八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

前田国交大臣の問責可決

 前田大臣の問責決議が参議院で可決されました。
 八ッ場ダムをはじめとする大型公共事業の復活に関して、前田大臣は自民党にとっては都合のよい大臣でしたが、政局の中で問責の対象とされることになりました。
 前田大臣は八ッ場ダム問題に関して官僚のつくったレールをひた走り、昨年暮れ、八ッ場ダム中止という国民の多くが支持していた政策を取り下げました。その手法があまりに強引で、国民はおろか、民主党に対してすら説明責任を果たさなかったことから、八ッ場ダムに反対する民主党の議員らからは、責任を追及する声も上がりました。本来であれば、この時に批判の矢面に立つべきでしたが、官僚出身のそつのなさでこれまで切り抜けてきました。
 八ッ場ダム再開決定に至る道筋では、いずれも建設省河川局出身の脇雅史参院議員と前田大臣が緊密に連絡を取り合ったことはよく知られていますが、今回の問責決議では、自民党国対委員長の脇議員が前田大臣を追い詰める立場でした。 
 この問責決議については、主に自民党寄りの新聞が多くの記事を配信しています。地元群馬からは相変わらず、知事、町長らがダムの早期完成を願うという声が紹介されています。

◆2012年4月19日 産経新聞群馬版
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120419-00000032-san-l10

 ー国交相の続投支持ー

 大沢正明知事は18日の記者会見で、市長選告示前に特定候補の支援を依頼した前田武志国土交通相の進退問題について、「前田国交相には八ツ場ダム問題に真摯(しんし)に取り組んでいただき、信頼している。継続してやってほしい」と述べ、続投を支持した。

 また、八ツ場ダム建設事業への影響について、「野田佳彦首相も判断されたことなので、(建設は)揺るがないと思っている」と述べた。

◆2012年4月21日 上毛新聞

 ー前田国交相ら問責決議 八ッ場遅れ懸念 地元に続投望む声ー

 参院は20日の本会議で、自民党などが提出した前田武志国土交通相と田中直紀防衛相に対する問責決議を野党の賛成多数で可決した。野田佳彦首相は2人の更迭を拒否する構えだが、自民党は審議拒否の方針で、多くの法案の審議停滞は避けられない。八ッ場ダム(長野原町)の事業再開条件の一つ、ダム中止地域の生活再建支援新法の成立が遅れれば、ダム本体工事に入る時期がずれ込む可能性もある。昨年12月に八ッ場ダム建設再開を表明した前田氏に対し、地元からは「続投」を、ダム建設見直し派からは「大臣交代」を望む声が上がっている。
 決議に法的拘束力はないが、首相に近い党幹部は消費税増税関連法案審議への影響を懸念して早期交代を求めており、首相は大型連休明けの5月上旬にも2人の進退について最終判断をする意向を固めた。
 自民党は2人の辞任を求め衆参両院で審議拒否を続けた。政府、民主党は欠席戦術に世論の理解は得られないとみて、増税法案の月内審議入りは譲らない姿勢。前田、田中両氏は続投の意向を強調している。
 長野原町の高山欣也町長は「前田大臣は地元に本当に良くしてくれた。住民はみな同じ感情を持っている。だが、問責決議が可決されて、続投するのは難しい」と懸念。ダム本体工事の影響については「間違いなく遅れる」と述べた。
 一方で、ダム建設見直し派の水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之共同代表は「前田大臣は八ッ場ダム建設にゴーサインを出した人。『コンクリートから人へ』の公約を守る人が大臣になるべきだ」と指摘。一方で「民主党政権が倒れても困る。非常に厳しい状況だ」と複雑な思いを口にした。
 決議案は自民党とみんなの党、新党改革が提出。本会議では公明、共産、社民、たちあがれ日本の各党も賛成した。野党は首相の任命責任を追及する。
 前田氏の問責理由は岐阜県下呂市長選告示前に特定候補の支援を要請したとされる問題が公選法で禁じられた事前運動や公務員の地位利用に触れ、「刑事罰を問われかねない」と指摘。田中氏については防衛政策の知識欠如に加え、北朝鮮ミサイル発射時に発表が遅れた責任があるとした。
 前田氏の問責決議の投票結果は賛成131、反対107、田中氏の方は賛成132、反対107だった。

◆2012年4月21日 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120421/stt12042100380000-n1.htm

 ー田中氏にはヤジと失笑 前田氏は「自民の功労者…」に苦虫ー

 公職選挙法違反疑惑に揺れた前田武志国土交通相と、素人答弁で物議を醸した田中直紀防衛相に20日、参院の問責決議が突きつけられた。事前運動とみられる応援文書が郵送された岐阜県下呂市では「選挙違反の町という悪いイメージがついた」と落胆。北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射に脅かされた沖縄県宮古島市では「辞めろ」コールがわき起こった。

