八ッ場ダムと水力発電

2011年9月27日

 ホームページに以下のご質問が寄せられました。他にも同様の疑問を抱く方がおられると思いますので、当会のお返事と共に掲載させていただきます。
 八ッ場ダムと水力発電の関係についての詳細は、以下のページをご参照ください。
https://yamba-net.org/wp/modules/problem/index.php?content_id=28

☆ご質問
「八ッ場ダムが出来ると、下流の発電量が減るとの説明がありますが、ダムが出来ると雨季や台風時の水が貯められ、晴天時にダムから法律上決められた河川維持放流+発電の放流をする為、発電所のある下流に流される水量は一定量はある筈です。
 ダムが無ければ、梅雨期や台風時にはほとんどの水量は発電できずに下流に流されるので、ダムがあった方がより効率良く発電が出来るんではないでしょうか?」

☆八ッ場あしたの会よりのお返事
 吾妻川流域は火山灰など火山性の堆積物からなる地層なので、水もちがよく、降った雨が浸透してゆっくり流出するため、晴天日も流量が豊富な川です。吾妻川流域はいわば天然のダム湖のような機能を持っています。

 その豊富な流量をあてにして、大正、昭和の初めの頃から吾妻川には流れ込み式の水力発電所が数多く設置され、晴天日においても大量の電力を生み出しています。

 一方、八ッ場ダムに併設される群馬県営の水力発電所は従属発電といって、利水・治水・河川維持用水のための放流水を従属的に使って発電するものです。発電のために必要な放流はされません。

 利水、治水のための放流がないときが結構あるのですが、その時は河川維持用水のための毎秒2.4?だけの放流ですので、その流量の分しか発電できず、大した発電量にはなりません。

 さらに、八ッ場ダムに水を貯めるためには、現在の水力発電所に送られている水量のかなりの部分をカットしなければなりません。それによって、現在、東京電力の水力発電所の発電量がかなり減ってしまいます。

 関東地方整備局が1955年~1984年の30年間の流量データを使って八ッ場ダムの貯水池運用計算を行っています。そのデータを使って、東京電力の水力発電所の減電量を試算したところ、30年間の年平均で22400万kW時になりました。

 一方、八ッ場ダムの県営発電所の発電量は年平均で4100万kW時ですから、吾妻川で生み出される発電量は大きく減ることになります。

 なお、この問題について八ッ場ダムの県営発電所から東電の発電所まで導水管を設置して、ダム放流水を既設発電所に使うようにするという話がありますが、それは実現性があることではありません。
 第一に、八ッ場ダムの県営発電所の放流口は標高470mです。八ッ場ダム予定地から最も近く、影響が最も大きい吾妻渓谷下流の松谷発電所は標高が約480mですから、松谷発電所に導水するためには新たに電力を消費しなければならず、また、たとえ導水しても発電に使うことはできません。松谷発電所の背後の山には、吾妻川の水が東京電力の導水管を通って流れ込む調整池(鍛冶屋沢ダム)があり、松谷発電所はこの調整池との標高差を利用して、有効落差115mで発電しています。

 第二に、八ッ場ダムからの放流は上述のとおり、晴天日は河川維持用水の2.4?しかないことが結構ありますので、松谷の下流の箱島発電所に再利用するとしても、普段は発電量があまり増えず、巨額の費用をかけて導水管を敷設する経済的なメリットがあるとは考えられません。

 八ッ場ダムによって水力発電量が大きく減ることは避けられないことであると考えられます。