2011年9月21日
さる9月13日、国交省関東地方整備局が八ッ場ダムの検証結果を公表したことを受け、各方面で様々な反応や動きが見られます。
関東地整は関係都県知事と連携して八ッ場ダムの本体着工に舵を切る構えですが、民主党内では関東地整による検証のあり方を問題視する議員もおり、新聞では公開討論を求める社説も掲載されました。
一方、自民党などのダム推進勢力は、関東地整の検証結果と地元住民の苦境を前面に出して、民主党に八ッ場ダム中止のマニフェスト撤回を迫っています。
八ッ場ダム検証の問題点については、以下で説明しています。
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=1341
◆2011年9月15日 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110915ddm005010174000c.html
-ファイル:八ッ場ダム建設、ダム案最良に民主から批判ー
建設の是非を検証中の八ッ場ダム(群馬県長野原町)をめぐり国土交通省関東地方整備局がダム案が最良との判断を示したことについて、14日に国会内であった民主党国土交通部門会議で「事前に説明がなく評価を出すのはおかしい」などの批判が相次いだ。
松崎哲久座長は八ッ場ダム問題のプロジェクトチーム(PT)設置を検討する方針を示した。
部門会議では「ダム建設中止は政権交代前から民主党が主張していたことなので、支持者から説明を求める電話が相次いでいる」などの声が出たほか「関東地方整備局は、建設に批判的な意見を入れないで判断しているのではないか」などの疑問も出た。
このため、松崎氏が「さらに検討の場を作る」と引き取った。
◆2011年9月15日 京都新聞社説
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20110915_2.html
ー八ッ場ダム コストだけでは計れぬー
利根川支流の八ツ場ダム(群馬県)建設をめぐり、国土交通省関東地方整備局が、治水と利水の両面でダム建設がコスト面で最も有利とする総合評価を示した。流域6都県の知事も支持している。
昨年「ダムに頼らない治水」に向け、国交省が事業の評価基準を作った際、嘉田由紀子滋賀県知事は「安いからダムが計画された。コスト最重視の仕組みではほとんどのダムがよみがえる」と指摘した。その「懸念」が的中した格好だ。
八ツ場ダムは、民主党がマニフェスト(政権公約)で「無駄な公共事業」の象徴とし、2年前には前原誠司国交相(当時)が建設中止を宣言した。しかし、今回の評価を契機に工事再開を求める野党の圧力が強まろう。民主党が「コンクリートから人へ」という理念を貫けるか、正念場といえる。
東日本大震災や台風12号の豪雨は、人の想定を超えた自然災害が起こりうることを示した。そうした認識に立ってなお、八ツ場ダムが必要なのか、根本にさかのぼって検討する必要がある。
国交省の評価は、従来型の「治水」の考え方に立脚している。
戦後最大級の洪水となったカスリーン台風(1947年)の際、利根川基準点の流量は毎秒2万1千トンに達した。現在の利根川の最大流量は1万4千トンだが、上流の八ツ場ダムなどによって流量を減らし、決壊を食い止めるという。
しかし、八ツ場ダムが貯水によって調整できる流量は毎秒100~1800トン程度と見積もられており、その治水能力を疑問視する研究者もいる。
台風12号のように、過去に例のない豪雨が各地で頻発している。総合評価の検討会では、専門家から「地球温暖化で降雨強度が高まる恐れがある。従来のデータだけでなく将来の降雨変化も考慮すべき」との指摘があった。堤防やダムなどハードに頼った治水・防災対策には限界がある。
利水に関しても、人口減や節水努力で水道や工業・農業用の水需要は首都圏で頭打ちだ。高度成長期の発想はもう通用しない。
八ツ場ダムでは、住民の移転費用など3200億円が国と地方からすでに投じられている。建設計画を白紙に戻せば、それこそ無駄になるという意見もあろう。
しかし、無駄なカネをこれ以上つぎ込まない、という考え方もできる。ダムは生態系にも取り返しのつかない影響を与える。
国の計画と政治家の発言にほんろうされてきた地元の怒りは理解できる。ダムの建設を中止する場合、国はそれに代わる地域振興策を講じ、住民生活と地域コミュニティーを支援する必要がある。政府には、大局的な見地から建設の是非を判断してもらいたい。
◆2011年9月16日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20110915-OYT8T01186.htm
-八ッ場党三役関与に反発 最終判断巡り知事「検証何だったのか」ー
