八ッ場ダム事業を進めてきた国交省関東地方整備局は、八ッ場ダム計画の根拠資料の一部を非公開(黒塗り開示)としてきました。
八ッ場ダム住民訴訟弁護団団長の高橋利明弁護士は、2010年9月10日、八ッ場ダムの必要性を検証するためには情報公開が必須だとして東京地裁に提訴。このほど東京地裁より原告側全面勝訴の判決が出ました。
*この情報公開訴訟についての解説、資料等はこちらに掲載しています。
https://yamba-net.org/wp/modules/karyu/index.php?content_id=1
◆2011年8月2日 朝日新聞
http://www.asahi.com/national/jiji/JJT201108020108.html
-八ツ場ダム資料、国に公開命令=利根川上流の流域図―東京地裁-
事業の必要性を検証中の八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)をめぐる情報公開請求に対し、国が建設予定地付近の図面を不開示としたのは違法として、弁護士が公開を求めた訴訟の判決で、東京地裁の定塚誠裁判長は2日、国に開示を命じた。
問題の資料は、八ツ場ダム建設が予定されていた利根川上流の「流域分割図」など2図面。自治体による建設負担金の支出差し止め訴訟の弁護団が昨年7月、国土交通省が算出した最大降雨時の流水量を検証するため公開請求したところ、黒塗りにして開示された。
国側は「(八ツ場ダム以外の)構想段階のダムの位置が公にされると、補償金を目的とした予定地買収が助長される」と主張したが、定塚裁判長は「施設周辺の土地を購入できるほど正確な図面とは認められない」として退けた。
原告の高橋利明弁護士は記者会見し「図面が開示されれば国交省の計算過程をチェックできる。算定した数字がおかしいということを実証したい」と話した。
国土交通省関東地方整備局の話 主張が認められず残念。今後の対応は判決内容を検討し、関係機関と協議して決定する。 [時事通信社]
◆2011年8月2日 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110803k0000m040082000c.html
-八ッ場ダム訴訟:流量予測データ不開示は違法 東京地裁-
八ッ場ダム(群馬県)建設を巡る6件の住民訴訟で住民側弁護団長を務める高橋利明弁護士が、利根川水系で過去最大と同規模の洪水があった場合の流量を予測できるデータ図2枚の開示を求めた訴訟の判決で、東京地裁の定塚誠裁判長は2日、国の不開示決定を違法として開示を命じた。
住民側は、流域の都県にダム建設事業費の支出差し止めを求めて提訴したが、いずれも1審は敗訴し東京高裁で係争中。最大流量は建設の根拠とされており、「判決が確定してデータ図が開示されれば流量を検証できる。不正確な部分があれば住民訴訟に反映させたい」としている。
国側は、洪水調節施設の建設予定地が特定され、周辺で不適正な土地取引が促されるとして「地域住民らに混乱を生じさせる恐れがある」と不開示の理由を主張。しかし定塚裁判長は「予定地の位置を正確に特定できるだけの詳細な図とは到底認め難い」と退けた。
判決によると、2枚の図面は、群馬県伊勢崎市に定めた基準地点の上流域を分割し、下流への流出量が計算できる数値を記している。
高橋弁護士によると、国土交通省は1949年策定の利根川の改修計画で、カスリーン台風(47年)規模の降雨量があった場合の基準地点の流量を毎秒1万7000立方メートルとしたが、80年に毎秒2万2000立方メートルに変更。5000立方メートル引き上げた算定根拠を検証しようと、昨年7月に関連資料を開示請求したが、関東地方整備局は2枚を不開示とした。
◆2011年8月2日 NHK首都圏ニュース
http://www.nhk.or.jp/lnews/shutoken/1004637331.html
-八ッ場ダム 図面の公開命じるー
群馬県の八ツ場ダムをめぐって、建設に反対するグループの弁護士が、国が建設の根拠としている図面を公開しないのは不当だと訴えた裁判で、図面の公開を命じる判決が言い渡されました。
