八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

2011年民主党代表選

 東日本大震災以来、八ッ場ダム問題は原発問題の影に隠れ、ほとんどマスコミで取り上げられなくなっていましたが、民主党代表選を前に八ッ場ダムの文字が久しぶりに紙面に載りました。政権交代直後、初の国交大臣に就任し、2009年当時「八ッ場ダム中止」を表明した前原誠司衆院議員が代表選に立候補したからです。
 八ッ場ダムはこれまでも政局がらみで語られることが多かったのですが、政局を追う報道は移り気です。今回も八ッ場ダム問題の現状が伝えられることはほとんどありませんでした。

◆2011年8月25日 朝日新聞群馬版より転載
http://www.asahi.com/politics/update/0825/TKY201108250468.html

 ー前原氏「八ツ場ダム、私が国交相続投なら中止だった」ー

 「国土交通相の時に八ツ場(やんば)ダム中止と言ったのにできていない、という話があるが、続けさせてもらえればやった」。前原誠司前外相は25日、国交相時代に八ツ場ダム(群馬県)の建設中止を決めながら、その後中止の方針が凍結されたことを自民党が批判していることに反論した。

 民主党の意見交換会で語った。前原氏は2009年9月に建設中止を決めたが、外相に転じた後の10年11月、次の国交相の馬淵澄夫氏が中止の方針を凍結し、建設の是非を再検証することにした。前原氏としては、代表選で同じく立候補をめざすライバルの馬淵氏こそ責められるべきだ、との思いがにじむ。

 前原氏はさらに、菅政権が23日に来年度予算の概算要求基準の要綱を決めたことについて「新たな政権で決めるべきだ」と批判。自身が首相に就任すれば、各省庁に政策経費の一律1割削減を求める菅政権の方針を見直す考えを示した。

◆2011年ん8月26日 毎日新聞 より転載
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110827k0000m040079000c.html

 ー首相退陣表明:八ッ場ダム、普天間移設…揺れる政策現場ー

 菅直人首相は26日正式に退陣を表明、民主党の顔はまた代わることになる。群馬県の八ッ場(やんば)ダム建設計画、沖縄県の普天間飛行場移設問題は菅政権時代も決着することはなかった。政権末期には円高が急速に進み中小企業の苦悩は続く。【奥山はるな、井本義親、袴田貴行】

◇生活再建取り組めぬ…八ッ場ダム計画

 群馬県長野原町の八ッ場ダム建設計画は、民主党政権が発足した09年9月以来ストップし、建設の是非について再検証が続く。2年間で国土交通相には、代表選に出馬表明している前原誠司氏、馬淵澄夫氏ら3人が就任。

水没予定5地区の連合対策委員会事務局長、篠原憲一さん(70)は「政権が安定しなければ住民は生活再建に取り組むことができない」と嘆く。

水没予定の川原湯温泉街でダム対策委員長を務める樋田洋二さん(64)は「誰が代表になっても、このままでは展望が開けない」と語った。

◇無責任かつ無策だった…普天間移設問題

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で日米両政府は同県名護市辺野古への移設を6月に再確認したが、沖縄側の強い反発で、こう着状態が続く。辺野古で座り込みを続けるヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は、菅政権について「米政府の顔色をうかがい、事実上破綻した辺野古移設を沖縄に押し続けただけ。無責任かつ無策の政権だった」と言い切った。

 一方、普天間滑走路延長上に位置する宜野湾市上大謝名自治会の大城ちえ子会長は「移設問題の解決が先送りされ、普天間の状況もどんどん悪くなる。一日も早く沖縄が求める県外移設を実現してほしい」と語った。

◇権力争いの時でない…中小企業

 自動車などの材料加工を請け負う東京都瑞穂町の金属加工会社「東成エレクトロビーム」(上野保社長)は震災の影響が回復した途端、今度は円高が暗い影を落とす。

 円高が進めば、海外への生産拠点の移転も検討せざるを得ないという。

 同社の円城寺裕生・営業兼経営企画部長は「震災復興や原発事故対応の他にも、年金、外交、エネルギー政策など課題が山積しており、党利党略で権力争いをしている時ではない。中小企業が安心して生産活動できる環境を政治が整えてほしい」と話す。

◆2011年8月30日 上毛新聞一面より転載

 ー「いい方向」「国交相継続を」 八ッ場地元ー

 政権交代で中止方針が出され、現在は建設の是非を検証中の八ッ場ダム。建設予定地の長野原町では、民主党新代表に選出された野田佳彦氏に対して期待と不安が交錯、閣僚人事への注文も飛び出した。
 八ッ場ダム水没予定地五地区連合対策委員会の萩原昭朗委員長は「野田さんはマニフェストの見直しに理解がある。ダム推進にとって、いい方向になるのではないか」と期待する。
 国は秋までに検証結果を出す方針を示しており、高山欣也町長は大切な時期を直前にしての担当相交代を懸念、「これまでの経過を知っている国土交通相ら政務三役の継続を」と訴える。この2年間、ダム問題は足踏み状態で、「(国は)検証と言って地元をほったらかしにしてきた。国交相が代われば、2年間で4人目だ」と不信感がくすぶる。
 一方、八ッ場ダム建設見直しを訴えている市民団体「八ッ場あしたの会」の渡辺洋子事務局長は、民主政権の取り組みの遅さを批判した上で、「これまでの政務三役はダム問題に関わった経験がなかった。新三役にはダム問題解決の意欲と知識がある人を起用してほしい」と注文を付けた。

 
◆2011年8月31日 毎日新聞群馬版より一部転載
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20110830ddlk10010220000c.html

 -民主党代表選:新代表に野田氏 薄い印象、願いは切実 /群馬ー

 民主党の新代表に野田佳彦財務相が選出された29日、県内の農家からは「脱原発路線」の継続を求める声が上がる一方、「存在感が薄い」として指導力を疑問視する意見が相次いだ。

 県内には農畜産業に限らず切実な課題が多く、建設計画がストップしている八ッ場ダム予定地の地元住民は生活再建策の提示を求め、中小企業の経営者は「産業空洞化に歯止めをかける政策が必要」と訴えた。

 (中略)

◇生活再建策示せ 前原氏落選には安堵

●八ッ場ダム

 八ッ場ダムの地元、長野原町の高山欣也町長は、建設中止を宣言した前原誠司元国土交通相が代表に選出されなかったことを受け、「ほっとした」と安堵(あんど)の様子。

 野田代表については「財務相を務めた人なので、コストを重視してダムの必要性を評価し、建設を推進してくれるのではないか。

 菅政権の反省点を生かして国民の声をよく聴き、落ち着いた政権運営をしてほしい」と述べた。国交相については現職で事情を知る大畠章宏氏の留任を望んだ。

 一方、水没予定地の川原湯温泉で食堂を営む水出耕一さん(57)は「野田代表は公共事業やマニフェストへの対応方針がはっきりしないし、特に印象がない」。

 民主党がダム中止を宣言してから2年間、売り上げは落ち続けているといい「住民の生活を立て直すための施策を考えてほしい」と話した。【奥山はるな】
     (以下略)

*参考ブログ情報

◆ジャーナリストまさのあつこさんのブログ
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/post-9452.html
 「前原元大臣の初動の誤りを尻ぬぐいするのは誰か」