3月9日の衆議院国土交通委員会において、大畠国交大臣が八ッ場ダムの事業費が増額になった場合は増額分を国が負担する考えを示唆しました。
八ッ場ダムの事業費増額の要因は、杜撰なダム計画にあります。八ッ場ダムの事業費は、2004年に当初の2,100億円から4,600億円に上げられましたが、それでも到底ダム完成には足りないことを市民団体などが指摘してきました。2008年にダムの工期が2010年度から2015年度に延長されましたが、それでも国交省は事業費は4,600億円でおさまると主張してきました。
現在、八ッ場ダム事業は継続していますが、凍結しているダム本体工事に着工するかどうかの検証作業を行っています。この検証作業は主体がダム事業を推進してきた国交省関東地方整備局が自ら行うもので、検証の客観性は期待できませんが、それはさておき、残事業費がどの程度になるかが大きな焦点となっています。
八ッ場ダム推進を強く主張する関係都県は、ダム事業費が増額になれば、各都県議会の承認を得なければなりませんが、各都県ともこれ以上の計画変更は認められないとの立場です。これはダム利権を守る目的で進められてきた八ッ場ダム事業への批判が各都県で強いためです。
事業費の再増額は工期の再々延長と共に八ッ場ダム事業の矛盾を示すものであり、これまでの国交省による関係都県への説明に反し、八ッ場ダムの関連事業は難航していることを示すものですが、ダム推進を主張する関係都県にすれば、事業費増額の負担を国が肩代わりしてくれれば、ダム推進の主張を続けることができます。
国交省河川局、関係都県が連携して民主党政権を追い詰めている状況が読み取れますが、東北関東大震災という古今未曾有の国難の中、必要性がないどころか災害の危険性のある八ッ場ダム事業への国の支出を増やすなど、到底国民の支持を得られないことです。
◆2011年3月10日 上毛新聞一面より転載
-八ッ場ダム 再開で増額の事業費 国交相が国負担示唆―
八ッ場ダム問題に関連し、大畠章宏国交相は9日、ダムの建設を再開した場合に増額が見込まれる事業費について「一切の予断を持たずに(建設の是非に関し)検証を進めているが、国は責任ある立場で適切に対処しなければならない」と述べ、国が負担する可能性を示唆した。衆院国土交通委員会で小渕優子氏(自民)の質問に答えた。
国交省はこれまで、ダム建設の中止を解除して建設が継続された場合、工期の延長に伴う人件費などでコストが約55億円増えるとの試算を公表。本県を含むダム流域の6都県は「検証に伴う遅延は国の責任」などと増額分の支払いを拒否する考えを示している。
大畠国交相は答弁で「一つの結論に基づいた場合の推論はこの場で申し上げることはできない」とした上で、「国は責任ある立場から、結論に従って適切に対処しなければならないのではないか」と6都県の主張に一定の理解を示した。