「無計画停電」から「戦略的エネルギーシフト」へ(環境エネルギー政策研究所)

 原子力政策見直しの声が高まっていますが、これに対する反論として必ず提起されるのが、「原発なしでは今の生活を維持できない」という意見です。
 首都圏では”計画停電”が混乱を引き起こす中、政府や原子力産業、”御用学者”らのこうした意見は以前にも増して声高に語られる傾向がありますが、環境エネルギー政策研究所よりこのほど、エネルギーシフトについてのタイムリーなレポートが公表されましたので、是非お読みください。

■3/23(水)ISEPプレスリリース(PDF)
  「3.11後のエネルギー戦略ペーパー」No.1
  「無計画停電」から「戦略的エネルギーシフト」へ
           環境エネルギー政策研究所 所長 飯田哲也、主席研究員 松原弘直
 http://www.isep.or.jp/images/press/ISEP_Strategy110323.pdf

 上記の提言では、将来の発電量で水力の割合を14%にアップすることになっています。同研究所はダムに対する問題意識を持っていて、水力については中小の流れ込み式のものを考えています。

 同研究所の2008年6月のレポートより転載
 http://www.isep.or.jp/images/press/2050vision080603.pdf

 「2050年自然エネルギービジョン」~ 持続可能な低炭素社会の実現を目指して~   環境エネルギー政策研究所

 2008 年6 月3 日

【中小水力発電】

全国小水力利用推進協議会

2008 年2 月21 日

1. 既存発電所

 既存発電所の発電量としては、国環研が用いた2000 年実績値の数値(779 億kWh、20.01GW)を採用し、これが一定に保たれるものと想定する。当然、補修や設備更新は適切に行なわれなければならない。新設発電所の影響で既存発電所の発電量が減少する場合もあるが、新設分は原則として中小・流れ込み式と考える(後述)ので、既存発電所への影響は無視できるレベルと判断した。

2. 2050年までに新設される発電所

新設発電所については、大規模なものや大型ダムをともなうものは河川環境を大きく損なうおそれがあるため、できるだけ小さめのもの、流れ込み式のものの方が望ましいと考えた。具体的には原則として中小(設備容量1 万kW
程度以下)・流れ込み式を想定して建設可能性を算出することにした。

(1) 1,000kW以上の新設発電所
1,000kW 以上の発電所について、資源エネルギー庁の包蔵水力調査に示されている(2007 年末現在)未開発・工事中の合計値は469 億kWh ある。このうち1,000kW~10,000kW の中小発電所が295 億kWh で全体の56%、流れ込み式の発電所は361 億kWh(77%)となっている。中小の場合流れ込み式が大部分と推測されるので、上記未開発・工事中の合計値(469 kWh)の約50%程度であれば、河川環境に過大な負荷をあたえずに開発できるものと考えられる。そこで、年間発電量、発電容量とも包蔵水力調査結果の50%として、年間発電量230 億kWh、設備容量4.50GW とする。結果的に設備利用率は58%となる。

(2) 1,000kW未満の新設発電所
設備容量1,000kW 未満の小水力発電については、発電水力調査の手法に問題があるため、エネ庁のデータは大幅に過小評価と考えられるので、全国小水力利用推進協議会が独自に試算した推計値にもとづいて算出を行なった。まず、一級河川の渓流部分での発電可能規模(平水量ベース)は約4GW と推計される。このうち70%(2.80GW)を開発するものとし、設備利用率70%と想定すると、年間発電量は172 億kWh となる。農・工・水道用水路については、一級河川の1 水系ごとに2,000kW が開発可能と想定し、設備利用率は同様に70%とした。一級河川は109 水系あるので、設備容量規模は合計0.22GW、年間発電量は13 億kWh となる。

3. 合計

年間発電量 [億kWh] 設備容量 [百万kW]
既存発電所 779 20.08
1,000kW 以上の新設発電所 230 4.50
1,000kW 未満の新設発電所(渓流) 172 2.80
〃 (水路) 13 0.22
合 計 1,194 27.60

~~~転載終わり~~~

 環境エネルギー政策研究所のホームページに掲載されている同研究所の自己紹介文を転載します。

 環境エネルギー政策研究所のホームページ
 http://www.isep.or.jp/

 環境エネルギー政策研究所は、持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする、政府や産業界から独立した第三者機関です。地球温暖化対策やエネルギー問題に取り組む環境活動家や専門家によって設立されました。

 ~~~ 転載終わり ~~~

 環境エネルギー政策研究所から3月22日に発信された下記レポートは、原子力産業と土木学会との癒着を暴くものです。ダム事業と学会との関係にも、同じ構図が見られます。

■3/22(火)ISEPレポート(PDF)
  「未曾有の津波」は東京電力を免責するのか
  ―土木学会指針と電力業界の関係―(2011.03.22)
           環境エネルギー政策研究所 客員研究員 博士(政治学)田中信一郎
 http://www.isep.or.jp/images/press/report_0322.pdf

 原発にしてもダムにしても、巨大事業を推進する時、これがベストで他の選択肢はありえないと受け手に思わせる広報が多方面で展開されます。けれども、将来への選択肢は本来、いくつもあり、私たちは命をつないでゆくために様々な選択肢についてのより正確な情報を把握した上で、柔軟に方向を定めていかなければなりません。

 今、注目の下記論考を読むと、多大な被害をもたらしつつある福島原発事故は、「想定外」の自然災害のみに由来するものではなく、起こるべくして起こった人災であることがよくわかります。

 鶴岡憲一氏「東電と経産省が増幅した原発災害」。元読売新聞編集委員、気骨の伝統の社会部記者であった氏の渾身の論考
  http://p.tl/9-Xh