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日本学術会議の基本高水分科会に質問書

2011年7月24日

 利根川の基本高水検証を行ってきた日本学術会議の分科会は、さる6月20日の会議で国土交通省に提出する回答骨子をとりまとめました。
 利根川の基本高水の検証は、現在、国交省関東地方整備局が進めている八ッ場ダムの検証に関わりが深く、ダム事業を推進してきた国交省自らの検証に一石を投じることが期待されましたが、回答骨子は国交省の計算方法には誤りがないとするものでした。

日本学術会議の回答骨子は、以下をクリックすると全文コピーをご覧に慣れます。
 http://bit.ly/oNQMbE

 ダム建設を推進する道具として使われてきた「基本高水」に切り込めなかった日本学術会議の今回の検証結果については、利根川流域市民から失望の声が上がっています。
 八ッ場ダムをストップさせる各都県の会の市民の皆さんからは、このほど日本学術会議の基本高水分科会宛てに二つの質問書が送られました。有識者とされる学術会議分科会のメンバーから、学者の良心に基づいた回答がなされることを期待します。

 以下に、二つの質問書を転載します。

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 2011年7月21日

日本学術会議 土木工学・建築学委員会
河川流出モデル・基本高水評価検討等分科会
 委員長 小池俊雄 様
 委員 各位

 神原禮二(茨城県)
 大高文子(埼玉県)
 深澤洋子(東京都)
 村越啓雄(千葉県)

 利根川の基本高水評価検討「回答骨子」に対する質問

 質問に先立って
 私たちは「八ッ場ダム住民訴訟」を進める原告と裁判を支援する利根川流域の市民です。
 昨年秋、馬淵国土交通大臣(当時)は、「利根川の基本高水疑惑」を解明すべく、基本高水計算の根本からの見直しを指示し、貴・日本学術会議(以下貴会議)にその検証を求めました。以来、私たちは固唾をのんでその推移を見守ってきました。
 6月、貴会議は回答骨子を発表しました。私たちは、正直何が書かれているのか理解できませんでした。冒頭に、素人では理解の及ばぬ学術用語が羅列していることにもよりますが、何より世間で普通に行われている意思疎通の手続きがまったく省かれているからです。
 そもそも、馬淵大臣が見直しを求めたのは、利根川の基本高水22,000m3/秒の虚偽、私たちの言葉でいえば「嘘」が動かしがたいものとなり、このままでは国民の理解はとうてい得られないと判断したからに他なりません。意思疎通の手続きとは、先ずこうした「嘘」を明らかにすることです。それなくして結論だけを提示されても「新たな疑惑の積み重ね」と、受けとめざるを得ないからです。
 私たちが裁判を通じて基本高水22,000m3/秒を「嘘」だと感じてきた背景や経緯は数多くあります。回答骨子がその背景から考えても納得のいく説明となっていないと考える点を列記します。

1、 昭和22年カスリーン台風による洪水流量は、八斗島地点で推定17,000m3/秒とされ、それをもとに、昭和24年「利根川改修改訂計画」の基本高水は17,000m3/秒とされた。その際は、大洪水から2年後で被災者も存在し記憶も生々しかったこの時点であるにも関わらず、八斗島上流の氾濫については記述されていなかった。

2、 昭和55年「利根川水系工事実施基本計画」では、基本高水を22,000m3/秒に嵩上げした。その理由は、当時は上流で氾濫した5,000m3/秒が、カスリーン台風以降の堤防整備により、すべて河道を流れるとの趣旨に理解された。

3  原告・住民が情報公開請求によって入手した浸水想定区域図を作成する過程で作成された「八斗島地点でのハイドログラフ」によれば、カスリーン台風が再来しても、上流部での氾濫があるとはしているが、八斗島地点では、16,750m3/秒の洪水規模に止まるとしている。そして、この規模の洪水であれば、同地点下流部では堤防の断面は既に確保されている(利根川水系河川整備基本方針の付属資料による)。

3、 平成17年度の社会資本整備審議会「河川整備基本方針検討小委員会」は、基本高水22,000m3/秒を追認。関東地整はデータを示さず、同小委員会は確認もせず承認。後、国交省は「データは確認できない」と発表。

