2012年10月3日
今朝の新聞に、八ッ場ダム予定地上流にある品木ダム(中和生成物の沈澱池)の底泥の処分場が廃棄物処理法に違反していると、会計検査院が指摘したという記事が掲載されました。
品木ダムは八ッ場ダムを建設するために40年以上前に造られたダムです。
八ッ場ダム予定地を流れる吾妻川は、上流にある草津白根山の影響で、強酸性の川でした。このため、1952年に八ッ場ダムの構想が発表されたものの、コンクリートが溶ける吾妻川にはダムは造れないと、一旦は計画が頓挫します。
八ッ場ダム計画が復活したのは、吾妻川上流の中和事業の成功がきっかけでした。中和事業の中核をなすのが品木ダムです。八ッ場ダム事業は吾妻川の中和事業を前提として成り立っており、品木ダムとは切っても切れない関係にあります。
中和事業と品木ダムについては、こちらに5ページに分けて解説を載せていますので、参考になさってください。↓
https://yamba-net.org/wp/modules/problem/index.php?content_id=17
朝日新聞と他紙のその後の記事を転載します。
◆朝日新聞 2012年10月3日03時00分
http://www.asahi.com/national/intro/TKY201210020791.html?id1=2&id2=cabcbaad
-国交省の汚泥処分場、違法 検査院「水防ぐ溝ない」ー
(写真)品木ダム(左上)から運ばれた汚泥が、産業廃棄物最終処分場(右下)に埋め立てられている=2009年10月16日、現在の群馬県中之条町、朝日新聞社ヘリから
群馬県北西部で国土交通省が汚泥を埋め立てている産業廃棄物最終処分場が、廃棄物処理法に違反していることが、会計検査院の調査でわかった。
法律が定める設備がないのに、国や県は2006年度以降、放置していた。
検査院は、これまでに国が投じた埋め立て費用約2億9千万円は、法令に違反する支出だったと国交省に指摘する方針。
問題の処分場は同県中之条町にある。建設をめぐって賛否が割れた八ッ場ダムの建設予定地の上流にある品木ダムの近くで、このダムの湖底を浚渫した汚泥を捨てている。国交省が03年に設置を県に申請し、06年から使用が始まった。
処分場は、周辺水域や地下水への汚染対策が必要な「管理型」だ。管理型の場合、廃棄物処理法は、外周を囲うように溝を掘ったりすることを定めている。
だが、検査院が処分場を実際に調べると、溝は設けられておらず、雨水が処分場の中に流れ込み、処理が必要な水が増えてしまう状態だったという。
品木ダムと処分場には特別な役割がある。
上流には温泉や火山があり、一帯から流れ出す河川は釘も溶けだす強い酸性だ。川の水は首都圏の水源の利根川に流れ込むほか、八ッ場ダムが建設されても酸性の水がコンクリートを溶かす恐れがあり、上流の川に石灰液を入れて中和している。品木ダムの湖底には土砂や中和による生成物がたまる。有害なヒ素も含まれているという。
問題の処分場には、こうした汚泥を堀って脱水し、セメントと混ぜて捨てている。年間の埋め立て量は約1万5千立方㍍で、これまで使っていた二つの処分場が満杯になり、今回の三つめ(容量約32万立方㍍)ができた。 (以下略)
◆東京新聞群馬版 2012年10月4日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20121004/CK2012100402000147.html
-国の汚泥最終処分場 違法状態で7年間ー
中之条町にある国の汚泥最終処分場が、雨水の流入を防ぐ溝をつくらず、廃棄物処理法に違反した状態で七年間放置されていることが三日、明らかになった。
処分場設置を許可した県は「汚泥を埋め立てる過程で溝をつくればという考えだった。(実際に溝ができたかどうかの)確認を怠った」と対応の不適切さを認めた。国土交通省関東整備局によると、会計検査院の調査を受けたという。
県議会決算特別委環境農林分科会で同日、塚越紀一議員の質問に県が答えた。県などによると汚泥は酸性の強い吾妻川に流れ込む湯川で石灰を入れて中和する過程で発生する。
