八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

海外からダム建設中止のニュース

2011年10月2日

 アメリカで大規模ダムの撤去が始まったニュースを先日お知らせしましたが、↓
 https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=1346

 今度はブラジルとミャンマーから巨大ダム建設中止のニュースです。
 ブラジルでは、連邦裁判所がダム建設中止を命じました。わが国では三権分立が名ばかりとなっており、一旦始まったダム計画が司法の判断で止まることは殆どありませんが、ブラジルでは司法は行政から独立し、チェック機能を果たしています。

◆2011年9月29日 AFP BB News 発信地:サンパウロ/ブラジル
 http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2831553/7847624

 -アマゾン巨大ダム計画、連邦裁が中止命令 ブラジルー

 【9月29日 AFP】ブラジルの連邦裁判所は29日、アマゾン川流域に計画されている総工費110億ドル(約8400億円)規模の巨大ダムの建設計画の中止を命じた。

 パラ(Para)州に計画されているベロモンテ(Belo Monte)水力発電ダムは、流域に暮らす先住民たちが生業としている漁業を破壊するとして、同州のカルロス・エドゥアルド・カストロ・マルティンス(Carlos Eduardo Castro Martins)連邦判事は建設を受注した企業連合ノルテ・エネルギア(Norte Energia)に対し、「港の建設、爆発物の使用、堤防や水路の設置、その他、アマゾン川支流のシングー川(Xingu River)の自然な流れを妨げ、それによって地域の魚類に悪影響 を及ぼすインフラ設備をいっさい」禁じた。

 ブラジルは、急速な成長を遂げている経済が必要としているエネルギーの国内生産量を増やそうとしている。完成すれば世界第3位の大きさとなるベロモンテ・ダムは、エネルギー増産計画の主要な一端とみなされている。(c)AFP

(写真)ブラジル北部パラ(Para)州のアマゾン(Amazon)流域に建設予定のベロモンテ(Belo Monte)水力発電ダムの建設に抗議し、サンパウロ(Sao Paulo)でデモを行
う先住民や環境保護団体(2011年8月20日撮影)。(c)AFP/YASUYOSHI CHIBA

◆2011年9月30日 日本経済新聞
http://p.tl/OuvE

 -巨大ダムの建設中断表明 ミャンマー大統領ー

 ミャンマーのテイン・セイン大統領は30日、北部カチン州のイラワジ川上流に中国と共同建設中の水力発電用ダム「ミッソンダム」の工事を中断すると表明した。

 流域の自然環境や住民に与える影響が大きいと国民から批判が強まり、同地区の少数民族武装勢力との衝突の一因にもなっていた。

 大統領の判断は国民和解や民主化進展といった改革姿勢を示す半面、米欧の経済制裁下にあるミャンマーに影響力を拡大してきた中国との関係悪化を招く可能性が高い。

 テイン・セイン大統領は首都ネピドーで開催中の国会で「この巨大ダム建設は国民の意思に反している」と工事中断の理由を説明、「(5年間の)私の任期中は建設しない」と言明した。

 ただ同事業に投資し、発電される電力の大半の購入を決めている中国側の反発は必至で、計画が完全に中止されるかは不透明だ。中国はイラワジ川で他に6件のダム建設計画があるが、影響は避けられない。

 8月中旬にダム建設への反対を表明していた民主化運動指導者アウン・サン・スー・チー氏は同日、最大都市ヤンゴンでアウン・チー労働相と会談後、記者団に「国民の声に耳を傾けたのは素晴らしいこと」と大統領の決断を支持した。

 ミッソンダムは最大出力が原子力発電所6基分相当の600万キロワットに達する巨大発電事業。2006年に中国と共同建設に合意、昨年着工した。総事業費は36億ドル(約2800億円)に上り、発電電力の9割を中国に輸出する計画だった。

 ただダム建設で周辺の生態系が破壊される恐れがあるだけでなく、すでに1万2000人の住民が移住を強制されていた。建設に反対する少数民族武装勢力のカチン独立軍(KIA)とミャンマー国軍との間で戦闘が起きるなど、国境地帯での緊張も高まっていた。(バンコク=高橋徹)

◆2011年10月1日 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/world/news/20111002k0000m030130000c.html

 -中国:ミャンマーのダム中断方針に権益保障を要求ー

 ミャンマーのテインセイン大統領が、同国北部カチン州の水力発電用ダムの建設を中断する方針を示したことについて、中国外務省の洪磊副報道局長は1日、「中国企業の法的権益を保障するようにミャンマーに要請していく」との談話を発表した。

 同ダムは中国企業などが建設し、発電された電力の大半は中国に供給されることになっていた。

 洪氏は同ダムについて「中国とミャンマーによる科学的論証と厳格な審査を経た共同事業だ」とダム建設の正当性を強調、「友好的な協議を通じて適切に処理すべきだ」などと要求した。(北京・共同)

◆2011年10月1日 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111001-00000102-san-int

 -中国資本のダム建設中止 ミャンマー 両国関係に影響ー

 【ハノイ=青木伸行】ミャンマーのテイン・セイン大統領は30日、首都ネピドーの連邦議会で、中国の資本により、北部カチン州イラワジ川上流で進められている水力発電用ダムの建設を、「現政権下では中止する」と表明した。中国は反発するとみられ、両国関係に影響が出そうだ。

 カチン州では7カ所のダムが建設、計画されており、今回のは「ミッソンダム」。これらダム建設などには、少数民族カチン族、民主化勢力、環境保護団体などが反対し、カチン族の武装勢力は建設を妨害し政府軍と衝突してきた。

 それは(1)ダム建設に伴い、カチン族の63村、1万2千人が移住を強いられた(2)ダムで発電される電力の9割が中国へ供給され、住民には還元されない(3)生態系に影響が出る-などの理由からだ。

 建設中止表明は、政権が民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんとの対話を重ねていることと合わせ、「民政移管」した体制側の「変化」を示す現象のひとつだといえる。

 スー・チーさんは同日、大統領の表明を歓迎した。民主化勢力側は同時に、他のダムの建設、計画も中止するよう求めている。