八ッ場あしたの会では、今年のアースデイでもアウトドア自然保護基金の助成により代々木公園にブースを出展しました。
例年、何万人もの人が押し寄せるアースデイ。今年は東日本大震災に福島原発事故が続き、どうなるか危ぶまれましたが、二日間とも盛況でした。
あしたの会のブースでは例年、八ッ場ダム問題に関するクイズを用意していますが、今年は東日本大震災にからめたクイズでした。ご回答くださった80名あまりの方々、ご協力ありがとうございました!
末尾にクイズの問題と回答を掲載しました。
アースデイのブースを訪れる方の中には、八ッ場ダムについての疑問を率直に投げかける方もいます。 これまでせっかく沢山の税金を使ってきたのだから、ダムを造らないとペイしないのではないか、というご意見がありました。
「ペイするとは?」と尋ねると、
「ダムができると電力を生み出すから、これまで投入した税金を回収できるでしょう」と言われました。
このところ、原子力発電の安全性に疑問符がついたことから、水力発電が見直され、「八ッ場ダム造るしかないんじゃないか」という声を巷でよく聞きます。八ッ場ダムを造っても、水力発電による電力量は増えるどころか減るのですが、こうした事実はあまり知られていません。この問題に関する国交大臣の発言が曖昧なのですから、無理もありません。
↓
http://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_001457.html
「大臣発言(特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法に基づく特定船舶の入港禁止措置及び八ッ場ダム建設による吾妻川の水力発電量の減少について)
「想定外」の津波によって原発事故が起こったことから、「想定外」の洪水や渇水に備えて八ッ場ダムを造るべき、という推進側の声も聞こえます。もともと「治水」は洪水などの自然災害を相手にするもので、「想定外」を「想定」することが基本です。200年に一度の利根川の大洪水の際に八ッ場ダムが必要というのであれば、データを隠したり捏造したりせず、未曾有の洪水が利根川を襲った時、八ッ場ダムが役に立つという論拠を示して国民の理解を得る努力をしてもらわなければなりません。
「想定外」の自然災害は、洪水だけではありません。地震や火山災害が起きた時、八ッ場ダムは大丈夫でしょうか? 八ッ場ダム予定地から30キロ上流の浅間山はわが国有数の活火山です。過去の噴火の際、八ッ場ダム予定地を何度も大量の泥流が流れ下り、流域に甚大な災害を引き起こしたことを歴史が教えています。こうした過去の災害やダム予定地の地質を調べれば、八ッ場ダムが建設されることによって地滑りなどの災害を誘発し、浅間山噴火の際の被害をさらに大きくする可能性を「想定」できる筈ですが、なぜか八ッ場ダム計画では、そうした災害は「想定外」のようです。
~アースデイのクイズ~
Q1 東日本大地震ではダムへの被害もあったでしょうか?
1 なかった 2 ダム堤の亀裂 3ダムが決壊し、死者も出た
Q2 八ッ場ダム建設の主な目的は?(正解は複数)
1 利根川の洪水調節 2 都市用水の開発 3 発電
Q3 八ッ場ダムによって電力量は増えるでしょうか?
1 増える 2 減る 3 変わらない
Q4 民主党は八ッ場ダムの中止をマニフェストに掲げましたが、現実は?
1 政府が中止を決定し、ダム計画は廃止された。
2 これまで建設を進めてきた国土交通省が自らダム計画を検証中。
3 ダム推進の関係都県知事らの声により、建設続行が決定。
Q5 八ッ場ダムの工事は今、どうなっている?
1 ダムの本体工事を始めている。
2 ダムの本体工事には手をつけていないが、付け替え道路や水没住民の移転代替地などの関連工事は完了している。
3 ダム本体は未着工、継続中の関連工事も完了の見通しが立っていない。
Q6 八ッ場ダムは当初1960年代に完成するはずでしたが、なぜ事業が遅れているのでしょう?(正解は複数)
1 民主党政権がダム計画の見直しを掲げているため。
2 ダム予定地の水質が強酸性で、ダムを建設できなかったから。
3 地元住民の激しい反対運動があったから。
4 地質が悪く、工事が難航しているから。
★ 回答とミニ解説 ★
Q1・・・正解 3
福島県の藤沼ダムが決壊。死者不明8人
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110423k0000m040150000c.html
2011年4月23日 毎日新聞
Q2・・・ 正解 1と2
八ッ場ダムの主目的は、「利根川の洪水調節」と「都市用水の開発」
http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/about/about.htm
(参照:国交省八ッ場ダム工事事務所ホームページ 「八ッ場ダムの役割」)
Q3・・・ 正解 2
八ッ場ダムが建設されることにより、ダム予定地の吾妻川の発電量は減少します。
吾妻川流域には多くの発電所があり、吾妻川の水が取水され、「流れ込み式」で発電が行われてきました。ダム予定地下流の吾妻川には東京電力の発電所が6つあり、これらの最大出力は合計112,400kW。このままではダムを造っても水がたまりませんので、国は東電に川の水を戻してもらわなければなりません。八ッ場ダムができた場合の発電量の減少を1955~1984年の実績流量をもとに計算すると、年平均22,400万kW時となり、国が東京電力に支払う減電補償額は数百億円と見込まれます。
2008年のダム基本計画の変更で、八ッ場ダム事業に発電目的が加わりました。これはダムからの放流水を利用して発電を行うものです(従属発電)。最大発電力は11,400kW、年間発電量は平均で約4100万kW時。
このことから、八ッ場ダムができると、新設される八ッ場ダム発電所が生み出す発電量の5倍以上の発電量が失われることになります。
https://yamba-net.org/wp/modules/problem/index.php?content_id=28
(参照:八ッ場ダムと発電)
Q4・・・正解 2
政権交代後、八ッ場ダム本体工事に着工するか否かを決めるため、国土交通省関東地方整備局が八ッ場ダムの検証作業を実施することが決まりました。これまで八ッ場ダムを推進してきた国交省自らが行うお手盛りの作業で、本当に客観的、科学的な検証が行われるのかが懸念される状況です。
Q5・・・正解 3
Q6・・・正解 2,3,4 政権交代後もダムの関連工事は続いています。
1952~1964年 吾妻川の強酸性問題→中和事業
1965~1992年 川原湯温泉を核とした反対運動(1985年に実質収束)
1994年 関連工事に着手