八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

関東地整が本省にあげた「八ッ場ダム建設継続妥当」との報告

2011年12月6日

 昨秋から八ッ場ダムの検証を行ってきた国土交通省関東地方整備局は、11月30日、「八ッ場ダム継続妥当」との結論を本省に報告しました。

 この検証報告は、関東地方整備局のホームページに同日、アップされました。↓
 https://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000192.html
 https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000050255.pdf
 八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書

 本文だけでも300ページあまりもある大部なもので、これに補足資料などが大量に加えられています。
 この検討報告書の原案に対しては、10月から11月にかけて実施されたパブリックコメント、11月に開催された公聴会で利根川流域の住民から多くの批判が寄せられ、科学者138名からも「ダム検証のあり方を問う科学者の会」として批判の声があがっていますが、関東地方整備局の方針には変化がありませんでした。

 八ッ場ダム事業を推進してきた関東地方整備局としては、これまで長年にわたって無理をおして進めてきたダム事業を、今さら間違っていましたとは言えないのでしょう。報告書は紙幅を費やして八ッ場ダム事業の正当性を主張していますが、河川行政を抜本的に変えようとした民主党政権の方針にも、流域住民のダム事業への疑問にも応えたものでないことは言うまでもありません。

 9月に公表された報告書の素案に新たに加えられたものとして、報告書の巻末に「関係住民の意見の概要」が載っています。これは公聴会で公述した利根川流域住民が公聴会の前に関東地方整備局に提出した「意見の概要」をそのままコピーしたものです。
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000050278.pdf
 
 また、次の項目についての説明が資料として掲載されています。

 資料1_パブコメ考え方・・・パブコメの意見と回答の対照表
 補足1_環境調査の概要
 補足2_事業費・工期
 補足3_地すべり
 補足4_代替地
 補足5_堆砂計画
 補足6_費用便益比算定

 資料2 パブコメで提出された意見をまとめたもの
 資料3 11月4日開催の関東地方整備局の有識者会議議事録
 資料4 利水についての関係利水者の回答
 資料5 同上
 資料6 同上
 資料7 検証に関する関係地方公共団体、関係利水者の意見
 資料8 治水に関するデータの点検結果
 資料9 費用便益の参考資料
 資料10 水需要予測と水質(ヒ素)

 どの資料も、これまで八ッ場ダム事業を疑問視してきた識者らの批判に耐えるものではないのですが、一般の人々は報告書のボリュームを見ただけで、中身を読む気をなくすではないでしょうか。日々の生活に追われている私たちは、行政に仕事を委ねざるをえません。行政が組織の保身を最優先にして公共事業を進めるとき、一般国民がそれを制御することは至難の業です。
 翌日の報道では、行政が発表した「八ッ場ダム継続妥当」の情報のみが紙面に載っていました。

◆2011年12月1日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111130-OYT1T00464.htm

 -国交省整備局、八ッ場ダム「建設継続」を報告ー

 建設中止か継続かの再検証が進められてきた八ッ場やんばダム(群馬県長野原町)について、国土交通省関東地方整備局は30日、建設継続を妥当とした検証結果を同省に報告した。

 今後は、国土交通相の私的諮問機関「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」(座長=中川博次・京大名誉教授)がこの検証結果について議論し、前田国交相が年内に判断する見通し。同会議はあす12月1日、同ダムの検証について初めての会合を開く。

 同整備局は、利根川の複数の治水案のうち、コスト面などから、同ダムを建設し利用する案を最良と評価し、流域自治体の首長や住民らからの意見も踏まえて、「継続が妥当と考えられる」と結論付けている。

◆2011年12月1日 東京新聞群馬版 
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20111201/CK2011120102000073.html

 -「継続妥当」大臣に報告 八ッ場ダム建設で関東地方整備局ー

 八ッ場(やんば)ダム(長野原町)の建設の是非を検証していた国土交通省関東地方整備局は三十日、「八ッ場ダム建設事業の継続が妥当」とする対応方針案を前田武志国交相に報告した。

 同整備局は、八ッ場ダムを建設する案と建設しない案を治水・利水のコストや実現可能性などの点から比較して、ダムを建設する案が最も有利とする案を提示。

 その後、流域住民・学識経験者の意見を聞き、パブリックコメントを実施し、同整備局の事業評価監視委員会の審議を経て、対応方針案を決めた。

 これを受け、国交省は一日に国交相の諮問機関「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」を開催する。この審議結果や東日本大震災を踏まえた検証などを踏まえ、国交相が結論を出す。民主党も同日、八ッ場ダム問題分科会の第四回会合を開く。 (伊藤弘喜)