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工期 再々延長か 関連工事の遅れ響く

◆2011年03月11日 朝日新聞群馬版より転載
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581103110001

 -工期 再々延長か 関連工事の遅れ響く-

 国が建設を続けるかどうか検証中の八ツ場ダム(長野原町)について、今秋までにダム建設にゴーサインが出たとしても、3度目の工期延長が避けられない雲行きになっている。現場を見ると、民主党政権の迷走の影響だけでなく、関連工事の遅れが響いていることがわかる。(菅野雄介)

 「1都5県としては容認できない」。7日の県議会八ツ場ダム対策特別委員会。国土交通省がダムの必要性の検証の中で、ダム本体に着工しても、2015年度完成予定の基本計画より3年遅れるとの見通しを示したことについて問われ、県は計画通りの建設を国に求める姿勢を繰り返し強調した。

 国交省は今年1月、ダム検証に関する関係6都県との意見交換の場で、仮にダム建設を再開しても、大型公共事業の入札には9カ月程度の周知期間が必要だと説明。09年9月に本体工事の入札を実施して15年度までに完成させるはずだった現行計画より3年遅れになる可能性を示した。

 民主党政権が本体工事を凍結し、検証に時間をかけているせいで遅れることは許せない――。6都県側は完成が遅れる見通しに対し、こんな主張をしている。

 これに対し、ダム見直しを掲げてきた市民団体・八ツ場あしたの会は「政権交代前から本体以外の工事が遅れ、もともと予定通り完成させるのは無理だった」とみる。

 吾妻渓谷にあるダム本体の予定地にはJR吾妻線と国道145号が通る。これらを付け替えた新ルートが完成しなければ本体工事は進められないからだ。

 凍結された本体工事以外の工事は従来通り進められてきたが、今月末には開通予定だった吾妻線の新ルート完成の見通しは立っていない。昨年末の段階で、おおむね工事を終えているのは81・8%。国交省八ツ場ダム工事事務所の佐々木淑充所長は10日夜の連合対策委員会の会合で、地元側に工事の遅れをわびた。

 同様に今月末に完成予定だった国道バイパスや県道林―岩下線といった幹線道路も、昨年末時点で完成区間はそれぞれ52・6%、33・5%。前後の区間を暫定的に利用可能にして「開通」させている。09年度までに整備を終える目標だった移転代替地も、肝心の温泉街ゾーンは未完成だ。

 予定地の一部の用地買収や工事が難航していることが遅れの理由に挙げられている。

 地元がダム建設を受け入れ、着工へ動き出したのは1985年。当時、完成予定は2000年度とされたが、まず01年に10年延長され、さらに07年に5年延長された経緯がある。

 「遅れるのは毎度のこと」「ダムは遅れてもいいが、生活再建が遅れるのは許せない」――。2度の工期延長を経験している地元住民の反応は複雑だ。

(写真)今月開通予定の湖面2号橋(写真中央)を通る県道と国道バイパス(左下)。橋の先にJR吾妻線新駅予定地があるが、形になっていない=2月20日、本社ヘリから