八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

昨日の国交省有識者会議のお粗末

2012年4月27日

 昨日、国交省の「今後の治水のあり方に関する有識者会議」が開かれ、石木ダム(長﨑)、安威川ダム(大阪)、内ケ谷ダム(岐阜)、タイ原ダム(沖縄)について審議されました。
 http://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo03_hh_000498.html

 国交省のホームページに掲載された昨日の会議の配布資料
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/tisuinoarikata/dai22kai/index.html 

 この会議は、前回2月22日、ダム予定地の住民らが何十年も反対し続けている石木ダム等の審議を行おうとしたのですが、長崎から霞ヶ関に駆けつけた地権者や支援者の傍聴を認めずに流会しました。

 昨日、再び同じ4ダムを審議する会議が開かれたのですが、国交省は長崎の地元住民や市民らの傍聴を拒否するために、100名以上の職員を動員しました。今回は二日前に会議の開催が記者発表されたものの、どのダムを審議するかは事前に公表されませんでした。科学的検証に耐えるレベルに達していないがゆえの措置とはいえ、国交省の「治水のあり方に関する有識者会議」は、会議の持ち方そのものが常軌を逸しています。

 これはむろん、学者らが行政におもねった結果です。有識者と呼ぶのも恥ずかしいような「有識者」会議の御用委員らは、学者としての道義心を失っていると言わざるをえません。わずかに鈴木雅一東大教授(森林科学)が時おり学者としての良心を見せてくれるだけです。

 (クリックすると会議の委員名簿が拡大表示されます。)
     

 こうした事態を報道しない国交省記者クラブも御用学者と同様、利権構造の維持に加担しています。この社会は情報があふれているようでいて、本当に大切なこと、社会に重大な影響を及ぼすことは殆どマスコミでは報道されません。

 そうした中、ダム問題を長年追ってきたフリージャーナリストのまさのあつこさんが、有識者会議の公開を求めて果敢に情報発信してきたのですが、昨日、有識者会議の中川座長がまさのさん宛てに恫喝ともとれる文書を送っていたことが明らかになりました。

 (クリックすると中川座長の手紙が拡大表示されます。)
     

 有識者会議に対しては、これまで同会議のあり方に疑問を投げかけてきた「ダム検証のあり方を問う科学者の会」が130名以上の科学者の連名で公開討論会を要請し、公開質問状も送っています。けれども有識者会議の対応は、公開討論会については国交省を通じて否定する見解を伝え、公開質問状には既に一ヶ月以上経過しているにもかかわらず、だんまりを決め込んでいるというお粗末さです。

 まさのあつこさんによる昨日から今朝にかけてのツイートをまとめて転載します。
 https://twitter.com/#!/masanoatsuko

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 そして私は会議室に着くなり、座長の中川博次京都大学名誉教授に手紙を頂き。2月22日の流会した会議で『貴殿は、報道者以外の者を会議室内に引き入れようとし、また、それらの者が入室後には、一緒になって不規則発言をするなど、会議の混乱を助長する行為を行いました。

 このような行為は、本会議について、情報公開と円滑な議事運営の確保のため、報道関係者に限り傍聴をか可としている趣旨に著しく反するものであり、大変遺憾であります。

 再度、同様の行為があった場合には、直ちに、退席して頂きます。また、今後、傍聴の登録を認めない場合もございます。以上、ご承知置き願います。』と中川博次京都大学名誉教授。

 受け付けの官僚に渡され、直筆署名はなかったのて、会議終了を待って、『中川座長、お手紙を有難うございます。ご自身でかかれましたか?官僚に書いてもらって了承しただけですか?』とタイムリーなブラックジョークで質問してみた。

 『自分で書いた』と中川座長が認めたので、『では、お返事申し上げます。』と告げた。さあ、貴方ならなんと返事する?

 傍聴者をブロックする職員を150人ぐらい配置していてそれを越えなければ会議が開けないことに違和感があると。

 長崎県からわざわざ3人も傍聴を求めて来たのに、国交官僚にエレベーター前でブロックされ、階段を歩いて11階会議室の階まで来て、さらに何重ものゾンビ官僚に阻まれて、会議室にすら近づけなかった。洪水対策の会議なのに、住民を排除してどうする?

 There are times when I do not want to be a japanese. Today was certainly one of them.
(今日は日本人でいるのがつくづくいやになっちゃった)ー「八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会」訳

 昨日、議題となった4ダムの事業者(岐阜、大阪、長崎、沖縄)から上がってきた検証結果のうち、長崎県の『石木ダムには、地域の同意が得られよう希望すると』、今後の治水のあり方に関する有識者は結論した。会議終了直後、ぶら下がり取材しようとする記者全員を留め置く軟禁状態のオマケ付きだった。

 『石木ダムには、地域の同意が得られよう希望する』という意見は単純なお墨付きよりましだが、「これは中間とりまとめの考え方に沿った検証になっていない」(受け取るに値しない)という1人の委員の厳しい意見をよってたかって曲げた結論でした。