八ッ場ダムの再検証で、ダム建設を「最も有利」とする国土交通省関東地方整備局の検証結果に対し、前田国交相の政治判断が注目される中、政権交代直後に国交相としてダム中止を宣言した前原誠司政調会長ら民主党三役が、政策決定に関与する可能性が出てきた。
藤村官房長官が14日の定例記者会見で、野田首相や党幹部による「政府・民主党三役会議」でダム問題を判断する可能性に言及。大沢知事は15日、「これまでの検証は何だったのか。全部、党主導で決めるなら、大臣なんていらない」と反発している。
藤村官房長官は会見で、国交相が結論を出すとしてきた検証手法と党政調との関係について、「政府与党の最終判断は、政府・民主三役会議で決定する。
そこには党幹部が必ず入っているわけだから、そこで最終的に決める」と発言。直後に「今直ちに八ッ場ダム問題がそこ(政府・民主三役会議)にかかるとは、まだ言えない」と説明した。
しかし、1都5県や地元では、検証結果がダム建設に直結すると想定しており、大沢知事は15日の県議会本会議後、記者団の取材に対し「我々は何を信じたらいいのかね。ちょっとおかしい」と怒りを募らせた。
一方、同日の参院本会議の代表質問では、自民党の中曽根弘文・参院議員会長が八ッ場ダムについて質問し、野田首相は「『一切の予断を持たず』との基本的考えのもとで、検証が進められていると承知している。検証の結果に沿って、国交相が適切に対処される」と答弁した。
◆2011年9月16日 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110916/stt11091620080007-n1.htm
-八ツ場ダム建設推進へ国交相に申し入れ 自民議連 一時「第一人者」めぐり内ゲバもー
自民党の「八ツ場(やんば)ダム推進国会議員連盟」(佐田玄一郎会長)の緊急総会が16日、国会内で開かれ、国土交通省関東地方整備局が同ダムの建設を「最も望ましい」とする検証結果をまとめたことを受け、月内に関係自治体と合同で前田武志国交相へ早期完成を求める申し入れを行うことを決めた。
緊急総会では、検証結果に不快感を示している民主党の前原誠司政調会長に対し、「文句を付けられる筋合いはない」と批判が相次いだ。
しかし、代替手段の検証も求める金子一義元国交相と、検証も含めて「茶番だ」と全否定する脇雅史参院国対委員長が言い争う一幕も。
金子氏が「脇さんからぼろくそに言われたが、私はダム本体を事業化した大臣だ」と言えば、元建設官僚の脇氏は「あんたと論争する気は全然ないが、大学時代からずっと治水をやってきた」とかみつき、会長の佐田氏が何とか収めた。
◆2011年9月16日 朝日新聞社説
http://www.asahi.com/paper/editorial20110916.html
-八ツ場ダム―反対派交え集中討議をー
群馬県の八ツ場ダムをめぐって、国土交通省の関東地方整備局が本体着工に道を開く検証結果をまとめた。治水や利水で、八ツ場ダム建設を含む対策が、ダムを造らない代替案より安く済むという結果だった。
政府は全国83のダム事業の必要性について個別に検証作業を進めており、八ツ場ダムもその一つ。地方整備局などの事業主体を中心に、関係自治体も加わった「検討の場」で総合評価をする。地元住民らの意見も聞いて、国交省に報告する。国交相は、有識者会議の意見を踏まえて各事業の可否を判断する、という仕組みだ。
すでに15のダムについて判断が示された。事業継続が10、中止は5という内訳だが、いずれも検討の場が出した結論の通りだ。八ツ場ダムでは、建設予定地の群馬県長野原町と群馬県をはじめ、ダム下流の1都4県も早期着工を求めており、今回の総合評価に同意した。
しかし、疑問が解消されたとは言い難い。ダムを含む治水対策の前提となる河川の流量の設定が過大ではないか。水道水や工業用水は、人口減少・低成長時代でも計画通り必要なのか。八ツ場ダムは「始めると止められない」公共事業の象徴として国民の関心も高い。専門知識が乏しい人にもわかりやすく、議論を尽くす必要がある。
そのために、建設に反対する市民団体や住民、有識者を交え、官民の関係者が一堂に会して集中討議することを提案したい。検討の場で公表された資料のほか、8月には東京地裁の判決を受け、洪水時の最大流量を算出する際の基礎図面も公開された。こうした資料の分析や評価を中心に議論してほしい。
討議は期間を区切って集中的に行うべきだ。八ツ場ダムについては09年秋、民主党政権が公約に従って「中止」を打ち出し、10年秋には「予断なく再検証する」と軌道修正するなど、混乱が続いた。そのたびにダム建設予定地の住民らは振り回され、将来の展望を描きにくくなっているからだ。
