、1年半たっても動きがない。法案提出の見送りには怒りを覚える」と強調。「道路整備など、法案によらずともできる補償事業については、できるところから進めてほしい」と注文を付けた。(本田清悟)
◆2011年1月20日 毎日新聞熊本版より転載
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110120-00000220-mailo-l43
-大畠国交相:五木村関連法案の提出見送り発言 蒲島知事、早期成立求める /熊本―
◇「再建は民主の約束」
蒲島郁夫知事は19日の定例会見で、大畠章宏国土交通相が川辺川ダム事業中止に伴う五木村再建関連の補償法案の提出を見送る発言をしたことについて「川辺川ダム中止と五木村再建は民主の約束で、菅直人総理のリーダーシップを期待したい」と早期成立を求めた。
大畠国交相は18日の報道各社のインタビューで、次期通常国会への提出予定法案に盛り込まなかったことについて「国会情勢が非常に厳しい中で、俎上(そじょう)に上がっていない。必要性はよく実感するので、引き続き準備・検討は進めていきたい」と答えていた。
蒲島知事は、公式に国から見送りの連絡はないとした上で「ダムによらない治水は民主の約束だ。八ッ場ダム(群馬県長野原町)との関係もあるだろうが、待っていると五木村の振興が遅れるので、補償法案を含め振興を早めてほしい」と述べた。【結城かほる】
◆2011年1月22日 読売新聞熊本版より転載
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kumamoto/news/20110122-OYT8T00051.htm
-川辺川ダム中止補償法案見送り…五木村が国に抗議へ―
川辺川ダムなど大型公共事業の中止に伴う補償法案について、国土交通省が今通常国会への提出見送りを決めたことを受け、五木村と同村議会は21日、大畠国交相に対し、法案の早期提出などを求める抗議文を提出することを決めた。
同日開かれた村議会ダム対策特別委員会では、九州地方整備局川辺川ダム砂防事務所の豊口佳之所長が「補償法案は国会提出法案のリストに載っておらず、第一弾として提出されることはない」と説明。
「(生活再建に関する)国、県、村の3者協議を進め、支援策の具体的内容や枠組みを確定させないと法案が実態にそぐわないものになりかねない」と理解を求めた。
これに対し、議員からは「法案提出に時間がかかりすぎる。3者協議の取りまとめを急ぎ、一日も早く再建に取り組んでほしい」「今のままでは今後、国には協力できない」など厳しい意見が相次いだ。
和田拓也村長は「次回の3者協議は(政務三役や知事が出席する)拡大会議を開き、生活再建策の枠組みを決めてほしい」と注文を付けた。