4、 平成20年さいたま地裁からの調査嘱託に対する関東地方整備局の「回答」(平成20年1月10日付)では、22,000m3/秒は将来河道が整備された状況でのものであるとするもので、これまでの説明とは大きく異なるものであった。

5、 平成22年「今後の治水のあり方に関する有識者会議」において、鈴木雅一東京大学大学院教授は22,000m3/秒の流出計算で使用している「一次流出率0.5」「飽和雨量48mm」は禿山の数値と指摘。その後、関良基拓殖大学准教授も同様の指摘をした。

6、 平成22年秋、衆院予算委員会において河野太郎議員(自民)の上記関連質問に、これまでカスリーン台風を含む主だった洪水は上記の定数で実績流量に近似した値が再現できるとしてきた説明を修正。1958年は31.77mm。59年65mm。82年115mm。98年125mm。と森林の保水力の向上に応じて飽和雨量を使い分けていたことを認めた。

 以上、述べましたように、この国の河川行政のトップに位置する国土交通省が、児戯にも等しい嘘で国民を欺き、河川行政を捻じ曲げてきたことは紛れもない事実です。不用意な失言や暴言で大臣の首が簡単に飛ぶ今日、これ程の所業が不問に付されることは看過できません。貴会議におかれましては、本「回答骨子」に先立ち、何故これまでの基本高水は嘘を嘘で塗り重ねてきたのか。その実態を科学者の手で明らかにし、全容とデータを公開し、広く国民の理解を得るべきと存じます。それなくして、新たな基本高水の提示はあり得ぬものと思うからです。
 甚だ不遜な申し入れにて恐縮ですが、これまで暗闇で行われてきた政策決定の場を白日のもとに開示し、民主的な河川行政を実現させるためにも、宜しくご対応くださいますようお願い申し上げます。
 なお、近々開催を予定されている説明会では、これらの質問についての回答もぜひお聞かせ頂きたいと思います。当日時間が充分にない場合には、改めて率直なご回答を賜りたく併せお願い申し上げます。

 第1 国交省の利根川治水に対しての私たちの思いを先に述べましたが、「回答骨子」を理解するために、国交省のこれまでの説明に対して、いくつかのお尋ねをしたいので教えてください

1 関東地方整備局は、利根川ダム統合管理事務所のホームページで、「カスリーン台風と同じ降雨があった場合、洪水(想定される洪水)が発生した場合、利根川・八斗島地点では、22000?/Sが流れると予想されます」としています。ダムなしの条件であることは理解できますが、そうした条件の下でも、この説明は正しいですか、間違っていますか。また、貴会議では、こうした説明に対して、どうお考えですか。教えて下さい。

2 群馬県から裁判所へ提出された関東地方整備局長の平成18年9月28日付け群馬県への「回答」(裁判での証拠番号「甲20号証」)には、基本高水のピーク流量を、22000?/秒と変更した昭和55年の利根川水系工事実施基本計画の改訂の理由について、次のように説明されています。これは正しい説明ですか、間違った説明ですか。間違っているとしたらどう間違えているか、教えて下さい。

 「昭和22年のカスリーン台風以降、利根川上流域の各支川は災害復旧工事や改修工事により河川の洪水流下能力が徐々に増大し、従来上流で氾濫していた洪水が河道に多く流入しやすくなり、下流での氾濫の危険性が高まったこと、また、都市化による流域の開発が上流の中小都市にまで及び、洪水流出量を増大させることになったことなど、改修改訂計画から30年が経過して利根川を取り巻く情勢は一変したため、これに対応した治水対策とするべく、昭和55年に利根川水系工事実施基本計画を改定し、基本高水のピーク流量を変更した。」(同「回答」の4頁)

3  前問における関東地方整備局の「回答」の説明の趣旨は、17,000?/秒計画から22,000?/秒へピーク流量を増やす理由について、

① カスリーン台風時、上流で大きな氾濫があった

② 同台風以降、上流部で河道改修が行われ堤防も整備された(このため、氾濫はなくなった)

