八ッ場ダム情報公開裁判、国は控訴せず資料開示

 さる8月2日、東京地裁で原告全面勝訴の判決が出た八ッ場ダムの情報公開裁判について、2週間の期限(8月16日)より前に国は控訴せずとの判断を公表しました。

 情報公開裁判の解説はこちらに掲載しています。
 https://yamba-net.org/wp/modules/karyu/index.php?content_id=1

 8月2日の東京地裁判決についての記事はこちらです。
 https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=1302

 大畠国交大臣の会見要旨
 http://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_001646.html
 大臣発言(利根川流域分割図等の情報公開請求訴訟判決への対応について)

  関連記事を転載します。

◆2011年8月15日 時事通信 
http://www.asahi.com/politics/jiji/JJT201108150042.html

 ー八ツ場ダム資料訴訟、控訴せず=東京地裁が開示命令-大畠国交相ー

 大畠章宏国土交通相は15日の閣議後記者会見で、八ツ場ダム(群馬県長野原町)の建設予定地付近の図面資料公開をめぐる訴訟で、国に開示を命じた東京地裁の判決について控訴しない方針を明らかにした。同相は「判決に従い、速やかに図面を開示する所存だ」と述べた。

 訴訟の対象となった資料は、利根川下流の流量を計算する「流域分割図」など。自治体による建設負担金の支出差し止め訴訟の弁護団が昨年7月、国交省が算出した最大降雨時の流量を検証するために公開請求したが、一部黒塗りにして開示され、不開示部分の公開訴訟を起こした。

 訴訟で国は、図面開示により、地域住民らに混乱が生じたり、不適正な土地取引が助長されたりする恐れがあると主張。これに対し、東京地裁は「施設周辺の土地を購入できるほど正確な図面とは認められない」として開示を命じた。

◆2011年8月15日 朝日新聞政治面
http://www.asahi.com/national/update/0815/TKY201108150066.html

 -八ツ場ダム建設の根拠図面、開示命令に控訴せず 国交相-

 利根川水系で大洪水が起きた時の最大流量(基本高水〈たかみず〉)の算出に使われる図面をめぐり、東京地裁が2日に国の不開示決定を取り消し、開示を命じた判決について、大畠章宏国土交通相は15日の閣議後会見で控訴しない方針を明らかにした。

 基本高水は八ツ場ダム(群馬県)建設の根拠とされる。国側は裁判で「開示すると建設予定地がわかり、特定の者に不当に利益を与える恐れがある」などと主張していた。

 大畠国交相は「図面を開示しても不当に混乱を生じさせる恐れがあるとは言えないと判断した。私も図面を見たが、あの図面だけでいろいろと利用される可能性は低い、という感じを持った」と述べた。

◆2011年8月15日 東京新聞政治面
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2011081502000033.html

 -国交相「データ図開示」 八ッ場ダム-

 八ッ場(やんば)ダム(群馬県)の建設問題で反対派の住民側弁護士の訴えを受け、利根川水系の流量に関するデータ図の開示を国に命じた東京地裁の判決について、大畠章宏国土交通相は十五日の会見で「開示しても、国民の間に混乱を生じさせるとは言えない」として、十六日の期限を待たずに控訴しないことを明らかにした。

 大畠氏は「判決に従い、速やかに図面を開示したい」と述べた。

 裁判は、同ダム建設をめぐる六件の住民訴訟で住民側弁護団長を務める高橋利明弁護士が、利根川水系で過去最大と同規模の洪水があった場合の流量を予測できるデータ図二枚の開示を求めた。

 同弁護士は「最大流量がダム建設の根拠とされており、開示されれば流量を検証できる」としていた。一方、国側は「地域住民らに混乱を生じさせる恐れがある」と不開示の理由を説明していた。

