八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

東京都の水道事業の問題を取り上げた朝日社説

2012年8月28日

 昨日、朝日新聞が社説で東京都の水道事業の問題を取り上げました。
 東京都水道の問題は、八ッ場ダム問題の根幹をなすものです。社説の論旨は、正鵠を射たものです。

 東京における渇水のピークは1964年、東京オリンピックが開催された年でした。当時は長期の断水により、都民は不便を強いられ、給水車の出動、プールの使用制限など、水不足は大きな社会問題となり、『東京砂漠』という言葉がしばしば使われました。その後の経済成長による首都圏全域の水需要の右肩上がりは、八ッ場ダム推進の根拠とされました。
 しかし、1970年代には東京から地方への工場移転などにより工業用水が減少するようになり、さらに漏水防止対策、節水家電の普及等により水道水の需要も減少するようになりました。
 社説にあるように、平成時代に入ってから給水制限が5回ありましたが、給水制限は僅かなものであったため、蛇口をひねれば水は普通に使える状態で、都民が不便を実感したことはありません。その後も水需要の減少はずっと続いていますので、今年のように渇水の年でも給水制限はありません。

◆2012年8月27日 朝日新聞社説
http://www.asahi.com/paper/editorial20120827.html

 -水道事業―節水で過剰投資を防げ

 家庭などの節電が効果をあげている。7月は全国で前年から12%余り販売電力量が減った。原発事故を起こした東京電力管内では、やはり節電を呼びかけた昨年より14%も少ない。

 暑さをしのぎ節電に取り組んだたまものではあるが、裏を返せばこうも言える。「電力の安定供給」を掲げる電力会社任せにしてきた結果、必要以上の過剰な投資がされてきた――。

 自治体が供給する水道も、同じことが言える。

 最大の水道事業者である東京都はこの春、9年ぶりに需給予測を見直した。人口減をみすえて全体を下方修正し、初めて右肩上がりの予測を改めて将来の減少を見込んだ。

 とはいえ、需要のピークは「2020年度の1日あたり約600万トン」。これに対し、10年度の実績は490万トンにすぎず、78年度の645万トンから減少傾向が続いている。見直しは全く不十分だ。

 過剰な予測に基づく投資は利用者の負担増につながる。今後、既存の浄水場などの更新だけで1兆円かかるという。社会構造や利用者の意識の変化をとらえて節水を促し、コスト削減への取り組みを強めるべきだ。

 水道の需要予測は、次のような手順を踏む。

 生活、工場など用途別に1日あたり平均使用量の見込みを出す。漏水分を考慮し、使用のピーク時に備えた修正をする。平均に対してピークを何倍と見込むかがカギだ。

 高度成長期以降、東京都の最高値は77年度の1.25倍。倍率は低下傾向にあり、昨年度は1.11倍。夏場の需要がかつてほどふくらまなくなった。

 東京都は今回の推計で77年度の1.25倍を使った。「災害対策も意識し、より長期的に見込んだ」という。

 対照的なのは、大阪府が3年前に行った見直しだ。

 大阪でも倍率は低下傾向にある。その原因を分析し、通年で使う屋内プールが増えたこと、エアコンの普及で夏場のシャワーの回数が減ったことなどを全国的な傾向として指摘。「倍率の上昇は考えにくい」とし、直前5年間の平均である1.14倍とした。

 渇水による給水制限は、東京では平成になってからも5回あった。安定供給は欠かせないが、だからといって八ツ場(やんば)ダム(群馬県)など国が開発中の施設からさらに水を買う、という発想はとるべきではない。

 今こそ節水を呼びかけ、需要を抑えて安定供給につなげる好機とすべきではないか。

 ~~~転載終わり~~~

 八ッ場ダム住民訴訟において、八ッ場ダムを推進する東京都の水行政の問題を指摘した意見書がこちらに掲載されています。  
 https://yamba-net.org/wp/doc/tokyo_k_g_iken_shimazu_k49.pdf