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参議院決算委員会における八ッ場ダム質疑議事録

 参議院ホームページに、さる8月5日に大河原雅子議員(民主党)が八ッ場ダム問題について質問した時の議事録が掲載されました。現在、焦点となっている八ッ場ダムの検証のあり方、日本学術会議の姿勢、八ッ場ダム事業における水力発電量減少の問題などが取り上げられています。
 大河原議員と大畠国交大臣の質疑の部分を議事録より転載します。

★参議院ホームページより転載
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0116/main.html
 平成23年8月5日 参議院決算委員会

○大河原雅子君 おはようございます。民主党・新緑風会の大河原雅子でございます。
 前回は、国土交通省に対して、検査院から指摘されました治水経済調査マニュアルについて取り上げさせていただきました。本日も関連で、今行われておりますダム検証にかかわることを質問していきたいと思います。大変時間が短いものですからお聞き苦しいところもあるかもしれません。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、お手元に資料も配付させていただきましたが、八月の二日に東京地方裁判所で、八ツ場ダムの治水上の必要性の有無を検証する上で欠かせない利根川流域分割図の情報公開請求訴訟、その判決がございました。国が直ちにこれを開示すべきだという原告の全面勝訴の判決であったわけですが、大畠大臣、このことについて、直ちに開示をしていただきたい、まして控訴などということはお考えになっていないと思いますが、御見解を伺います。
○国務大臣(大畠章宏君) 大河原議員の御質問にお答えを申し上げます。
 ただいまの件でございますが、御指摘のように、今回の裁判においては国の主張というものが裁判所の十分な理解を得られませんでした。今後の方針については、現在、関係機関と協議を進めているところでありまして、引き続き判決の内容等を十分検討し、今後のことについては決定をしたいと思います。
 なお、利根川の基本高水の検証において日本学術会議に学術的な観点から評価を依頼しておりまして、日本学術会議の委員の皆さんには今回の判決のベースとなりましたこの資料についてはお示しをし、御覧をいただいた上で審議をしていただいているということも併せて申し上げさせていただきたいと思います。
○大河原雅子君 判決の中身を精査してとおっしゃったんですが、判決は、行政機関の意思決定前の情報だからといって当該事項に関する情報を全て不開示にすることになれば、政府が諸活動を国民に説明する責務を全うするという情報公開法の理念と相反するという大変厳しい判決なわけなんですよ。
 学術会議でもその場限りで御覧になるということだけ許されたということですが、予断なき検証をしようという中で、やはり大臣、これは直ちに開示をして、多くの方々の目に触れても問題がないという判決文ですから、これはやはり原告やあるいは住民側も、この分割図があれば改めて再現計算をすることが可能になるんですね。ですから、是非御決断を即いただきたいと思います。
 もう一度、いかがですか。
○国務大臣(大畠章宏君) この問題は、八ツ場ダムに限らずほかのダム等々とも連系しているわけでありまして、そういう観点から、例えば私も県会議員時代にどこを道路が通るんだろうかと、こういうことに非常に関心を持つ方々もおられるのも事実であります。そういうことを開示しますと様々な動きをする方もおられますので、なかなかここのところは全部を、計画関係を開示するというのが難しいということも是非現実問題として御理解をいただきたいと思います。
 そういう観点で、学術的に用いる、純粋に用いるという意味では、この委員の皆さんには全ての情報を開示して御検討をいただいておりますので、そういうことを踏まえて、今回の判決の内容等を私としても、今御指摘のように、これは司法の一つの判断でありますから、これを厳粛に受け止めながらも、今後どうすべきかということを慎重に検討しているところであります。
○大河原雅子君 情報公開というのは、私ども民主党の、また新しい政権の大きな柱でございます。今、国会に上程されております情報公開法の改正案でも五条の五号というところが改正ということになって、「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」というのが前は入っていたんですが、そういうものをなくして改正案が出されています。ですから、この改正案が通れば、必ず開示請求されたら出さなければならないという立場に政府は置かされます。ですから、そのことは是非お含みおきください。
 次に、日本学術会議の河川流出モデル・基本高水検証分科会について伺います。