関東整備局の検証によると、最も安上がりとした八ツ場ダム建設案でも、治水で今後さらに8300億円、利水にも600億円が必要という。3千億円超が投じられた八ツ場ダムの残りの事業費1300億円のほか、遊水地の新設や河川の改修などを伴うためだ。
財政難は深刻だ。災害対策を施設の整備だけに頼らず、避難態勢の充実といったソフト面で補う道を探るなど、費用対効果を徹底的に検討したい。
◆2011年9月17日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/feature/maebashi1316187702477_02/news/20110917-OYT8T00048.htm
-八ッ場着地点見えず 地元置き去り「再検証」ー
「この2年間は何だったのか。多くの時間と費用が無駄になっただけだ」
東京都内のホテルで9月13日に開かれた八ッ場ダム再検証の「検討の場」。国土交通省関東地方整備局がダムの必要性を追認する検証結果を発表した後、意見を求められた大沢知事は、テーブルを囲む整備局幹部に怒りの言葉を浴びせた。
2年前の政権交代で、着工目前だったダム本体工事にストップがかかり、この後、国交相は3回交代。ダム推進の立場をとる1都5県には、遅々として進まぬ検証に対する不満が鬱積(うっせき)していた。
上田清司・埼玉県知事は「(ダム中止を明記した民主党の)マニフェスト(政権公約)づくりで、国交省に問い合わせはあったのか」と詰問。整備局側が「なかった」と回答すると、「ダムが不要になる事情の変更もなかったのに、ただ思いつきで中止した。こういう結果が出た以上、速やかに本体に着工すべきだ」と、厳しい視線を向けた。
後に続いた他の首長らも、建設推進を強く訴えた。建設再開に光明が見え始めた状況に、高山欣也・長野原町長は会議終了後、「若干不安はあるが、ほっとした」と本音を漏らした。
だが、推進派にも一抹の不安が残っている。
民主党政権の初代国交相として、ダム中止を宣言した前原政調会長の存在だ。野田政権で機能が強化された政調のトップに立つ前原氏は、党代表選の際に「国交相を続けさせてもらえていれば、やった(中止した)」と語るなど、今なおダム中止に意欲を見せている。
追い打ちをかけたのが、14日の藤村官房長官の記者会見での発言だ。検証の手順では、前田国交相が最終判断を下すことになっているが、前原政調会長も参加する政府・民主三役会議に八ッ場ダム問題を諮る可能性に言及した。大沢知事は「官房長官がなぜ、そのような発言をしたのか疑義が残る」と首をかしげた。
国交省は「整備局の検証はあくまでたたき台で、最終結論ではない」との見解だが、民主党内のダム反対派は「役人が勝手にやったことだ」と反発。巻き返しに自信を見せる。
中島政希・県連会長代行は「前田国交相には直接、経緯を説明して、ご理解をいただいた。中止に向けて、前原さんともじっくり相談し、絶対にダム建設はつぶす」と語気を強める。
「八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会」の角倉邦良会長も、国会議員秘書時代の人脈を使い、民主党内の部門会議や国会で検証の不備を追及するよう働きかけるため、たびたび上京。20日には、前田国交相への再々検証を求める要望書を提出する前段として、党幹事長室に出向くという。
再検証を巡る議論が過熱するほど、地元は疎外感を深めている。
旅館の休廃業が相次ぎ、客もまばらな川原湯温泉で、食堂「旬」を営む水出耕一さん(57)は言う。「今になって再々検証なんて、何を考えているのか。この2年間だけで、もう十分だ。川原湯の現状を見てほしい。ここで生活している者に、待つ余裕などない」
(写真)八ッ場ダム再検証「検討の場」に出席した長野原町の高山町長(左端)や6都県知事ら(13日、東京都内で)
◆2011年9月18日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20110917-OYT8T00957.htm
-「八ッ場」推進派が気勢 県会議長就任祝賀会民主批判相次ぐー
政権交代直後、当時の前原国土交通相が八ッ場ダム中止を表明してから2年となる17日、地元選出の南波和憲県議(自民)の議長就任祝賀会が中之条町で開かれ、来賓らから民主党や前原氏への批判が相次いだ。
地元の小渕優子衆院議員(同)は「検証でダム建設が最良となったのに、民主党内では検証結果を否定する発言がある。自分たちが選んだ国交相が決めたルールで検証して納得がいかない、というのは全く信じられない」と批判。中曽根弘文・自民党県連会長は、民主党政調会長の前原氏が、ダム問題に関与する可能性が出てきたことに対し、「野田首相は(国会で)『検証結果に沿って、国交相が適切に判断する』と言った。首相の言葉は重い」と指摘した。