③ そのため、首都圏の中・下流部の流量が大きく増えた
という解説であると理解されます。
  しかし、住民たちの調査によって、カスリーン台風以降、利根川上流域での堤防の新規築堤や大規模の堤防嵩上げなどは、ほとんどないことが分かりました。
  そうすると、5,000?/秒も基本高水を増やす理由は見当たらなくなり、増やす必要はないと考えられますが、どうなのでしょうか。国交省は、どうして事実でない説明を行ったのでしょうか。どのようにお考えですか。

4 関東地方整備局は、さいたま地裁の調査嘱託という手続に対して、平成20年1月10日、同局河川計画課長の名を以て「回答」(裁判での証拠番号「甲B第57号証」)を作成し、提出しました。それによると、「八斗島地点22,000?/秒」という洪水は、利根川本川の上流や支川の7つの法線において、1~5mの堤防高の嵩上げや新堤の築造を行うことが条件とされていることが明らかになりました。そうとすれば、「1」で記述しました利根川ダム統合管理事務所のホームページでの広報(カスリーン台風が再来すると毎秒22,000?の洪水)は虚偽であることを示していると考えますが、そうした理解でよろしいでしょうか。教えて下さい。

5 前に同じく、さいたま地裁の調査嘱託に対する関東地方整備局の「回答」(甲B第57号証)では、昭和55年の工事実施基本計画の改訂に際しての貯留関数法に基づく流出計算においては、設定されているパラメーターは、全流域において、「一次流出率を0.5」、「飽和雨量を48mm」とされているとの「回答」でした。つまり、昭和55年策定の工事実施基本計画における「八斗島地点22,000?/秒」は、上記のパラメータを用いて計算していると回答されているのですが、この回答には問題はなかったでしょうか。この説明は正しい事実をもとに回答されているでしょうか、間違った事実を回答しているでしょうか。教えて下さい。

6 前の質問で、もし誤った回答となっているとすれば、関東地方整備局は、どうして誤った回答をしたのか、理由はおわかりでしょうか。分かりましたら、教えて下さい。

第2 難しい記述の連なる「回答骨子」でしたが、一生懸命に読みました。しかし、読んでも分からない、またわかりにくいところがありましたので、教えてください

7 「回答骨子」に「昭和22年洪水時に八斗島地点に実際に流れた最大流量は上流での氾濫等の影響により17,000?/Sと推定されており、分科会では上流での河道貯留(もしくは河道近傍での氾濫)の効果と考えることによって、洪水波形の時間的遅れおよびピーク流量の低下の計算事例を示した。既往最大洪水流量や200年確率洪水流量の推定値と実際流れたとされる流量の推定値に大きな差があることを改めて確認した」(7頁)とあります。
  このうち、「既往最大洪水流量や200年確率洪水流量の推定値と実際流れたとされる流量の推定値に大きな差があることを改めて確認した」とある部分は、分科会の流出計算における推計値(22,100~22,200?/S)と、カスリーン台風洪水の八斗島地点における実績の最大流量(17,000?/S)とが、大きく乖離しているという事実を改めて確認した、ということなのでしょうか。

8 前問で、お答えが「肯定」の場合、その乖離は、どういう理由で起きたのでしょうか。その前の説明を織り込んで考えると、「上流での河道貯留(もしくは河道近傍での氾濫)の効果」であるとの見解なのでしょうか。もし、そうとした場合に、もう少し分かりやすい説明をしていただけないでしょうか。

9 「既往最大洪水流量や200年確率洪水流量の推定値と実際流れたとされる流量の推定値に大きな差があること」について、貴会議では、これ以上の解明の作業はなさらないのでしょうか。もう、これ以上の解明は困難なのでしょうか。困難とすれば、その理由はどういうことでしょうか。

10 貴会議における検証作業が、実質6月20日で終了したという場合、カスリーン台風の洪水像や最大流量、流出のメカニズムについては、解明がすべてできたことになるのでしょうか。

11 また、現在の解明結果からすると、カスリーン台風が再来した場合、利根川の現況施設においては、八斗島地点での洪水規模はどれくらいと想定されているのでしょうか。教えて下さい。

12 この度の「八斗島地点21,100?/秒」というピーク流量の流出計算において、「K、p」などの通常の定数以外に、「回答骨子」で特記されたような、「上流での河道貯留(もしくは河道近傍での氾濫)の効果」を織り込んだ、最大流量の計算は行われているのでしょうか。行われているとしたら、計算過程や結果を公表してください。