■前田国交相

「あなたは民主党の公共事業の考え方を大幅に変えた功労者だ」。前田武志国交相の問責を発議する自民党の伊達忠一議員の演説は、奇妙なほめ言葉で始まった。

 前田氏は、民主党が掲げた「コンクリートから人へ」のスローガンに反し、群馬県長野原町の八ツ場(やんば)ダム工事再開にかじを切った。再開を求めてきた自民党関係者の反応は複雑だ。「地元の事情をよく理解してくれた大臣だったので残念」。自民党群馬県連の幹部からは同情の声も漏れる。

 国交省では「民主党政権の大臣でもっとも常識的」と評価は高い。「辞めないと審議が進まないし、辞めれば今度はどんな大臣が来るのか」と、ある幹部が不安を口にするほどだ。

 尖閣諸島の緊迫感が増す中、海上警察権の強化を盛り込んだ海上保安庁法の早期改正への期待は大きく、職員からは「大臣が代わればまた最初から説明しないと」とため息が漏れた。

◆2012年4月21日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20120421-OYT8T00099.htm

 ー八ッ場ダム地元「痛手」 国交相問責、交代可能性もー

 八ッ場ダム建設再開を決断した前田国土交通相に対する問責決議が20日、参院で、自民党など野党の賛成多数によって可決された。岐阜県下呂市長選で特定の立候補予定者への支援を要請する文書に署名した行為をとがめられた。野田首相は続投させる意向を示しているが、交代に追い込まれる可能性も取りざたされており、地元からは不安視する声が上がった。

 「弱った。地元にとっては痛手だ」

 問責決議可決の一報に、ダムの地元・長野原町の高山欣也町長は肩を落とした。政権交代直後、前原国交相(当時)が示した中止方針を撤回した前田氏を「民主党の中の偉人」と評価する高山町長。「『撤回の撤回』はないと思うが、ダム本体の建設と生活再建がまた遅れるのでは……」と懸念を示し、ダム推進の立場を取る自民党に「解散に追いやりたいのだろうが、今回だけは大目に見てほしかった」と不満を漏らした。

 八ッ場ダム水没5地区連合対策委員長の萩原昭朗さん(80)も「前原さんに近い人物が国交相になると、また難しいことになるのではないか」と不安そうに話したが、川原湯温泉で老舗旅館「山木館」を営む樋田洋二さん(65)は「もし代われば国交相は(政権交代後)5人目で、『またか』という感じ。もう飽き飽きだ」と突き放した。

 大沢知事は出張先の新潟市で記者団に「続投していただきたい。(前田氏は)群馬県の社会資本整備に真剣に取り組んでくれており、ダム建設も連携して最後の仕上げができると思う」と語った。

 一方、ダム建設に反対してきた民主党の県関係衆院議員は、問責はダム問題には影響がないと見ている。

 宮崎岳志氏(群馬1区)は「消費税率引き上げ関連法案などの審議を邪魔するための自民党の時間稼ぎ。国交相が代わっても、政権の方針は変わらないだろう」と指摘し、三宅雪子氏(比例北関東)は「ダム問題と結びつけられるが、政治家としての法律違反の問題。公選法違反と思うなら辞めればいいし、思わないなら辞めなくていい」と語った。

◆2012年4月21日 産経新聞群馬版 
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120421/gnm12042102090004-n1.htm

 ー問責可決、2閣僚辞任要求相次ぐ 八ツ場地元は不安視 群馬ー

 前田武志国土交通相と田中直紀防衛相の問責決議が参院本会議で可決された20日、県内の政党幹部からは2閣僚の辞任を求める声が相次いだ。

 このうち、前田氏は昨年12月、八ツ場ダム(長野原町)の建設再開を決めている。このため、地元からは「建設再開の判断はありがたかっただけに残念だ。もしまた国交相が替わればどうなるか分からない」(長野原町の高山欣也町長)など、ダム事業への影響を不安視する声も上がった。

 仮に国交相が交代することになれば、地元は野田政権に対し、政策の継続性を厳しく求めることになりそうだ。

 2閣僚の問責可決について、民主党県連会長の桑原功衆院議員は「大臣が公職選挙法に違反したのなら、辞任は当然だ」と前田氏の辞任を求めた。しかし、防衛政策で失言が続いた田中氏については「問責に当たるほどの失政はない」と続投を容認した。

 これに対し、自民党県連幹事長の須藤昭男県議は「前田氏の行為はあまりに軽率で、田中氏は防衛相としての資質を欠く」と2閣僚の辞任を強く求めた。

 公明党県本部代表の加藤修一参院議員は「問責決議案可決は当然だ」と発言。共産党県委員会の小菅啓司委員長も「2人とも辞任すべきだ」と述べた。