 鈴木雅一東京大学教授『この会議の目的は、新しいよい治水計画を議論したいとうことだったと思う。あんなに人垣があって入れない、この議論が開かれていない、こもったところで議論しなければならない。前回と今回の間で、事務局なのか、私どもが、どこかで舵を切り間違えたのではないか』

 記事の書き出しが決まり。傍聴できなかった人々に中川座長からのお手紙を共有。お返事を書くためのメモをつぶやいておく。座長の手紙には2月22日「一緒になって不規則発言」をしたとあるが私の発言は二つ。

 会議がまったく始まっていないときに、1)「傍聴させないのは平成11年の審議会等に関する整理統合化に関する基本計画という閣議決定違反ですよ」との趣旨で奥田健副大臣の背中に向けた発言と、
 
 ここで仕事しなくてどうするよ、副大臣!と思い、事態を収拾するために極めて理性的かつ根拠のある発言を考えに考えてひねり出したのですが、 これを「不規則発言」ととらえて、こんな手紙を国交官僚経由で手渡してきた。

 そもそも、公開を求められている「座長こそ」が立ち上がって、たとえ非公開にするにしても、礼節に、傍聴者に対し、丁寧に説明をすればなかったこと。と遠吠えをしていても仕方がないので記事を書く。

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 結論を伝える今朝の新聞記事を転載します。
 ダム事業の見直しを目指したはずの民主党政権は、河川行政が後退を重ねる状況を放置するのでしょうか。

 ◆2012年4月27日 長崎新聞
http://www.nagasaki-np.co.jp/kiji/20120427/04.shtml

 ー国が石木ダム「継続」了承ー

 県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を再検証する国の有識者会議が26日、国土交通省であり、県が「事業継続」として提出した報告書について「地域の理解獲得に努力するよう希望する」との意見付きで了承した。この結果、国が最終的に事業継続を認める公算が大きくなった。

 県や同市など関係4自治体はコスト面などでダム建設が代替案より「優位」と結論付け、昨年7月、事業継続の方針を国に報告。その後、大学教授ら9人でつくる有識者会議が2月に県などの方針を協議する予定だったが、会議の傍聴を求める反対地権者らの激しい抗議で流会していた。

 今回もマスコミにだけ傍聴を認めて開催。一部委員からは、根強い反対地権者がいることや、2016年度を完成目標とする事業計画の実現性を疑問視する意見も出たが、座長の中川博次京都大名誉教授が「地域の方々から理解が得られるよう努力を続けてほしい」と取りまとめ、最終的に継続を了承した。同会議の判断を受け、前田武志国土交通相が近く最終決定する。

 会議開始前には「石木ダム建設絶対反対同盟」の岩下和雄さん(65)ら地権者や支援者数人が傍聴を求めたが、会場までの通路で多数の職員に進入を阻まれた。

 同会議の結論を受け、中村法道知事は長崎新聞社の取材に「県の立場が認められ、ありがたい。これを機に次のステップに進み、地権者の皆さんの同意を得る努力を続けたい」と述べ、住民の反対運動で中断したままの付け替え道路工事の再開に意欲をにじませた。

◆2012年4月28日 毎日新聞長崎版
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120428-00000178-mailo-l42

 ー石木ダム:再検証 意見付き事業継続 地権者、徹底抗戦の構え?? 国土交通省の有識者会議 /長崎ー

 県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダム建設事業の再検証をする国土交通省の有識者会議(座長、中川博次・京大名誉教授、9人)が26日あり、「地域の理解を得られるよう努力してほしい」と意見付きながら事業継続を「了承」と判断した。

 近く、前田武志国交相が最終決定する見通し。佐世保市などは評価しているが、反対する地権者らの反発は更に強まりそうだ。

 会議では脱ダムに転換した国の要請を受け、県が複数の代替案より事業計画が優れるとして昨年7月に「事業継続」として提出した報告書について審議。

 16年度を完成目標とする計画や反対地権者の反発についての疑問も出たが、地権者に理解を得る努力を続けるように座長が付言し、了承した。

 有識者会議の了承について、佐世保市の朝長則男市長は「最終的な判断の前であるが、一歩前進であり、一定の評価をしたい。反対する方々には理解を得る努力を続けたい」と語った。

 一方、事業に反対する地権者らは徹底抗戦の構えを強める。26日の会議には約10人の地権者らが向かい、傍聴を求めたが非公開。地権者の抗議で2月に流会した経緯があり、会場前は約100人の職員らでバリケードされ、入場を阻まれた。

 地権者の岩下和雄さん(65)は「一方的な国のやり方はひどい。事業を絶対に阻止する」と不満を爆発させた。

 事業に反対する市民団体「石木川まもり隊」の松本美智恵代表(60)は「民主党政権発足当初の『脱ダム』はどこにいったのか。会議も是認機関。本当に悔しい結果だ」と憤っていた。【柳瀬成一郎】

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 石木ダムについての情報
 http://blog.goo.ne.jp/hotaru392011
 石木川まもり隊(長崎県佐世保市)