 この分科会で高水の再計算をしてほしいと国土交通省から依頼をされたわけです。ここでは、従来から用いられている種々の河川流出計算モデルの課題整理、新たに構築されるモデルについての科学的な評価、また、過去の雨量、洪水実績などのデータについて妥当性を評価した上で、基本高水に関する考え方を具体的事例の検証を用いながら整理する、設置の目的はこのように行われておりますので、この設置目的からすれば、大いに国民としてはその結果に期待をするところであります。これまでと違う結論が出てくるのではないか、そのように思っておりました。
 ところが、ここに再提出されております国土交通省からの再計算、再来計算の値、そしてまたこのことを説明するに対して出されました国土交通省からの補足資料、資料でいえば二ページを御覧ください。ここでは、再計算では実績流量が公称毎秒一万七千トンが八斗島の地点で、そしてこれまでの再来計算では二万一千百トンということが新しく出されました。しかし、ここで差が四千トンもあるわけですが、非常に分かりにくい、説明も十分にされておりません。
 それで、補足資料を国土交通省が出されましたが、その記事を御覧いただければ分かるように、これは新潟大学の大熊先生が御指摘になりましたけれども、実際に地域を歩いていらっしゃる研究者でいらっしゃいます。高台まではんらん推定区域に入っていると、そういうふうに塗られたデータを示された。このデータは言わば国土交通省の捏造だと私は思います。
 これは群馬県の浸水図を基にして国土交通省が補正をしたという形ですから、この補正は誰の指示で、これが誤りだと指摘されて今どのように対応されるのか、大臣、どう思われますか。
○国務大臣(大畠章宏君) ただいまの御質問にお答えを申し上げます。
 今お示しをいただきましたこの新聞記事等も読ませていただきましたし、今回の御質問ということで私も事務当局から、山のところを平地とか、山のところを谷とか、そういう、何といいますか、事実に反するような計算をして数量を出しているとしたらそれは問題であるという認識は大河原議員と同じであります。
 したがって、いろいろとお話を、背景を聞きましたが、この多分議員が御指摘の資料というのは、昭和二十二年の九月の洪水のはんらんの推定をした地図というものを示しておられるものと思います。その地図を私も見せていただきましたが、言ってみますと、現地に入っておおよそのはんらんの範囲をメモをした、正確な地図というよりもメモ的に記録をしたような地図でございました。したがって、それをベースに計算に用いたとすれば、それは私も問題だと思うんです。そこで、いろいろ話を聞きますと、その昭和二十二年九月の洪水のはんらん量、はんらんの地図というものは参考資料であって、これを計算に用いたのではないと、こういう話でありました。
 ちょっと複雑な話になってきてもおりますので、事務当局からこの件については事務方としてのその状況を、事実関係を報告させていただきたいと思います。
○大河原雅子君 結構です。
 もし、その事務方が塗り間違えたんだということがあるんだったらそれは事務的な間違いでしょうが、データとしては誤りだということなんですよ。だから、そんな誤ったデータを日本の知恵を集めた学術会議に提出をした、このこと自体は私は許されることじゃないと思いますけど、どうですか。
○国務大臣(大畠章宏君) 重ねての御質問でありますが、実は私もなぜそういう不確かな情報を出したのかということを事務方に聞きましたら、これは学術会議の方から是非そういう情報も含めて出してほしいということでお出ししましたが、この資料をベースに計算値には用いておりませんと、あくまでも参考資料として提出したものでありまして計算に用いてはおりませんと、こういう話でありました。
 したがいまして、私も更に精査をしたいと思いますが、できれば一生懸命頑張ってこの問題に取り組んでいる事務方からも一言聞いていただければと思います。
○政府参考人(関克己君) 御説明させていただきます。
 今御指摘の地図につきましては、昭和二十二年当時、洪水の後に群馬県の皆さんが調べて、どの範囲が水につかったかという唯一の資料でございます。よって、当時の洪水の範囲、はんらん量を当たるという意味では、この資料をおいてほかの資料がないということで使わせていただいたと。
 なお、これそのものを計算に使ったりしているということではありませんので、あくまでも補足的な別の参考資料という位置付けで整理したというふうに考えております。
○大河原雅子君 だから、群馬県が作ったその浸水の地図そのままでいいじゃないですか。それを補正をするというところで、誤った補正をするということに私はすごく恣意的なものを感じますよ。それは私はすごく変だと思いますし、そのことによって、学術会議での議論が科学性はどうなのか、信憑性があるのかという疑問を持たされてしまうということ自体に私は国土交通省は責任を感じなきゃいけないと思いますけど、そのことは言っておきます。お答えはもちろん結構です。
 それで、学術会議からの回答書というのはいつ届くんでしょうか。もう受け取っていらっしゃるんですか、大臣。
○国務大臣(大畠章宏君) お答えを申し上げます。
 ただいまの日本学術会議の回答書でございますが、利根川の基本高水の検証について今年一月に国土交通省から日本学術会議に学術的な観点からの評価を依頼し、その回答書と、こういうことでありますが、六月二十日に第十一回の分科会というものが終了いたしまして、今後、日本学術会議においていろんな観点から検討をしていただいておりまして、それがまとめられた後に回答書をいただくものと考えております。
