吾妻川の中和事業、プラント方式へ転換

2011年7月28日

 八ッ場ダム予定地のある利根川支流の吾妻川は、上流にある硫黄の山、草津白根山の影響を受け、かつては「死の川」とも呼ばれた特異な河川です。
 草津白根山に水源を持つ吾妻川支流の湯川、万座川などは、草津白根山の硫黄成分が溶け込むために強酸性河川となり、それらが流れ込む吾妻川もその影響を大きく受けてきました。八ッ場ダム構想の発端となった昭和20年代、ダム予定地である吾妻渓谷の水質調査を行った結果、コンクリートと鉄を使うダム建設は無理と、一旦はダム計画が断念されましたが、中和事業の成功によって1965年、八ッ場ダム計画は蘇りました。
 それ以降、中和事業は今日まで46年間も継続され、その結果、中和生成物を貯留し中和を促進することを目的とした品木ダムは堆砂が進んでほぼ満杯状態となってしまいました(貯水容量の8割超が堆砂)。品木ダムの堆積物を浚渫し、周辺に確保した土捨て場に処分してきましたが、土捨て場の方も10年後には満杯になるとされています。
 行き詰まりつつある中和事業の方式転換に関する記事が先ごろ地元紙に載りましたので、転載します。

2011年7月23日 上毛新聞より転載

ープラントで中和 吾妻川 ダム方式から転換ー

 国土交通省関東地方整備局は22日、強酸性の吾妻川で行っている中和事業をさらに拡充するため、1992年から進めてきた「吾妻川上流総合開発事業」を中止する方針を明らかにした。民間有識者でつくる事業評価監視委員会で21日に了承された。
 
 吾妻川は上流部でアルカリ性の石灰を投入し、中之条町の品木ダムで中和を促進している。同事業は品木ダムのかさ上げや別の中和用ダムの新設などによって水質改善効果をさらに高めようと始まった。
 だが、地質調査によってかさ上げもダム新設も難しいことが判明。ダム以外の方法として川の水をプラント工場に引き込み、中和する方法を研究した結果、「有効性や実現性が確認できた」(整備局)ことから、ダム方式を軸とする事業の中止を決めた。
 吾妻川上流総合開発事業は八ッ場ダムと同様、必要性を再検証する対象になっているが、中止方針の決定に伴い省略される。整備局は「今後はプラント方式の事業化に向けて調査を進める」としている。

—転載終わり—

 国交省関東地方整備局のホームページには、「吾妻川上流総合開発事業」の資料が掲載されています。
 https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000042087.pdf
 「吾妻川上流総合開発事業」(国土交通省関東地方整備局 事業評価監視委員会資料、平成23年7月21日)

 「吾妻川上流総合開発事業」は、長野原町が八ッ場ダム計画を受け入れ、国、群馬県と協定を結んだ1992年度に実施計画調査が着手されました。それ以前に、草津中和工場、香草中和工場、品木ダムなどが建設されてきましたが、国交省は中和事業はまだ4割しか達成していないとして、「吾妻川上流総合開発事業」によって更にダム方式を拡大していくため、石灰液注入箇所を増やし、品木ダムを嵩上げするとともに、吾妻川支流の万座川に新たなダムを造って、中和生成物の沈澱池にする計画を立てました。

 けれども、地質面で品木ダムの嵩上げや万座川でのダム建設が困難であることが判明したことを理由に、現在の中和・品木ダム方式をプラント方式に変えることを検討することとなり、草津のスキー場跡地などでプラント方式の実験が行われてきました。
 上記の国交省資料によれば、1997年度の時点でプラント方式による「中和処理技術を確立」しており、2008年の事業評価監視委員会では「プラント建設を目指す方針で了承」とあります。

 こうした経過を見ると、「吾妻川上流総合開発事業」は当初はダム事業としてスタートしたものの、すでに民主党政権が発足する前にダム方式は実質的に放棄されていたことがわかります。
 政権交代後、「吾妻川上流総合開発事業」は形式上はダム事業として位置付けられたままであったため、ダム検証の対象になりました。転載した上毛新聞の記事は、国交省がこれまでの方針通り、「吾妻川上流総合開発事業」をダム事業としては中止し、プラント方式を採用することをより明確にしたことを示しています。

 プラント方式の中和とは、工場の中で中和して生成物を取り出し、それをセメントの原料として使うことにより、品木ダムの延命を図るものです。

 国土交通省の資料では触れられていませんが、草津白根山から流れてくる吾妻川の支流には、ヒ素も含まれており、中和事業によってヒ素が中和生成物とともに沈殿するなどの新たな問題が発生しています。中和生成物をセメントとして再利用する際にも、中和生成物に含まれるヒ素の扱いが難題とされてきました。

 群馬県のホームページには、吾妻川の水質(ヒ素)についての行政側の見解が掲載されており、
 http://www.pref.gunma.jp/06/h4010221.html

 品木ダムの土砂を浚渫して埋めるA,B処分場はすでに埋め立てを終了し(=満杯)、C処分場は「今後10年は埋め立て可能」としています。

 本サイトでは、吾妻川の中和事業についてのより詳しい説明をこちらに掲載しています。
 https://yamba-net.org/wp/modules/problem/index.php?content_id=26

 ヒ素問題については、政権交代前にはなかなか取り上げられませんでしたが、鳩山政権下の衆議院国土交通委員会、マスコミでようやく取り上げられるようになり、↓
 https://yamba-net.org/wp/modules/problem/index.php?content_id=26

 保坂のぶと氏(世田谷区長、元衆院議員、ジャーナリスト)によるDVDなどの発信も注目されてきました。

 http://www.hosaka.gr.jp/books/dvd.html
 DVD「八ッ場ダムはなぜ止まらないのか:保坂のぶと現場レポート」

 保坂氏のブログには、2010年2月11日に前橋市で開かれたヒ素問題についての集会の報告も掲載されています。この集会は、八ッ場あしたの会、八ッ場ダムをストップさせる群馬の会などからなる八ッ場ダムを考える群馬県連絡会の主催により実施されました。↓
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/e22d19ad3964a0caf4140c9e0fe98c65
 八ッ場ダムの深い闇、「品木ダムヒ素問題を語る」