この裁判は、八ツ場ダムの建設が計画されている利根川の上流域に、大雨が降った場合の水の量を計算するための図面を国が公開しなかったことをめぐって、争われていたものです。
国は、「公開すれば構想段階のダムの位置が特定され、土地の取り引きに混乱が生じるおそれがある」などと主張していました。
判決で東京地方裁判所の定塚誠裁判長は、「図面を見ても建設予定地などを正確に特定することはできず、土地の取り引きに混乱が生まれるおそれがあるとはいえない」として、公開するよう命じました。八ツ場ダムをめぐっては、流域の住民がダムに巨額の費用を支出するのは不当だとして支出の中止を求める裁判を、東京など6か所で起こしていますが、いずれも1審では訴えが退けられています。
判決の後、ダムの建設に反対するグループが会見し、原告となった高橋利明弁護士は「本当に完勝といえる判決だ。国がダム建設を決めた計算をようやくチェックできるので、国の計算のおかしさを検証したい」と話していました。
判決について、国土交通省関東地方整備局は、「主張が認められず誠に残念だ。判決内容を十分に検討したうえで今後の対応を決めたい」と話しています。
◆2011年8月2日 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110802/trl11080221370004-n1.htm
-八ツ場ダムの資料図開示を命令 東京地裁-
八ツ場ダム(群馬県長野原町)の建設根拠となった利根川の洪水時の最大流量(基本高水)計算の基礎資料を開示しないのは違法として、ダムの建設負担金支出差し止め住民訴訟の住民側弁護士が国に開示を求めた訴訟の判決が2日、東京地裁であった。定塚誠裁判長は「情報公開法の不開示情報に該当しない」として、開示を命じた。
原告側が開示を求めていたのは、利根川水系の「流域分割図」と「流出モデル図」の2図面。国側は、公開によって構想段階のダム建設予定地が明らかになると「補償金目的の土地買収などが助長され、混乱が生じるおそれがある」として、原告側の公開請求に黒塗りで開示していた。
定塚裁判長は、「行政機関等の意思決定前の情報だからといって、すべて不開示にすれば、情報公開法の理念と相反することになりかねない」と指摘。「施設周辺の土地を購入することができるほど正確な図面とは認められない」と、国側の主張を退けた。
原告の高橋利明弁護士は判決後に記者会見し、「図面が開示されれば最大流量を検証することができ、住民訴訟にも反映させていきたい」と述べた。
国土交通省関東地方整備局は「主張が認められず、誠に残念。今後の対応については判決内容を十分に検討し、関係機関とも協議して決定したい」としている。
◆2011年8月2日 日本経済新聞
http://snipurl.com/tqw59
-八ツ場ダム資料、国に開示命令 東京地裁判決ー
国土交通省関東地方整備局が利根川水系の洪水調節に関する文書を開示しなかったのは不当だとして、八ツ場ダム(群馬県長野原町)の住民訴訟弁護団の弁護士が不開示処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決で、東京地裁は2日、「不開示情報に該当しない」として請求を認めた。
問題となったのは、洪水時の流量計算の基礎となる「流域分割図」などの図面。原告側は八ツ場ダムの必要性を検証するのに必要だとして開示を求めたが、国側は昨年8月に不開示とした。
国側は「構想段階のダムの位置が特定され、土地の買い占めなど混乱が起きる」として、情報公開法が定める不開示情報に当たると主張したが、定塚誠裁判長は「土地を購入できるほど正確に位置を特定できる図面ではない」と判断した。
原告側は「図面が開示されれば、東京高裁に係属中の八ツ場ダム差し止め訴訟に活用したい」と話している。
関東地方整備局の話 主張が認められなかったのは残念。関係機関とも協議して今後の対応を決定したい。
◆2011年8月3日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581108030001
