2011年12月29日
12月に入ってからの八ッ場ダムをめぐる国交省と民主党との対立は、八ッ場ダム本体工事費の来年度予算計上が焦点となっていました。
国土交通省としては、財務省が来年度の予算案を公表する前に、「八ッ場ダム建設再開」を表明し、本体工事費を来年度予算に計上することが悲願でした。本体着工という既成事実をつくれば、もう後戻りできない、という印象を国民に与えることになり、天下りなどの利権構造を温存できると考えているのでしょう。
このため、民主党の反対を押し切る強引な手法で12月22日に前田国交大臣が「八ッ場ダム建設再開」を表明しました。23日の政府・民主三役会議でも前原政調会長ら党側は抵抗しましたが、結局、政府は民主党を押し切る形で「八ッ場ダム建設再開」を決定しました。
あくる24日は、財務省の来年度予算案発表の日でしたから、ギリギリのタイミングで国交省は「八ッ場ダム建設再開」を押し込んだといえます。
財務省のホームページには来年度の予算案のデータがアップされています。↓
http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2012/seifuan24/index.htm
「平成24年度予算政府案」
八ッ場ダムの来年度予算については、「国土交通省・公共事業関係予算という項目をクリックすると、10ページ目に載っています。
http://p.tl/pgQT
「八ッ場ダムについては、生活再建対策事業(事業費117億円うち国費49億円)、本体工事の準備に必要な関連工事等(事業費18億円うち国費7億円)を計上(合計:事業費135億円うち国費56億円)
今年度の八ッ場ダム事業費は約153億円でした。
前田国交大臣は予定通り、来年度に八ッ場ダムの本体工事に着手するとしていますが、予算の内容を見る限り、実質的な本体工事は順調に事業が進められたとしても、まだ先になりそうです。
なお、ダム事業全体の予算を今年度と比較すると、次のようになります。
平成23年度と比較すると、下記のとおり、国費だけでは298億円減、比率では22%減です。
国費以外の利水者負担金等も含めた平成24年度予算は不明ですが、平成23年度は2478億円です。
削減率が国費と同じと仮定すれば、平成24年度のダム予算の総額は1944億円になります。
《来年度と今年度のダム予算》
○平成24年度
予算の概要(平成23年12月24日)のダム建設 国費 1084億円
http://www.mlit.go.jp/common/000186708.pdf 3ページ
○平成23年度
予算の概要(平成23年1月20日)のダム建設 国費 1382億円
http://www.mlit.go.jp/common/000133654.pdf 2ページ
○平成23年度
当初配分(平成23年4月1日)の ダム総事業費 2478億円(利水者負担金等も含む)
http://www.mlit.go.jp/common/000140194.pdf 2ページ
関連記事を転載します。
◆2011年12月25日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20111224-OYT8T01043.htm
-八ッ場、工事用道路など18億円 政府予算案ー
2012年度の政府予算案が24日、臨時閣議で決まり、八ッ場ダム本体工事に事業費18億円(うち国費7億円)が計上された。国によると、来年度はまだダムそのものの工事には着手できず、作業ヤードの造成や工事用道路の整備などに使われるという。
道路や線路の付け替え工事など生活再建対策事業には、事業費116億7800万円(うち国費48億9900万円)が計上された。「生活再建対策事業が完成に近付き、要求額自体が減ったため」(財務省)、本体工事分を合わせても、来年度は134億7800万円で今年度より18億600万円減る。
また、調査段階の利根川上流ダム群再編には今年度より200万円少ない5100万円が計上された。
前田国交相は閣議後の記者会見で、「予算化された事業を執行するのは国交相の責任」と述べ、改めて来年度中に本体工事に着手する考えを示した。