八ッ場ダムの「費用対効果」

2011年12月9日

 八ッ場ダムの検証作業を行った国交省関東地方整備局は、「八ッ場ダム建設継続が妥当」、つまりダム本体工事に着工するべき、との検証結果を本省に報告するに当たり、こうした結論を得た主な根拠として、八ッ場ダムの「効果」が「費用」の6.3倍であることを挙げました。
 この八ッ場ダム事業の「費用対効果」について、塩川鉄也衆院議員(共産)が提出した質問主意書と政府答弁書が衆議院のホームページに公開されました。

 ●八ッ場ダムの費用対効果に関する質問主意書と政府答弁書
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_shitsumon.htm
 質問番号56番の「質問」と「答弁」をクリックすると表示されます。

 上記の政府答弁書は、八ッ場ダムの「費用対効果」がいかにでたらめな数字であるかを物語るものでした。

 政府答弁書についての当会のコメントを掲載します。

 2011年11月17日に塩川鉄也衆議院議員が提出した「八ッ場ダムの費用対効果に関する質問主意書」に対して11月25日付けで内閣総理大臣から答弁書が送付されました。
 この答弁書で八ッ場ダムの費用対効果の根拠データである洪水被害想定額が全くの仮想のもので、その計算は根本的な矛盾を含むものであることがあらためて明らかになりました。そのポイントは次のとおりです。

1 洪水被害発生額の現実離れを自認

 答弁書は、「今回の計算では1年に1回の洪水から50年に1回までの洪水を想定した利根川の洪水被害発生額の年平均値が4,820億円であること、すなわち、利根川の八斗島下流の本川と江戸川の周辺で毎年平均で4,820億円の洪水被害が生じることになっていること、一方、水害統計による実際の洪水被害額は昭和36年から平成21年までの49年間の年平均で176億円であること」を明らかにしています。
 これらの数字によれば、想定被害額は実際の被害額の27倍にもなっているのであって、想定被害額がどれほど現実離れしたものであるかを答弁書は自ら語っていることになります。
 この凄まじい乖離に関して、答弁書は「実際の被害は、水防活動の状況、堤防内部の構成材料等の様々な要因が複雑に関連した結果生じるものであることから、想定被害額と実際の被害額は、単純に比較できるものではない」と答えるのみで、逃げの答弁に終始しています。

2 本川の破堤は実際はゼロであるのに年平均で4,820億円の被害想定

 答弁書では「昭和26年以降の最近60年間、利根川本川の八斗島下流部及び江戸川本川において破堤した場所はない。」と答えています。このことを改めて国が認めたことは重要です。本川の破堤がないということは、水害統計による洪水被害額は支川の氾濫や内水氾濫で起きたものであることを意味します。
 一方、八ッ場ダムの便益計算における氾濫想定被害額の計算は、利根川及び江戸川の本川の破堤が起きることを前提としています。ということは、本川の氾濫による被害額が60年間ゼロであるにもかかわらず、八ッ場ダムの便益計算では、上述のとおり、利根川の八斗島下流の本川と江戸川の周辺で毎年平均で4,820億円の洪水被害が発生しているとしているのです。実際はゼロであるものが年平均で4820億円に膨れ上がっているのですから、まことに常軌を逸した計算です。

3 1/30~1/40の治水安全度が達成されているのに、1/5洪水でも氾濫を想定

 答弁書では、「現在の整備水準では利根川の治水安全度はおおむね1/30~1/40と答えています。このことは、河川の流下能力についての国土交通省の考え方でも1/30~1/40より小さい洪水では氾濫が起きないことを意味します。ところが、八ッ場ダムの便益計算では、5年に1回レベルの洪水でも、2~3ブロックで破堤が起きて洪水被害が発生していることになっています。このような小規模の洪水でも破堤することは現実の利根川・江戸川では上記の治水安全度から見れば、起りえないことです。このように、八ッ場ダムの便益計算の洪水被害想定額は、国土交通省の考え方でも起こるはずがない破堤を前提とした、全くの仮想のものなのです。

 以上のように全く仮想の被害想定で八ッ場ダムの費用便益比が求められ、それが事業推進の判断材料になっていることは許されないことです。

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◆しんぶん赤旗 2011年11月29日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-11-29/2011112914_01_1.html

 -洪水被害 27倍水増し 八ツ場ダム報告書の想定額 塩川氏主意書 答弁書で判明ー

 八ツ場(やんば)ダム建設で得られる便益を国土交通省関東地方整備局が過大に想定しているとした日本共産党の塩川鉄也衆院議員の質問主意書にたいする答弁書が25日、内閣から送付されました。

 過大な想定を指摘されているのは、同整備局が10月に作成した同ダムの「検討報告書」です。報告書は、同ダムがある場合となかった場合の便益を比較し、建設継続が「妥当」と結論づけています。

 質問主意書が同ダムがなかった場合の洪水被害の想定額を質問したところ、答弁書は毎年約4820億円と回答しています。

 一方で、答弁書は1961年からの49年に利根川水系で起きた洪水被害額は、約8642億円(年平均176億円)と回答。実際に起きた被害を27倍も水増しした被害想定であることがわかりました。

 また報告書は、利根川や江戸川の本川が破堤した想定となっています。しかし答弁書は「最近60年間、本川において破堤した箇所はない」と認めており、ここでも実態とかけ離れていました。

 質問主意書では、利根川の治水安全度も質問。これに答弁書は30年から40年に1度の大雨に対応できると答えています。ところが報告書の想定では、5年に1回規模の大雨でも洪水被害が起きることになっていました。

 答弁書を受けて、塩川議員は「過大な洪水被害額や架空の破堤を前提にした八ツ場ダム建設事業の問題点が浮き彫りになった。国は建設を中止し、建設予定地域の再建に全力をあげるべきだ」とのべています。