 いつという日にちがまだ定かではありませんけれども、今日御質問等もいただきましたので、更にこの問題について、大変大事な課題でありますので、早急に回答をいただくように私どもの方からも要請したいと思います。
○大河原雅子君 日本学術会議はさすがに日本の粋を集めた学者さんが集まっておられて、一回目のときにこの高水の結論を出していくに当たって公開性は十分に取るということをおっしゃいました。ですから、そこに出されるデータはもちろん正確なものでなければなりませんし、それに基づいていろいろな意見が出てきたときの結論を学術会議自身が最終的には一般の国民に対しての説明会もするというふうにおっしゃっているんですが、実はその説明会が八月の二日だったものが延期されているんですね。分科会自体は九月の三十日までの時限の設置でございますので、その点では非常に、今出されている回答骨子というものがホームページで見られますけれども、これの中身は非常に重要だと思います。
 その中で、実は結論のところでも、本分科会では不十分な情報しか提供されない中でやってきたとまず書かれているんですよ。この点について私は、やはり国土交通省が出すデータというものについて本当に十分出し切ったのかと、その点については非常に不満を持っています、疑問を持っております。
 それで、回答書は近々来るということなんですが、大畠大臣の役割は、ここから出される高水問題だけではなくて、全ての治水、利水、地質、社会的な状況、様々なところから総合的に判断をするという最終責任者です。ですから、私は結論を出す前に国土交通大臣として国民に向けて公開の公聴会であるとかシンポジウムであるとかきちんとやるべきだと思いますが、そのような開催を御予定していただけないでしょうか。
○国務大臣(大畠章宏君) 大河原議員が御指摘のように、一つの政治の大事な視点は情報公開でございます。できる限りの情報は国民に開示をし、正しい判断をいただきながら政治を判断していただかなければなりませんので、私どもとしても、このダムの問題に限らず、あらゆる課題については、できるだけ国民の皆さんに御理解いただけるような形で事業が進められるように努めてまいりたいと思います。
○大河原雅子君 私がなぜこのことにこだわるかといいますと、やはり八ツ場ダムに関して言えば、建設の推進ということを強く言われる方々が今ももちろんおられるわけです。その方たちが論拠としていらっしゃることの中には、この学術会議の検証も、それから有識者会議が示された治水、ダムによらないというところでも、必要性ということについての総合的な評価がいまだなされていません。
 例えば、東京都で水が百五十万トン以上余っている、このことをもってしても、利水で本当に必要なのかという検証というのはされていないんですね。それでも東京都からは、ダムを建設すべしだと、地元の人の声を聞けと、そういうような声しか上がってこないわけなんです。まして利根川の流域では、堤防の脆弱化、堤防自体が弱いので何度も漏水が起こる、二十八回も漏水が起こっているというようなところまであるんですよ。でも、そこの自治体の方々は八ツ場ダムを造ってくれとおっしゃる。ダムができるのは何年か先。そして、二百年に一回の洪水が起こったときの効果は今示されていますけれども、日常的な洪水被害にどう対応していくかというところはどうしても手薄になっているんです。
 そして、新たな八ツ場ダムの必要性をおっしゃる方たちの中に、実は今の原子力事故の電力供給の問題で、あそこに造られると計画が立ちました発電所について期待を過剰に持つ方がおられるんです。
 資料もお配りしておりますが、資料の三ページです。私も何度も質問主意書を出させていただいておりますが、八ツ場ダムは吾妻川に既に二十四か所発電所がございます。そして、ダムの下流の二か所については、八ツ場ダムが完成する、つまりダムに水がたまるときにはそちらに回す水が少なくなるので、東京電力に対してその発電量が少なくなるための補償をしなければならないんです。それは建設費のほかに払わなきゃならない分。幾らになるのかと毎度伺っておりますが、それは民間との交渉事なのではっきり言えませんとおっしゃいます。
 この資料を見ていただけば分かるように、八ツ場ダムの八ツ場発電所、これ群馬の県営なんですが、出力が一万一千七百キロワットですね。年間でも四千百万キロワット。下流で被害を受ける、影響を受ける、つまり発電を減らされる、その発電よりも小さいわけなんです。そのことも答えてくれと言っても、今回も答えは御用意にならなかった。
 様々な事柄が、八ツ場ダムについては、建設というためにいろんな理由付けがされるんですけれども、確実な必要性、科学的な必要性の検証というのはいまだ行われておりません。発電所について貢献度はありませんので、私からもきっぱりとこの点は明言したいと思います。
 八ツ場ダムについて、この下流の発電に大きな影響があります、減電補償費は更に事業費を大きくする、そのことを申し上げて、質問を終わります。