◆2011年8月16日 共同通信配信記事(上毛新聞、東京新聞、中国新聞、西日本新聞等に掲載。紙面により、一部省略あり 西日本新聞は一面トップ扱い)
http://www.chugoku-np.co.jp/news/Sp201108160070.html

 -ダム建設の根拠データ開示へ-

 国土交通省は15日、ダム建設の根拠となる大洪水時の河川の最大流量(基本高水)を算出する基礎データについて、請求があれば原則として開示する方向で調整に入った。これまではダム予定地周辺の買い占めの懸念などを理由に不開示としていた。八ツ場ダム(群馬県)建設問題をめぐり、国に利根川水系のデータ開示を命じる東京地裁判決を受けた事実上の方針転換。ダム建設の必要性に関し住民側の独自の検証も可能になりそうだ。

 大畠章宏国交相は15日午前の記者会見で「開示しても、国民の間に混乱を生じさせるとは言えない。判決に従い速やかに開示したい」と述べ、控訴しない考えを示した。
 政権交代を受けたダム事業の見直しで、国交省などは昨年末から全国83カ所について建設の是非を検証してきた。一部のダムでは、建設に反対する住民が事業への公金支出差し止めなどを求める訴訟になっている。

 八ツ場ダム建設をめぐる6件の住民訴訟に関連し、住民側弁護団長の高橋利明弁護士は昨年7月、関連資料の開示を求めたが、最大流量を予測できるデータ図2枚を関東地方整備局が不開示としたため、東京地裁に提訴した。国側は「地域住民に混乱が生じる」「特定の者に不当な利益を与える」と主張したが、東京地裁は今年8月、「情報公開法の理念と相反することになりかねない」として開示を命じた。

 国交省は八ツ場ダム以外で同様の開示請求があった場合、ダムの大まかな予定地なども含まれていることから、不当な土地買収などの恐れがないかを検証した上で、原則として開示する方向だ。

 行政と同じ情報で検証
 八ッ場ダム建設に反対している「八ッ場あしたの会」の渡辺洋子事務局長の話 これまでブラックボックスに入っていたデータが公開の方向になるのは喜ばしい。行政と同じ情報を根拠に、住民が行政とは別の専門家に依頼して検証や議論をすることが可能となる。

 精度の高い議論を期待
 ダム建設に反対する各地の住民でつくる水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之共同代表の話 八ッ場ダムの最大流量が妥当か、住民側として検証したい。全国の水系でも検証できるようになれば、ダムの必要性についてより精度の高い議論ができると期待している。

◆2011年8月16日 西日本新聞2面

 ーダム建設の根拠開示へ 識者「評価まだ早い」-

 「コンクリートから人へ」を掲げて2009年の衆院選で政権交代を果たした民主党政権にとって、八ッ場ダムの建設見直しは象徴的な政策だった。前原誠司氏は国土交通相に就任直後、中止を宣言したが、地元は激しく反発。後任の馬淵澄夫氏が中止方針を撤回し全国83ダムの白紙からの見直しに着手した経緯があり、ダム事業全体の先行きは見えない。
 
 国交省は、八ッ場ダム建設の根拠になってきた最大流量に疑問が呈されたことを受け再計算。今年6月、毎秒2万2千㌧から2万1100㌧に引き下げ、日本学術会議分科会も追認したが、建設に反対する住民は「計算にかかわる情報が公開されておらず、再検証できない」と批判していた。
 今回の情報開示方針について、八ッ場ダムの検証を続けてきた関良基拓殖代准教授(森林政策学)は「第三者の検証が可能になるという点で画期的。多額の血税を使ってダムを造り続けるやり方を今後も許していいのか、市民が考える契機にもなる」と歓迎した。
 一方、ダムに偏らない治水を訴えてきた京都大の今本博健名誉教授(河川工学)は「基本的な図面を出すというが、検証し得るデータが全て含まれているのか。『原子力村』と同じで『河川村』にも閉鎖的な風潮があり、見てみないことには評価できない」と行政への不信感をあらわにした。