-情報開示訴訟勝訴 原告「120%の判決」ー
八ツ場ダム(長野原町)で国が建設根拠としている基本高水の算出資料について、東京地裁は2日、国に開示を命じる判決を言い渡した。ダムの見直し派でつくる原告側は東京都内で記者会見し、「120%の判決」と評価した。
原告の高橋利明弁護士は、八ツ場ダムをめぐって1都5県に負担金の支出差し止めを求めた訴訟の弁護団長を務めている。昨年8月、国は周辺の地域特性を記した「流域分割図」などを不開示決定。このため妥当性を検証できないとして、決定の取り消しを求めていた。
原告側は、訴えを認められたことで、東京高裁で係争中のダム負担金支出差し止め訴訟では、公開図面に基づいて数値を独自計算し、資料として提出する方針だという。
原告によると、図面は国の計算を「妥当」とした日本学術会議のメンバーにも持ち帰りは禁止されたという。原告側の大川隆司弁護士は「一番大事な文書を公にできないのは、密室で公共事業が進む慣習が断ち切れていないということだ」と指摘した。(新宅あゆみ)
(写真)流域分割図の開示を国に請求したところ、黒塗りだったという(右)=東京都千代田区霞が関
◆2011年8月3日 東京新聞
-八ッ場ダム 洪水資料 開示を命令 東京地裁判決 「国の不開示 違法」-
群馬県の八ッ場ダム建設をめぐり国土交通省関東地方整備局に情報公開請求した弁護士が、利根川流域の洪水に関する資料を不開示とした国の決定は違法として、開示を求めた訴訟の判決が二日、東京地裁であり、定塚誠裁判長は国に開示を命じた。
資料は、八ッ場ダム建設予定地を含む群馬県南部の利根川上流域が洪水となったときに流れ込む水量を算出するために使う図面など。原告は同ダムの事業費支出差し止め訴訟で住民側弁護団長を務める高橋利明弁護士で、「関東地方整備局が行った(水量の)算出過程を検証し、八ッ場ダムの必要性を吟味するために重要な資料だ」として開示を求めていた。
国側は「開示されれば図面に記された(八ッ場ダム以外の)構想段階のダムの位置が公になり、不動産業者が補償金目的で建設予定地を買収し住民が混乱する」と主張したが、定塚裁判長は「予定地が特定できるほど正確な図面とは認められない」と判断。「混乱を生じさせたり、特定の者に不当な利益を与えるとはいえず、不開示の決定は違法な処分」として退けた。
八ッ場ダムをめぐっては、利根川流域の一都五県の住民が、建設事業費の支出差し止め訴訟を六件起しているが、一審はすべて敗訴し、いずれも東京高裁で係争中。高橋弁護士は判決後の会見で「開示されれば国の計算課程をチェックし、事業費差し止め訴訟に反映したい」と話した。
関東地方整備局の話
主張が認められず残念。判決内容を十分に検討し、関係機関と協議して今後の対応を決めたい。
「ダム建設根拠 誤り実証へ」 原告側
八ッ場ダムの建設中止を公約に掲げた民主党政権誕生から九月で二年を迎える。しかし、中止か否かはいまだに決着がついておらず、建設事業費の支出差し止めを求める住民訴訟も継続中だ。
東京地裁が開示を命じた資料は、住民訴訟で原告住民側の武器となる可能性もあり、高橋利明弁護士は今回の判決に「120%の完勝。これでようやく国と同じ土俵で戦える」と手応えを語った。
高橋弁護士によると、国側は、利根川の基準地点での流量が過去最大だったとされるカスリーン台風(一九四七年)規模の降雨量があった場合に見込まれる水量を毎秒二万二千㌧と算出し、長く八ッ場ダム建設の根拠としてきた。
ところが、昨年七月に住民訴訟の弁護団が、国の算出した水量を検証するための情報を公開請求したところ、算出に使う今回の図面は不開示。高橋弁護士は「これまで一番大事なデータがブラックボックスになっていた。図面が開示されれば、専門家の協力を得て、国側の算定した数字が過大だということを実証したい」と話す。
八ッ場ダムをめぐっては、二〇〇九年九月に当時の前原誠司国土交通相が建設中止を表明したが、後任の馬淵澄夫前国交相が昨年十一月に中止方針を事実上撤回し、大畠章宏国交相もこの方針を踏襲。現在は関係自治体を交えて建設の必要性が検証されており、今秋にも結論がでる見通しとなっている。