2011年12月10日
民主党の国土交通部門会議は12月8日、党政調会役員会に「八ッ場ダム問題に関する部門意見」を提出しました。
以下をクリックすると、記者発表された部門意見がご覧いただけます。
https://yamba-net.org/wp/doc/20111207bunkakai.pdf
9月13日に国交省関東地方整備局が「八ッ場ダム建設がベスト」とする同局の検証内容を公表後、民主党の国土交通部門会議では同党議員らから、国交省とは別に民主党として「意見集約の場」を設置するべきだとの声があがりました。八ッ場ダム中止は2009年の政権公約(マニフェスト)で民主党が掲げた重要政策でしたが、ダム事業を進めてきた関東地方整備局の検証作業は、政策転換となる結論を客観性や科学的根拠なく導き出そうとており、八ッ場ダム建設に反対する同党議員らが問題視していました。
10月初旬には、意見集約のためにワーキングチームが設置されるとの報道もありましたが、11月15日になってようやく設置が認められたのは、「意見交換の場」と位置づけられた「八ッ場ダム問題分科会」でした。国交省の息のかかった同党議員らの反対で、「意見集約の場」の設置は見送られたといわれます。
反対派議員のガス抜きの場になるのでは、と懸念された「八ッ場ダム問題分科会」でしたが、11月18日に始まった会議では毎回、関東地方整備局の検証のあり方や、八ッ場ダム事業が抱える様々な問題に対して、参加議員から厳しい意見が相次ぎました。分科会では国交省からの資料提出、説明なども行われましたが、議員らの疑問は解消されなかったため、分科会での意見をまとめるとなると、八ッ場ダム建設に反対する意見で集約するのが自然な流れでした。しかし、座長の松崎哲久衆院議員(埼玉県選出)が12月5日に提示した座長案は、ダムに賛成する同党所属議員にも配慮したもので、八ッ場ダム建設の是非には踏み込んでいませんでした。分科会と同じく松崎議員が座長を務める国土交通部門会議には国土交通副大臣らも参加しており、国土交通部門会議としての意見には八ッ場ダム事業を是認する少数意見も盛り込まれた上で、最終的に前原誠司政調会長へ提出されました。
こうした中、八ッ場ダム建設に反対する同党議員有志らは、国土交通部門会議の意見書を不満として、独自に意見書を前原政調会長に提出しました。議員有志らによる意見書は、以下をクリックするとご覧になれます。
https://yamba-net.org/wp/doc/20111208_ikensho.pdf
国土交通部門会議で提出した意見書は、議員有志らの意見書と比較すると、八ッ場ダム建設に反対する趣旨やその論拠が曖昧ではありますが、前原政調会長はこの意見書で提示された疑問点について政府に回答を求めるとしており、意見書の内容は八ッ場ダムをめぐる政治状況の中で重要な意味を持つことになりました。
関連記事を転載します。
◆2011年12月7日 毎日新聞政治面
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111208k0000m010080000c.html
-八ッ場ダム:見直し議論大詰め 民主が国検証に疑問指摘ー
民主党政権下で始まった八ッ場(やんば)ダム(群馬県)建設の見直し議論が大詰めを迎えている。事業継続を再確認した国土交通省の検証作業は7日に終了。民主党側は国の検証に対し十数点に及ぶ疑問を指摘。党の結論は国交相時代に中止を打ち出した前原誠司政調会長に委ねられる見通しで、先行きは不透明だ。
国交省の有識者会議は7日、東日本大震災を踏まえダムの安全性を議論した。事務局は国内外の災害例を挙げ「一部が倒壊した台湾のダムを除き、地震で重力式コンクリートダムが決壊した例は確認されていない」と説明。前田武志国交相は「検証結果を踏まえ、政府の責任で結論を出す」と述べた。
民主党は同日、国土交通部門会議を開き、八ッ場ダム問題分科会の議論を踏まえ意見書を取りまとめた。複数の出席議員によると、意見の大半は「検証主体が国であるのはおかしい」「利水面で水需要予測が精査されていない」など検証の不十分さを指摘。一方「ここまで事業が進んでいるから継続すべきだ」との推進意見も併記され、継続か中止かの結論には踏み込んでいないという。
意見書は8日の政調役員会で了承されれば前原政調会長に提出。前原氏と前田氏の協議を経て年内に結論が出されるとみられる。【樋岡徹也、奥山はるな】
◆2011年12月8日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581112080001
-意見書の内容で亀裂 県連は独自要望ー
建設の是非を巡る八ツ場ダムの再検証が大詰めを迎えるなか、民主党が割れている。
党国土交通部門会議は7日、前原誠司政調会長あての意見書を8日に出すことを決めた。会議に出席した国会議員によると、「ダムを推進してきた国交省による検証はおかしい」「水需要が減っているのにダムをつくるのか」といった議員の声を項目羅列する形になった。ダム推進の意見も盛り込まれた。建設是非には踏み込んでいない。
これに対し、群馬県連と「八ツ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」の国会議員らが「(2009年の衆院選で)マニフェストに盛り込んで議席を得たのに『ダム反対』と書かないのは許されない」と反発する。
分科会とは別に8日、前原政調会長に直談判し、独自の意見書を提出する。「建設継続の容認は、支持者の失望と離反を招く自殺行為」と建設反対を求める。
八ツ場ダムは、前田武志国交相が、年内に最終判断する意向を示している。民主党では、党内の意見を国交相に伝えようと、国交部門会議に分科会を設けて協議を重ねてきた。座長の松崎哲久衆院議員は「是非は政調会長と相談し、国交相が決めること」と話している。(牛尾梓)
◆2011年12月8日 毎日新聞群馬版
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20111208ddlk10010100000c.html
-八ッ場ダム建設:民主意見書 県連「中止」申し入れ、きょう前原政調会長に /群馬ー
建設の是非を検証中の八ッ場ダムを巡り、民主党国交部門会議は7日、国土交通省関東地方整備局の「事業継続が妥当」とする方針に対し、検証作業の不備を指摘する意見書を取りまとめた。
しかし「中止」「継続」かの賛否に踏み込まなかったため、危機感を強める中止派の議員は前原誠司政調会長に8日、独自に中止を申し入れることを決めた。
意見書は、前日まで6回にわたり開催された八ッ場ダム問題分科会(松崎哲久座長)の内容を集約した。
複数の出席議員によると、意見書には16項目の意見が羅列され、14項目は「検証主体が国なのはおかしい」「水需要予測が精査されていない」など検証の不備を指摘する意見だった。一方、「ここまで事業が進んでいるのだから継続すべきだ」との推進意見も盛り込まれ、建設の是非に踏み込まなかった。
松崎座長は分科会の主な役割を検証スキームのチェックにあると位置づけてきたが、この日の国交部門会議では、同党の八ッ場ダム生活再建議連会長を務める川内博史衆院議員(鹿児島1区)などから「賛否を明言すべきだ」との意見が続出。
同議連と同党群馬県連は8日、前原政調会長に独自に中止を申し入れる。
「八ッ場ダム中止」は09年衆院選のマニフェストで掲げた同党の「1丁目1番地」の公約。宮崎岳志衆院議員(群馬1区)は意見書について「分科会の意見より(中止の色が)弱まっている」と批判。
三宅雪子衆院議員(比例北関東)は「検討主体である国交省が推進に偏っている」などと述べ、中島政希衆院議員(同)は「このままでは民主党が信頼を失ってしまう」と危機感を示した。【奥山はるな】