2011年10月26日
国土交通省のホームページに掲載されている最近の前田国交大臣の会見要旨より、一部転載します。
大臣会見
http://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin.html
●2011年10月11日
(問)先日、八ツ場ダムの現地訪問を終えられたわけですが、その感想、今後の取り組みを教えて下さい。
(答)先週の土曜日、現地に朝から入りました。長野原町、一部東吾妻町にも入りました。
約4か所、現地で御説明を受け、いろいろ見せていただいたわけです。
そして、午後から県庁にまいりまして、大沢知事、長野原町の町長さん、議長さん、東吾妻町の町長さん、議長さんを含めていろいろと話を聞き、そこには、県議会の八ッ場ダムの委員長さんもおられました。
そういった県の関係の方々から忌憚のない御意見を伺いました。
厳しい御意見も伺いました。
それに対して、私の方からは、こういった良い機会を設けていただいということと、そして報道で御承知のとおりなのですが、やはり政権交代以降、2年間にわたって先延ばしになってしまっている、予断なき検証の結果で、国土交通大臣が有識者委員会の評価等を踏まえた上で決断するということになっておりますが、有識者委員会の中間報告で示されたそのスキームの中で、しっかり予断なき検証をさせていただく。
その中に加わったのは、この前も申し上げましたが、社会資本整備審議会において3.11をどういうふうに受け止めるかということをいろいろ御議論していただいた結果によると、生命第一、災害に上限になし、この二つの方向を出されております。
それを受けて、事務次官を長として、3.11をどう受け止め、八ッ場の計画にどういうふうに受け止めたら良いのかということを調査していただいて、有識者委員会にそれを提供していただく、有識者委員会でそれを評価していただく、その結果を受けてということを御説明致しました。それでは遅れてしまうではないか、という御意見もございました。
しかし、これは当然必要なことでありますし、秋までと申し上げているのは、24年度の予算に反映させるという意味でありますから、検証の結果がいかなることになろうとも24年度予算に反映させるためなるべく早く結論を得ると、このように御説明をさせていただきました。
地元の方々の御苦労を、本当に切々と訴えられました。
また、非常に厳しい御指摘もありました。そういったことを受け止めさせていただいた次第であります。
●2011年10月18日
(問)昨日、奈良の被災地に行かれたと思うのですが、御所見と、もし現場で、土砂ダムなどに関して何か指示をしたことがあればお願いします。
(答)昨日は、奈良というよりも紀伊半島全体を視察しました。
台風12号発災直後に私は奈良県を中心に、平野大臣が和歌山県、三重県ということで手分けして行ったのですが、今回は、前回行けなかった所、主に和歌山、例えば、那智勝浦町であったり、新宮市であったり、あるいは三重県紀宝町であったり、そういった所を中心に視察しました。
また、ヘリコプターで被災地まで行ったものですから、途中克明に土砂ダムを何度も何度も旋回してもらって見てまいりました。
そういう意味では、その後の状況、それから道路が寸断され、橋が落ちたような所、あるいはJRの紀勢線の現場だとか、こういった所を見てまいりまして、ほぼ被災直後、そして被災後の今の復旧・復興の状況を掌握してまいりました。
今の御質問ですが、戻って奈良県庁で記者会見をさせていただきましたけれども、深層崩壊ということで、十津川筋の大きなダム湖ができたり、それから那智勝浦町、これはまた本当に悲劇です。
奥様、娘さんを亡くした町長さんが御案内をしてくれましたが、普段は熊野大社、那智の滝、非常に豊かな自然の中で、熊野の森なども見られて、おそらく南方熊楠などの原自然の風景などがある所ですが、そこが、また崩壊しているわけです。
土石流が直撃して、多くの犠牲者を出しているのです。
熊野詣などが始まって以来のことですから、少なくとも千年に一度の大災害のようです。
御質問についてですが、深層崩壊というようなこと、土石流の発生などということについては、かなりの確度で、事前に何とか警戒体制をとれるのではないかということで、国土交通省において高性能レーダーを導入して、ピンポイントで豪雨を予知する、また崖崩れ箇所というものは、専門家に見ていただくと、だいたいここが危険箇所というのはわかるのです。