南波議長は「2年前の今日、前原さんは『八ッ場ダムはいらない』と言った。民主主義とはこういうものだと見る必要もあるが、これでは余りにつらすぎる」と語り、高山欣也・長野原町長は「2年間、ほったらかしにされた。結論は秋までだ。11月にまで遅れたら許さない」と語気を強めた。
地元住民にも前原氏への怒りが広がっている。川原湯温泉街で土産物店を営む樋田ふさ子さん(82)は「自分の意地だけで中止に持って行こうとして、地元をバカにしている。前田国交相は前原さんを気にせず決断してほしい」と話した。
◆2011年9月17日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581109170001
-八ツ場の是非 党でも検討をー
八ツ場ダム(長野原町)建設の是非の再検証をめぐり、前田武志国土交通相は16日、「政策の一つの大きな柱でもあったから、党の部門会議などでも検討したらいい」と閣議後の記者会見で述べた。
国交省関東地方整備局が13日に示した「八ツ場ダムが最善」との総合評価について、国交相時代に「中止宣言」した前原誠司政調会長や民主党国土交通部門会議などは「事前に説明がなく、評価を出すのはおかしい」と反発していた。
前田国交相は16日、総合評価を「最終的に結論を出す途中のプロセス」と説明。今後、学識経験者らで構成する「利根川・江戸川有識者会議」などの意見を聞いて、最終判断するとした。
基本計画では、ダムは2015年度の完成予定だが、国交省は今年1月、建設再開でも3年遅れる見通しを示している。大沢正明知事は、工期延長は国の都合として、計画通りの建設を国に繰り返し求めている。
◆2011年9月18日 上毛新聞
http://www.jomo-news.co.jp/news/a/2011/09/18/news01.htm
-最終判断なお波乱 推進見直し両派 動き急 「八ッ場中止」から2年 検証作業大詰めへー
政権交代直後に八ツ場ダム建設中止方針が表明されて、17日で2年。ダム案を「最も有利」とする総合評価が出て建設の是非を決める検証作業が大詰めを迎え、推進、見直し両派の動きが慌ただしくなってきた。攻勢を強める本県など関係6都県の知事らは前田武志国土交通相への直談判を計画。見直し派の市民団体は検証手法を「茶番劇」と批判してやり直しを求め、マニフェストに中止を掲げた民主党も最終判断に党幹部が加わり政治決着に持ち込もうという動きを見せる。最終局面に向けてさらなる波乱が予想される。
国交省関東地方整備局は13日、コスト、実現性などの面から総合評価した結果としてダム案を「最も有利」とした。従来の検証手順では今後、整備局が建設継続か中止かの対応方針案を決め、国交相が最終判断するとされている。
藤村修官房長官は14日の会見で、国交相時代に中止表明をした前原誠司政調会長ら政府・与党両首脳が入る「政府・民主三役会議」が最終判断に関与する可能性を示唆。前原氏も15日、八ツ場ダムを「マニフェスト案件」として同調した。
これに対し、6都県側は仮に国交相が「建設継続」の判断を出しても政治判断で覆される可能性を警戒。「党主導で決めるなら大臣などいらないではないか」(大沢正明知事)と反発を強め、前田氏に面会して建設推進を要望する構えだ。
国会内でも動きが活発化。民主の中島政希県連会長代行は14日の党国土交通部門会議で「(総合評価の)内容に問題があり、遺憾」と批判。自民は山本一太参院政審会長が15日の会見で、「野田政権下で中止方針が撤回されると信じている」とけん制した。
建設見直しを求める「八ツ場あしたの会」などは23日に前橋市内で検証の問題点などを主張するシンポジウムを予定している。
ただ藤村氏は15日の会見で「そこ(政府・民主三役会議)で処理する、解決するとは一切言っていない。現段階はまだ国交省で検討中だ」と発言。最終判断の場は流動的だ。
こうした混乱に地元住民の心中は複雑。長野原町の川原湯温泉で飲食店を経営する男性(57)は「この地域をこれ以上、翻弄(ほんろう)しないでほしい。国が主導でやった検証。秋までに結論を出すと言ったのだから守ってもらいたい」と早期解決を願い、ため息をついた。
◆2011年9月21日 上毛新聞
-八ッ場考える1都5県議員の会 民主に独自検証要請ー
八ッ場ダム建設の見直しを訴えいている「八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会」は、20日、国会内で民主党の池口修次企業団体対策委員長に対し、ダム事業検証作業の抜本的なやり直しを求める要請書を手渡した。