13 「分科会では上流での河道貯留(もしくは河道近傍での氾濫)の効果と考えることによって、洪水波形の時間的遅れおよびピーク流量の低下の計算事例を示した。」とあります。この「計算事例」というのは、第9回分科会・配布資料5「氾濫に伴う河道域の拡大がハイドログラフに及ぼす影響の検討」の論考を指すのでしょうか。また、それ以外に、同種の検討がなされている場合には、教えて下さい。

14 「昭和22年洪水時に八斗島地点に実際に流れた最大流量は上流での氾濫等の影響により17,000?/Sと推定されており、」というのは、国土交通省の見解だと思われますが、この点については、今回、改めての検証は行われたのでしょうか。

15 前問に関連しますが、昭和25年に安芸皎一教授、昭和41年に富永正義元内務相技官などの河川工学の専門家による流出解析の成果が発表されていますが、こうした業績について、この度、評価されたでしょうか。

16 カスリーン台風洪水では、八斗島地点の実績ピーク流量は17,000?/秒とされており、関東地整が作成した利根川浸水想定区域図のハイドログラフでは、現況の河川管理施設では、ピーク流量は16,750?/秒とされております。そして、基本高水「八斗島地点22,000?/秒計画」の前提条件となっている、八斗島上流域での堤防高の嵩上げ(1~5m)改修工事が治水計画としては予定されていないとすれば、カスリーン台風が再来しても、分科会のこの度の計算上の推計値の「八斗島地点21,100?/秒」の洪水は再現しないことになると思われますが、そう理解してよいでしょうか。

17 前問で「肯定」の場合、利根川の基本高水を、「八斗島地点21,100?/秒」以上に設定することには疑問は生じないでしょうか。教えて下さい。

18 「回答骨子」では、「既往最大洪水流量や200年確率洪水流量の推定値は、上流より八斗島地点まで各区間で計算される流量をそれぞれ河道ですべて流しうると仮定した場合の値である。」としています(7頁)。この記述に関して、18、19,20のお尋ねをさせていただきます。
  この「仮定した場合」の想定条件は、どのようなものですか。私たちは、この「仮定した場合」の想定条件の主なものは、さいたま地裁の調査嘱託に対する関東地方整備局の平成20年1月10日付「回答」(甲B第57号証)に記述されている八斗島上流部の7法線での堤防嵩上げや新規の築堤を指すものと考えましたが、それでよろしいでしょうか。

19 前の質問で、お答えが「肯定」の場合、上記関東地方整備局の「回答」(甲B第57号証)では、烏川の城南大橋右岸下流一帯で5mの堤防嵩上げが想定され、そして、井野川の左右両岸で2.7~3.0mの嵩上げが想定されていますが、このような堤防改修は現実にはあり得ないものと思われます。例えば、烏川の高崎市役所付近の右岸一帯では、聖石橋から城南大橋までの堤防高は現在3.4m近傍ですから、これを6m高に改修するとすれば、現在の近傍の堤防高の約2倍にするというものになりますが、「回答骨子」は、こうした起こり得ない事実を前提としての流出計算であると理解してよろしいでしょうか。こうした理解が誤っているとしたならば、ご教示下さい。

20 さいたま地裁への関東地方整備局の「回答」(甲B第57号証)で示されている想定上の改修を前提にすれば、河道貯留量も増加すると思われますが、貴会議の推定値「21,100?/S」の計算には、そうした河道貯留量も含まれていることになるのでしょうか。教えて下さい。

21 最後のお尋ねとなります。「回答骨子」では、「既往最大洪水流量や200年確率洪水流量の推定値と実際に流れたとされる流量の推定値に大きな差があることが改めて確認したことを受けて、これらの推定値を現実の河川計画、管理の上で、どのように用いるか慎重な検討を要請する。」(7頁)とされております。
日本を代表する諸学者の検討結果で、カスリーン台風洪水のピーク流量の推定値が、「21,100?/秒」となったのであれば、この結果、「カスリーン台風が再来した場合には、ダムなしという条件では、八斗島地点に再び21,100?/秒の洪水が襲う」という予測となるはずであり、そうとすれば、この推定値に基づく施策を急ぐべきとの具申となるはずと考えられます。それが、「これらの推定値を現実の河川計画、管理の上で、どのように用いるか慎重な検討を要請する。」とされているのは、どういうことと理解すればよいのでしょうか。この表現は、貴会議の結論である「21,100?/秒」という基本高水流量の採用に消極的であると理解してよいのでしょうか。教えて下さい。     以上