そういった所に、随分と進化したセンサーを置く。雨とセンサーと、それを衛星通信などを用意して結びつけて、そして早期警戒システムを作ろうと、このような検討を開始して、いよいよ実証実験的なものを紀伊半島で始めようということになりました。
これを昨日、発表してまいりました。もちろん、警戒体制などは自治体になってくるわけですから、そういったソフトのシステムと組み合わせて、奈良県知事も呼応して、奈良県も一緒に実証実験的なものに参加するということになりました。
正確な量は存じませんが、記録がある土砂崩壊で、一番大きいのは122年前に奈良県吉野郡十津川筋で起こった大水害ですが、これで約2億立米ほど土砂崩壊を起こしているようです。
2番目、3番目は稗田山大崩壊、岩手宮城内陸地震ですが、正確ではありませんが1億3千トンとか4千トンで、4番目は今度の12号台風であるということです。
やはり、雨によって、もの凄い土砂崩壊が起こるということ、言ってみれば山津波なのです。
東北大震災の大津波、そして豪雨による山津波、こういったことに対して、社会資本整備審議会で出していただいたように、「災害に上限なし」ということを我々も受け止めて、ハードだけではとても対策が打てませんし、ハードには限界がありますので、それに対して如何に人知を尽くして、そして実際の人間社会の中で、とにかく命を守るということをどうやって実現していくか、その第1歩になるかなと思います。
●2011年10月21日
(問)今後の治水対策のあり方に関する有識者会議についてですが、これまでいくつかのダムが中止となり、又は継続となっておりますが、継続とされたものの中には委員たちが水余りを指摘したものもありました。
そういう意味で、前原大臣になった時に、批判的な意見を持っている委員ではなく、それまで推進してきた委員を中心に、推進してきた委員の考え方を変えてもらうのだという人選が行われたと思いますが、今後、今までの検証を踏まえて、委員の追加をお考えになった方がよろしいのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
(答)有識者会議の委員の構成をもっと増やした方が良いということですか。
(問)例えば、原発事故を踏まえて、エネルギー総合政策の委員会の方も批判的な委員を加えました。
今の委員のメンバーは、推進の方、河川工学者、そしてそれ以外の方という構成になっています。それに対しては随分と批判がございましたので、この辺りで軌道修正をするというようなこと、ダムに頼らない治水を実践してきた方、例えば元国土交通省の職員であった宮本博司さんなどを加えるということはいかがでしょうか。
(答)具体的な人事のご提案のようですが、私の今の理解では、有識者会議というのはオールジャパンの83事業に対して、有識者の高い見識で評価をしていただく会議だと思っております。
そして、各具体のダム事業については、各地方整備局を主体にした検討の場がございますので、そこに自治体の長や、かなり専門的な方々も入っていただいて、時には適宜、学術会議に色々検討していただくということも含めて行っております。
ですから、有識者会議は元々幅広い構成になっていると理解しております。
特にご指名でこの人ということ自体が、何か意図を持ってというように見られるおそれもあるかなという感じもいたします。
もちろん今のようなご指摘があるということも承知しておりますので、必要に応じて、そのような方々も来ていただくような機会は考えなければならないと思います。
更に申し上げれば、私は就任以来何度か、前原大臣の時に作っていただいた検討の場、有識者会議、そして検討の場できちんと自治体の長も入って選択されたことを有識者会議に持っていって評価をしていただく、そういった先入観のない検証をしっかり行った上で大臣が決断するというスキームを崩さないということをずっと申し上げているわけです。
このスキームそのものは大事にしていかないと、そもそもの信頼と言いますか、行ってきたこと自体全てがおかしくなるといけませんので。
しかし、そこに今ご指摘のような観点から、必要な人に適宜出ていただくというようなことは考えても良いのではないかと思っております。