会長を務める本県の角倉邦良県議は「国土交通省の検証作業が進んでいるが、ぜひ民主党のマニフェストの方向で進めてほしい」と要望。現行の水利権許可制度の改善など5項目を盛り込んだ要請書を手渡したほか、治水、利水と代替地の安全性について、国交省とは別に党独自の検証を行うことを求めた。
池口委員長は「この問題については政治また―になってくるので、国交省の判断だけではすまないだろうと私自身は理解している」と述べた。
民主党は2008年衆院選のマニフェスト(政権公約)で八ッ場ダム建設中止を明記した。
◆2011年9月21日 毎日新聞 政治面
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110922k0000m010075000c.html
-八ッ場ダム:民主党議連 慎重な対処求める要請書を提出ー
建設の是非を検証中の八ッ場(やんば)ダム(群馬県)を巡り、民主党の国会議員有志による「八ッ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」は
21日、国土交通省を訪れ、国交省関東地方整備局が「最も有利な案はダム案」とする総合評価案を示したことについて、慎重な対処を求める要請書を前田武志国交相に手渡した。
同議連会長の川内博史衆院議員が「八ッ場ダム事業は既に治水上、利水上その意義が失われており、改めて党でしっかりと検証すべきであると考えている」などと説明。
前田国交相は「予断のない検証を進め、有識者の話も聞いたうえで結論を出す」と述べ、「東日本大震災(の状況)も検証に反映させる必要がある」との認識を示した。
また議連は、各地のダム事業廃止を前提に建設予定地の地域振興を図る特別措置法案の早期実現を、民主党の前原誠司政調会長に要望していることも報告した。【樋岡徹也】
◆2011年9月24日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581109240001
-政治家言動に募る不満ー
八ツ場ダムが建設されれば全戸が水没する長野原町川原湯で22日夜、地区代表らの対策委員会が開かれた。国土交通省関東地方整備局が13日に「八ツ場ダムが最善」との総合評価を示して以来、初の会合。国交省の現地担当者に説明を求める声が相次いだ。
「官房長官や国交相ら民主党の偉い人たちは、それぞれ勝手なことばかり言っている」「地元では、検証がどの段階になっているのか全く分からない」
地区代表約20人が集まった対策委では、国への恨み節が続いた。国交省八ツ場ダム工事事務所の幹部は「今秋を目標に予断のない検証をしている最中」と繰り返す。今後のスケジュールを問われても幹部は「上部機関(関東地方整備局)がやっているので分からない」と答え、住民たちとはすれ違ったままだ。
国交相が建設是非を判断するまでには、国民や有識者会議に意見を聞くといった手続きが必要で、現状は再検証の途中段階にある。
総合評価以降、議員や市民の見直し派団体は、ダムを推進してきた国交省が検証すること自体が問題だとやり直しを主張。民主党内からは、党として建設是非を判断するよう求める声が上がっている。
川原湯の住民は、こうした政治家の言動を「地元軽視」と感じて反発する。
昨年3月に休業した柏屋旅館社長の豊田幹雄さん(45)は「再検証の仕組みを国交相として決めた本人が、今になって党が決めるようなことを言う」と民主党の前原誠司政調会長に怒り心頭だ。2009年9月の前原氏の「中止宣言」で、生活再建が遅れたと考える旅館主は多い。
1970年度に655人だった地区の人口はダム計画の具体化で減り続け、09年度には169人に。先月末には159人になった。
旅館経営者らはダム湖畔で生活再建をはかる思いが強い。豊田さんもダム湖畔での柏屋再開を検討しており、築61年の現在の建物を11月にも取り壊す予定だ。「2年前から時間が止まったまま。国の判断がこれ以上長引けば、生活設計が描けない」と訴える。
大沢正明知事は、関係都県とともに、今月26日、国交相に対し、検証打ち切りと早期の工事着工を「直談判」する。(小林誠一)
人口が減少する中で八ツ場ダムの建設を推進する理由について、大沢正明知事は22日、「安定した水量、水質を確保しなければならない。(降雨の少ない)冬は八ツ場に頼る必要がある」と県議会で述べた。
国土交通省水資源部長の私的研究会は2008年、利根川の生活用水としての水使用量について、50年後は62~67%、100年後は31~42%との試算を公表している。だが八ツ場ダム建設是非の再検証で、同省関東地方整備局は、関係都県の「現行通りの水量が必要」とした回答を妥当と評価。ダム見直し派からは批判の声が上がっている。
また、代替地での地滑りの危険性を専門家が指摘していることについて、大沢知事は「総事業費の範囲内で、必要な対策を講じるよう国に求める」と述べた。