八ッ場ダム建設事業における官房長官裁定に関する質問主意書

 中島政希衆議院議員が2月16日に「八ッ場ダム建設事業における藤村修内閣官房長官裁定に関する質問主意書」を提出しました。
 それに対する政府答弁書が公表されました。政府答弁書は相変わらず、はぐらかす答えですが、矛盾も露呈しています。
 八ッ場ダムの本体工事着工に当たっては、昨年12月に藤村官房長官が提示した二条件(「利根川の河川整備計画策定」と「ダム中止後の生活再建支援法の国会提出」)をクリアする必要があるというのが政府の見解です。しかし、昨年12月22日に前田大臣が関係都県知事や地元の町長に「八ッ場ダムの建設再開」を伝えた時、この二条件については触れませんでした。このことを今回の質問主意書の質問5に対する政府答弁書は認めています。
 質問主意書と政府答弁書、コメントを整理したものを掲載します。

「八ッ場ダム建設事業における藤村修内閣官房長官裁定に関する質問主意書と政府答弁書及びそのコメント」                   (2012年2月16日、24日)

 一 藤村修内閣官房長官の裁定について

 【質問】
 平成二十三年十二月二十二日、藤村修内閣官房長官は八ツ場ダム本体工事費の予算案計上について、次の裁定を前田武志国土交通大臣と前原誠司民主党政策調査会長に示した。①「現在作業中の利根川水系に関わる「河川整備計画」を早急に策定し、これに基づき基準点(八斗島)における「河川整備計画相当目標量」を検証する。」、②「ダム検証によって建設中止の判断があったことを踏まえ、ダム建設予定だった地域に対する生活再建の法律を、川辺川ダム建設予定地を一つのモデルとしてとりまとめ、次期通常国会への提出を目指す。」、③「八ツ場ダム本体工事については、上記の二点を踏まえ、判断する。」 裁定の内容がこのとおりでよいか確認されたい。

 【答弁】
 平成二十三年十二月二十二日に藤村内閣官房長官が、八ッ場ダム建設事業に係る予算を平成二十四年度予算に計上するに先立ち、前田国土交通大臣及び前原民主党政策調査会長に示した裁定(以下「官房長官裁定」という。)の内容については、御指摘の「現在作業中の利根川水系に関わる「河川整備計画」を早急に策定し、これに基づき基準点(八斗島)における「河川整備計画相当目標量」を検証する。」、「ダム検証によって建設中止の判断があったことを踏まえ、ダム建設予定だった地域に対する生活再建の法律を、川辺川ダム建設予定地を一つのモデルとしてとりまとめ、次期通常国会への提出を目指す。」、「八ッ場ダム本体工事については、上記の二点を踏まえ、判断する。」の記述と相違はない。

 二 政府予算案決定前の前田武志国土交通大臣の対外的な報告について

 【質問】
 この裁定を字義のとおりに受け取れば、本体工事費の予算案計上は①と②の二条件をクリアすることが必要であり、平成二十三年十二月二十四日に決定された政府予算案に本体工事費が計上されることはなかったと考える。ところが、前田武志国土交通大臣は同年十二月二十二日の夜、八ツ場ダム建設予定地を訪れて、政府予算案決定前であるにもかかわらず、群馬県知事や地元町長等に「八ツ場ダム続行を決定した」と報告した。政府予算案が未決定の段階で決定したとの報告を対外的に行ったのは国土交通大臣としての権限を逸脱したものと考えるが、政府の見解を示されたい。

 【答弁】
 平成二十二年度に開始した全国のダム事業の検証における国土交通省の対応方針として、八ッ場ダム建設事業については、前田国土交通大臣が、平成二十三年十二月二十日に「継続」するとの対応方針を決定し、同日、その旨を群馬県長野原町長等へ伝えたところである。

 【答弁へのコメント】
 質問主意書は、政府予算案の決定前であるにもかかわらず、本体工事費の予算案計上を対外的に報告したことを国交大臣の越権行為であることとして問題視しているにもかかわらず、政府答弁書は言葉をすり替えて、国交大臣は22日に国土交通省の八ッ場ダムの対応方針を伝えに行ったと答えている。「本体工事費の予算案計上」と「対応方針の決定」はイコールのものであるにかかわらず、「本体工事費の予算案計上」には触れないように答えている。
 予算案決定前の本体工事費計上を対外的に報告したことが国交大臣の越権行為であることが明らかであるから、まともに答えることができないのである。

