2012年1月9日
昨年12月22日、前田国交大臣が八ッ場ダム本体工事を再開するとの判断を公表しましたが、一週間後の29日になって野田首相が八ッ場ダム本体工事の予算執行には、官房長官裁定で示した二条件をクリアする必要があると言明しました。
官房長官裁定については、こちらに解説を載せています。
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=1506
八ッ場ダムの本体工事は、これからどうなるのでしょうか。 八ッ場ダムの推進者らは、前田大臣が強気の姿勢なので、二条件をクリアするのには時間がかからないとみているようです。
12月27日の前田大臣の会見要旨を読むと、前田大臣は「良心において」八ッ場ダム再開を決定したそうです。年が明けて1月6日の大臣会見を伝える記事によれば、前田大臣は早期に二条件をクリアすることに自信があるようです。
八ッ場ダムを推進する群馬県知事や地元町長らは、前田大臣が22日にわざわざ直接現地に赴いて報告したことをもって、八ッ場ダム本体の早期着工に疑いを抱いていないようです。国交省と一体化しているこれらの首長の言動から、22日の前田大臣の現地入りが「八ッ場ダム本体着工」の既成事実作りのために強行されたことが見て取れます。
おそらく、二条件(「利根川の河川整備計画の策定」と「ダム中止後の生活再建支援法の国会提出を目指すこと」)ともに、流域住民やダムに批判的な識者を排除して国交省主導でやればわけなくクリアできると考えているのでしょう。
河川行政が良心に基づいて行われてきたのなら、これほど多くの流域住民、国民の怒りを買うことはなかったでしょう。自己中心的な「良心」と「自信」で河川行政を私物化している組織の保身に手を貸す大臣は、官僚組織と一体化した思考しかできなくなっているのでしょう。
関連記事を転載します。
◆2012年1月7日 上毛新聞一面
-早期に河川整備計画 八ッ場予算執行で国交相-
八ッ場問題で、野田佳彦首相がダム工事費の予算執行には利根川水系の河川整備計画策定などが前提条件となるとの認識を示したことに対し、前田武志国土交通相は6日の記者会見で「今回初めてやるわけではなく、積み重ねが随分ある」と述べ、早期に整備計画を策定し、予算執行を目指していく考えを示した。
ダム建設継続が最終判断される際、藤村修官房長官は民主党の前原誠司政調会長と前田氏に対し、1河川整備計画の策定 2ダム事業が中止された地域に対する生活再建支援法案の国会提出ーの2条件を踏まえるよう裁定した。
前田氏は会見で、2009年の政権交代で作業を中断していた整備計画を基に計画策定を急ぐ意向を示したほか、生活再建支援法案についても「次期通常国会に提出する準備を進めている」と述べた。2条件実現の判断や予算執行の次期については「最終的には担務の閣僚が決める」と自身が見極める意向を強調した。
また、大沢正明知事は6日の定例会見で「(前田氏は条件を)織り込み済みだろう。クリアできるからこそ地元まで来て謝罪し、本体着工の予算化を報告した。相当の覚悟がなければできないはずだ」と述べ、予算執行に影響は与えないとの認識を示した。
◆2012年1月7日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581201070001
-「官房長官裁定、予算執行の条件」ー
八ツ場ダムの本体工事費について、前田武志国土交通相は6日、建設再開表明前に藤村修官房長官が示した裁定が、予算執行の条件になるとの見解を示した。
裁定は、利根川水系の河川整備計画を策定し、基準点(伊勢崎市八斗島)での「河川整備計画相当目標量」の検証▽建設中止の判断があったことを踏まえ、生活再建法案の次期通常国会への提出を目指す――の2項目。
国交相は、河川整備計画について「『スピードアップしろ』と指示してある。有識者の話も聞く」と発言。生活再建法案も、昨年末に省内に検討する態勢を整えたとした上で「通常国会に法案を提出する準備を進めている」と述べた。
裁定をめぐっては、野田佳彦首相が12月29日に裁定が予算執行の前提になるとの考えを表明。地元の推進派の間には、工事の遅れを心配する声がある。
だが、大沢正明知事は6日の会見で「前田大臣は、しっかり受け止めた上で本体着工を表明し、予算を組み入れた。相当な覚悟があるはずだ」と現状では問題視しない考えを示した。
◆2012年1月7日 毎日新聞群馬版
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20120107ddlk10010132000c.html
-八ッ場ダム建設:知事「2条件は予算執行妨げない」 /群馬ー
建設再開が決まった八ッ場ダムの予算執行を巡り、野田佳彦首相が昨年末、(1)利根川水系の河川整備計画の策定(2)生活再建支援法案の国会提出--の官房長官裁定の2条件が前提との考えを示したことについて、 大沢正明知事は6日、定例の記者会見で「前田武志国土交通相はこの問題をクリアできる確信があるからこそ地元に来た。織り込み済みだろう」と述べ、予算執行を妨げないとの認識を示した。【鳥井真平】
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上記記事のもとになった1月6日の前田大臣会見要旨が国交省ホームページに掲載されています。↓
http://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin120106.html