平成23年7月21日

日本学術会議 土木工学・建築学委員会
河川流出モデル・基本高水評価検討等分科会
 委員長 小池俊雄 様
 委員 各位

質問者(利根川流域住民有志):
 河登一郎(埼玉県)
 川合利恵子(東京都)
 田中清子(東京都)
 中村春子(千葉県)
 濱田篤信(茨城県)

 利根川の基本高水評価検討「回答骨子」に対する質問
 
 首記に関する「回答骨子」を拝読させて頂きました。専門的な内容を素人が完全に理解することは困難ですが、複数の専門家のご教示を得てある程度理解できました。強く感じた印象を以下率直に申し上げ、疑問点について伺います。
 近々開催を予定されている説明会では、これらの質問についてのご意見もぜひお聞かせ頂きたいと思います。当日時間が充分にない場合には、改めて率直なご回答を賜りたく併せお願い申し上げます。

1.「回答骨子」を読んで、(1)非常に分かり難い部分と、(2)分かり易い部分がありました。

(1)分かり難い部分:難解な学術用語といろいろな手法、モデル、パラメーターを使って多くの試算結果を示された反面、計算上の推定流量と、実際の推定流量との間にある大きな乖離については、明快で根拠ある説明は放棄され充分な根拠抜きに断定されているように見える点です。

(2)分かり易い部分:いくつかの留保はありますが、結論として「基本高水22,000?は妥当な範囲」と判断されていることです。

2.上記をふまえて素朴且つ率直な質問をさせて頂きます。

(1)日本学術会議の性格について:

① 私たちは長い間、日本学術会議が政府から独立し、科学的な評価に基づいて政策に対する助言や提言を行う第三者機関だと考えていました(日本学術会議法3条ほか)。

② 一方、日本学術会議の実態をみますと、組織的には総理大臣が所轄し、経費は国庫負担、研究の助成/交付金/補助金の予算や配分にも関与し、人事交流(天下りを含む)など名実ともに政府機関そのものであることを学びました(同法1条、4条ほか)。その実態を直視すれば、よほどのことがない限り、政府の政策について全面的に協力する「仕組み」になっていることが良く分ります。

③ 質問:私たちは、「基本高水」のように国交省にとっての重要政策について、日本学術会議が(科学的な評価に従って)大幅な是正(引下げ)を求めることは最初から困難だった;科学者集団として苦渋の決断だったと理解しています。このことについてどうお考えですか。

(2)「回答骨子」の第5節:
 今後の展望で、「既往最大洪水量や200年超過確率洪水量の推定値と、実際に流れたとされる流量の推定値に大きな差があることを改めて確認したことを受けて、これらの推定値を現実の河川計画、管理の上でどのように用いるか、慎重な検討を要請する」と指摘されたことは、貴会議に期待される「批判的な助言・提言」の趣旨を踏まえた正しい指摘だと考えます。

質問:
①日本学術会議として、この指摘が現実の政策実行面で活かされる(具体的には基本高水を実態に合わせて大幅に引き下げる)可能性は高いとお考えですか。「基本高水の22,000?は妥当な範囲」というご判断との関連をふまえてご説明下さい。

②(上記①に対する回答が、「学術会議の役目は問題点の指摘まで、行政執行は国交省の責任」の場合)それでは政府から独立した機関として基本高水を科学的に検証してほしいという要請に実質的に答えたことにはならないと考えますが、どうお考えですか。

(3)基本高水の「22,000?が妥当と判断」されると、仮に八ッ場ダムが完成したとしても、今後利根川上流域に更に10基もの(規模によって5~15基)ダムを建設しないと利根川水系の治水政策が完結しないという狂気の政策に事実上の「お墨付き」を与える結果になります。
質問:それは日本学術会議として望んでいることではないと考えますが如何ですか。   以上