 三 前田武志国土交通大臣の裁定の解釈について

 【質問】
 前田武志国土交通大臣は、上述のとおり、平成二十三年十二月二十二日の夜に八ツ場ダム建設予定地を訪れて報告するにあたって、藤村修内閣官房長官の裁定をどのように解釈したか説明されたい。

 【答弁】
 前田国土交通大臣は、官房長官裁定に示された、「一.現在作業中の利根川水系に関わる「河川整備計画」を早急に策定し、これに基づき基準点(八斗島)における「河川整備計画相当目標量」を検証する。」、「二.ダム検証によって建設中止の判断があったことを踏まえ、ダム建設予定だった地域に対する生活再建の法律を、川辺川ダム建設予定地を一つのモデルとしてとりまとめ、次期通常国会への提出を目指す。」、「三.八ッ場ダム本体工事については、上記の二点を踏まえ、判断する。」について、適切に対応することとしている。

 【答弁書へのコメント】
 答弁書は「適正に対応することとしている。」としているだけで、内容のない答弁に終始している。

 四 本体工事予算の執行の条件について

 【質問】
 報道によると、平成二十三年十二月二十九日に野田佳彦首相が民主党の「税制調査会・社会保障と税の一体改革調査会合同総会」で、八ツ場ダム本体工事予算について藤村修内閣官房長官裁定の「条件をクリアしてから予算を執行する。」と述べ、本体工事の予算執行は裁定の二条件を完了することが必要であるとの見解を示した。それを受けて、前田武志国土交通大臣は平成二十四年一月六日の記者会見で、「(問)その二項目が成立した段階で、予算を執行するということですか。(答)そういうことになります。そういう裁定が示されたわけですから。」(前田大臣会見要旨)と述べている。以上の経過について相違はないか。

 【答弁】
 御指摘の「報道」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、平成二十三年十二月三十日付けの東京新聞の朝刊において、八ッ場ダム建設事業に係る予算執行に関する報道があったことは承知している。
 また、御指摘の「(問)その二項目が成立した段階で予算を執行するということですか。(答)そういうことになります。そういう裁定が示されたわけですから。」との記述については、平成二十四年一月六日の記者会見における前田国土交通大臣と記者とのやり取りの一部と相違はない。
 なお、当該記者会見において、記者の「予算執行の前提は、河川整備計画の策定が前提になるのか、それとも、計画をスピードアップさせつつ、予算執行もしていくということになるのでしょうか、お考えをお願いします。」という趣旨の質問に対し、同大臣は、「最終的には、担務の大臣がこの二つの示された官房長官の裁定をきちんと対応できているかどうかを判断して、ということになるかと思います。」と答えた。

 【答弁書へのコメント】
 答弁書は、官房長官裁定の二条件がクリアされないと、本体工事予算を執行できないことを認めている。

 五 前田武志国土交通大臣の発言について

 【質問】
 1 前田武志国土交通大臣は、平成二十三年十二月二十二日に八ツ場ダム建設予定地で群馬県知事等へ報告した時に、本体工事の予算執行は平成二十四年一月六日の記者会見で認めた「官房長官裁定の二項目のクリアが条件である。」ことについて説明したか。

 【答弁】
 政府としては、前田国土交通大臣が、平成二十三年十二月二十二日に群馬県長野原町長等を始めとする地元の方々に対し、八ッ場ダム建設事業について「継続」するとの対応方針を決定したこと及びそれまでの経緯に関するおわびの心情を伝えた際に、同大臣は、「官房長官裁定の二項目のクリアが条件である。」との説明は行っていないものと承知している。

 【答弁書へのコメント】
 答弁書は「官房長官裁定の二項目をクリアすることが条件である」ことを群馬県知事等に伝えなかったことを認めている。本体工事予算をそのまま執行できるという誤った情報を対外的に伝えた国交大臣の責任は重大である。

 五の2 

 【質問】
 1について、説明をしていない場合は、裁定の二条件のクリアは本体工事の予算執行の根幹に関わることであり、国土交通大臣として群馬県知事等に対して改めてこのことを伝えなければならないと考えるが、政府の見解を示されたい。

 【答弁】
 八ッ場ダム建設事業については、官房長官宮裁定を踏まえ、国土交通大臣が適切に対処することとしている。

 【答弁書へのコメント】
 答弁書は「適正に対処することとしている。」と述べるのみで、質問に答えていない。国交大臣は、本体工事予算をそのまま執行できるという誤った情報を群馬県知事等に伝えたのであるから、群馬県知事等に対してあらためて「官房長官裁定の二条件がクリアされるまで、本体工事の予算を執行できないこと」を伝える責任がある。その責任を回避することは政府への信頼を損なわせるものである。