「ダム検証のあり方を問う科学者の会」が提案した公開討論会を拒絶した国交省の「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」は、公開討論会が設定された12月1日に八ッ場ダムに関する審議を行うと発表しました。
八ッ場ダムの検証作業を行ってきた国交省関東地方整備局が検証結果を本省に報告したのは11月30日のことです。
本来であれば、報告を受けた本省が問題点を整理し、有識者会議の委員に資料を送付し、委員らが資料を読み込む時間をとった上で会議を開催するはずなのですが、今回は異例の翌日開催でした。
「科学者の会」では当初の予定通り、12月1日の午後5時から7時まで、衆議院第一議員会館院において、院内集会を開催しました。国交省の有識者会議は午後6時から8時に国交省内で開かれました。
「科学者の会」では院内集会に於いて、有識者会議に対する以下の抗議声明を公表しました。
2011年12月1日
国土交通省「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」委員各位
八ッ場ダムの検証報告を拙速に審議することについての抗議声明
ダム検証のあり方を問う科学者の会
共同代表 今本博健 川村晃生
私たち「科学者の会」は、全国のダム建設継続にお墨付きを与えてきた貴有識者会議に本日の公開討論会への出席を申し入れましたが、11月25日、国土交通省を通じて出席を拒絶する旨、連絡が入りました。
そこで、私たちは、本日の公開討論会を「科学者の会」だけで催し、ダム検証のあり方を根本から問い質すことにしました。
ところが、貴有識者会議は今日の公開討論会に重ねるように、会議を開催することを昨日発表しました。国土交通省に議題を問い合わせたところ、八ッ場ダムの検証結果を審議するとのことです。
八ッ場ダムの検証結果は昨日、11月30日に関東地方整備局が本省に報告したばかりであるのに、どうして報告の内容を吟味することなく、審議することができるのでしょうか。
ダム検証では通常は、国交省本省が検証結果の報告を受けた後、検証検討主体(地方整備局や道府県)からヒアリングを行って疑問点を整理し、その上で有識者会議の委員に資料を送付し、委員が資料を十分に読み込む時間をとった上で有識者会議を開くという手順がとられてきました。
今回はその手順をすべてカットしており、常軌を逸しています。国土交通省はなりふり構わず、八ッ場ダム事業の推進を図ろうとしています。
貴有識者会議が、もし科学者の良心を失い、国交省の意を受けて八ッ場ダム事業の検証報告を拙速に審議することがあれば、有識者に対する国民の信頼を裏切るものです。
貴有識者会議の各委員におかれては、私たちが示した問題点に応えられるだけの慎重な審議を求めます。