更に申し上げると、3.11の大震災の教訓というものが何か、その教訓を踏まえた上で、有識者会議にきちんと資料を提供できるようにしたいということが私の考えでありまして、御承知のように、7月の半ばに行われた社会資本整備審議会において、今回の東日本大震災のことについて議論をずいぶんと行っていただいた結果として、命が大事だ、そして災害に上限はないと、この二つの教訓を導き出していただいているのです。
これを踏まえて、国交省の中に、事務次官を長とするタスクフォースを作っていただきました。
このタスクフォースは原局である水管理・国土保全局、要するに検討の場というものは各地方整備局でありますが、それが本省に上がってくると、ダム関係というのは水管理・国土保全局になりますので、利益相反にならないようにこことは遮蔽をしております。
今、そのタクスフォースがかなり方向性を出してくれておりまして、そこでいろいろな立場の有識者の話も聞くし、60年にわたって調査を行ってきているのですから、その中には議論されて、今は埋もれてしまっているようなものもありますので、そういうものも全部精査していただいた上で、3.11の二つの方針に沿った資料を集めていただいて、それを有識者会議に提供するということを行っております。
(問)埋もれている資料について、もう1点だけ確認をさせてください。 3.11に限らないのですが、例えば、栃木県などは利水はしませんし、治水については、過去、八ッ場ダムの計画を作るときに、当時の建設省の方から参加をしていただけないだろうかという話があったので参画しているということで、栃木県は、実際は利根川とは接してもいないのです。
そういった経緯も掘り起こして、国が声をかけて自治体に参加してもらったというようなものは、国自身がもう一度その必要であるかどうかということを検証する必要があるのではないでしょうか。
(答)私も、あまり専門的というか、詳しいことになると、この立場ですからわかりませんが、今のお話はたぶん検討の場においては当然関東地方全体ですから。
今、栃木県と言われましたが、栃木県というのは利根川の流域にもなるわけです。
思川だとか、こういった川は確か栃木県だったと思います。
そういったことも含めて、中にはたぶん資料としてあるはずですから、そういったものも見つけ出せるかもわかりません。
(問)バーターでやったところがあるそうです。
(答)ちょっと何のことだかよくわかりませんが。
(問)思川にも賛成してもらうので、八ッ場にも賛成してくださいということで、実際には関係ない地域同士が入っているということでした。
(答)そういったことも含めて、その中に入ってくるかどうかですね。
もちろん、パブリックコメントがありますから、詳しくはパブリックコメントに今言われたようなことも是非提供されたら良いと思います。
(問)出先機関の改革についてお伺いしたのですが、昨日、官邸で開かれました地域主権戦略会議で出先機関の改革については推進していくと、そして来年の通常国会に法案を提出するということを総理がおっしゃいましたけれども、それを受けて、対象となっている地方整備局をお持ちの国土交通大臣としてのお考えと、今後そういったスケジュールを進めていく中で、何か具体的に今お考えを持っていらっしゃることがあれば教えてください。
(答)今日の閣議で昨日の結果報告があり、特に総理から、しっかりとした御指示がありました。
また、地方支分部局の廃止を含めて、地域主権改革の法案は24年度に成立させることになっていることの確認がありました。
当然、国土交通省としても、その方針をしっかり受けますが、私の受け止め方は、そういった方針が出来たから、地方支分部局の改革あるいは移管、そういうことを行うんだということを越えて、要するに日本の国がどんどん停滞していっている、これだけ複雑、多様化した経済社会のあり様の中で、もっと地方が本当に責任を持って行っていかなければならない時代、それを地方の首長さんなども取り組んでおられるわけですから、地方支分部局という問題もその中で、地方がブロックで一緒になると、ブロックは経営体ですから、国と違って破綻、デフォルトすることもあるでしょうから、経営体として民も含めて、資源の有効利用ということを徹底的に考えていかないと日本の将来は無いと私は思います。
その方向で積極的に議論を行っていきたい、このことは省内でも申し上げています。