ダム事業を推進してきた国交通関東地方整備局が主体となって実施している「八ッ場ダムの検証」では、「地質」の問題がまだほとんど俎上にのっていません。関係都県は、「地質」について自ら検証することなく、国交省の「安全神話」を追認するのみですが、八ッ場ダム予定地の「地質」の問題は、今後さらに重要性を増してくるとみられます。
このほど、奈良県の大滝ダム訴訟において、国交省近畿地方整備局がようやく誤りを認め、住民勝訴の判決が確定しました。
地質を無視したダム計画は、取り返しのつかない犠牲を住民に強います。八ッ場ダム建設後、地すべりなどの惨事が起これば、地元住民にとっても流域住民にとっても取り返しのつかないことになりかねません。
国交省は「ダム建設で地元住民に長年苦労をかけたことを重く受け止めたい」とコメントしているようですが、本当にこの判決を重く受け止めるのであれば、多くの専門家が指摘している八ッ場ダムの危険性について、国民の疑問に真摯に応える科学的な検証を行うべきです。
◆2011年7月29日 毎日新聞奈良版
http://mainichi.jp/area/nara/news/20110729ddlk29040516000c.html
-大滝ダム損賠訴訟:判決確定 「お金より誠意を」 移転住民「解決まだ」 /奈良-
川上村の大滝ダムの試験貯水による地滑りで集団移転した同村白屋地区の元住民ら12人が国に損害賠償を求めた訴訟で、国に慰謝料など計1200万円の支払いを命じた2審・大阪高裁判決(13日)について、元住民側と国側は上告せず、28日に判決が確定した。
裁判では地滑りは予見可能だったと元住民側の主張が認められたが、元住民は「国から謝罪がない。お金より誠意を見せてほしい」と訴えている。
原告の井阪勘四郎さん(82)=橿原市=は半世紀にわたり大滝ダムの問題と向き合ってきた。
井阪さんは「昔から危険だと言い続けてきたことが正しかったことが裁判で証明された」と評価。一方で「地滑りの予見は可能だったと、白屋地区の住民の名誉をかけて裁判をしてきた。
国からまだ謝罪がないので、解決ではない」と不満も見せ、「国は今回の判決を参考に、ダムを造る時にはより注意してほしい」と話した。
元住民側の上原康夫弁護士は「国の落ち度が認められた意義は大きい。国は今後も、ダムなどの大型の公共事業を始める前に、周辺への影響をよく検討すべきだ」と話した。【高瀬浩平】
◆2011年7月28日 朝日新聞関西版
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201107280129.html
-大滝ダム国家賠償訴訟 国敗訴の2審判決が確定-
奈良県川上村の大滝ダムの試験貯水で起きた地滑りで移転を余儀なくされたとして、元住民12人が国に慰謝料など約9千万円の国家賠償を求めた訴訟で、国に1人当たり100万円の賠償を命じた大阪高裁判決が28日、確定した。
国土交通省近畿地方整備局の上総(かずさ)周平局長は「関係機関と協議し、上告しなかった。住民にご苦労をおかけしたことを重く受け止め、今後も事業を執行したい」との談話を出した。(平賀拓哉)
◆2011年7月28日 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110728/trl11072814090003-n1.htm
-大滝ダム地滑り訴訟、判決確定 住民ら逆転勝訴-
奈良県川上村の大滝ダムの試験貯水で地滑りが発生し、集団移転を強いられた同村白屋(しらや)地区の元住民12人が国に損害賠償を求めた訴訟は28日、国に1200万円の賠償を命じた大阪高裁判決が確定した。国と元住民側双方が期限の27日までに上告しなかった。
13日の高裁判決は「国は地滑りの危険性を予見でき、元住民は精神的苦痛を受けた」として、請求を退けた1審奈良地裁判決を変更、国に賠償を命じた。
国土交通省近畿地方整備局の上総(かずさ)周平局長は「ダム建設で地元住民に長年苦労をかけたことを重く受け止めたい」とコメントした。