品木ダムでせき止められ、しゅんせつされてコンクリート固化して処分場に搬入されている。中和は一九五〇年代、世界初の事業として始まり、こうした目的の処分場は全国的に珍しいという。湯川はpH一・八~二・七で極めて酸性度が強い。
処分場は、容量三十二万六千九百八十九立方メートル。国が二〇〇三年に設置を申請、〇四年に県が許可し翌年に完成した。
廃棄物処理法に基づく管理型処分場で、本来、雨水が流れ込まないよう外周に溝を設けることや、遮水シート、水処理施設が必要とされている。
国は、遮水シートと水処理施設は省令の例外規定を適用して省略し、外周部分の溝については、汚泥処理の過程でつくればよいとの判断だったという。
今年一月に品木ダムに会計検査院の調査が入り、国の要請を受けて県が処分場に立ち入り、七月に溝をつくるよう指導し現在、工事中という。国や県によると、汚泥に温泉由来のヒ素は含まれるものの、処分場の流出水の安全に問題はないという。 (池田一成)
◆毎日新聞 2012年10月4日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121004-00000103-mailo-l10
-品木ダム汚泥処分場:県が国交省に行政指導 側溝、計画の1割のみ /群馬ー
草津白根山から流れ出る酸性水を中和する品木ダム(中之条町)の汚泥を埋め立てる最終処分場が廃棄物処理法の基準を満たしていないとして、県が7月、同ダムを管理する国土交通省関東地方整備局に対して行政指導を行っていたことが3日分かった。
会計検査院も検査に入り、国交省への指摘を検討しているという。
同整備局品木ダム水質管理所によると、同ダムでは湯川などを流れる酸性水にアルカリ性の石灰を投入し、中和する。これにより、たまった汚泥(年間約1万5000立方メートル)を湖底からかき出し、セメントと混ぜて、近接する最終処分場に埋め立てている。
最終処分場は、面積約3万6000平方メートル、容量約32万6000立方メートル。周辺水域や地下水の汚染を防ぐため、外周を覆う側溝を造ることなどが定められている「管理型」。
しかし、県が7月に行った立ち入り調査で、外周の側溝が計画の1割しか整備されていないことが発覚した。県は早期の整備を指導し、同管理所も年度内の整備を目指し、測量作業を終えたという。
県によると、04年3月に同ダム設置を許可し、05年5月に使用前検査を実施。側溝はなかったが「埋め立てに伴って側溝整備を進める」ことを確認し、06年11月から埋め立てが始まった。
ところが、その後は検査を行わずに放置。県は「引き継ぎが不十分だった」と釈明している。
一方、同管理所は「当初の計画通りに側溝整備を進めている。県の指導にも従っており、違法とは認識していない」としている。【奥山はるな】
◆上毛新聞 2012年10月4日
-産廃処分場に不備 中之条に国交省設置 県が行政指導ー
国土交通省が中之条町に設置している産業廃棄物最終処分場で、法律で定められた雨水の流入を防ぐ溝などの設備が足りず、処分場建設の許可権限を持つ県が、設置者である同省に対して改善を求める行政指導を行っていたことが3日、分かった。会計検査院の調査で施設の不備が判明。県が国を行政指導するのは異例で、国交省は、指摘を受けた溝を本年度中に完成させるという。
処分場は、同法で外周に溝を掘る対策が必要と定められている「管理型」。中之条町入山の品木ダムの湖底からさらった汚泥を捨てるため、国交省が2003年、県に設置を申請し、06年に使用を始めた。
検査院や県が調べたところ、処分場は溝の一部がなく、周辺の斜面から雨水が流れ込んでしまう状態だった。このため県はことし7月、国交書府に対し、すぐに溝を作るよう求めた。
県によると、05年に使用前検査を実施した際、斜面に囲まれた立地であることから「埋立処分を進めながら溝を順次設置する」との条件で使用を許可。その後、設置したかどうかの確認はしていなかった。
県の指導を受け、国交省関東地方整備局は8月から溝の整備を始めた。「県に許可されており、違法との認識はなかったが、指導に対して適切に対処したい」としている。
検査院はこれまでの埋め立て処分は廃棄物処理法に違反しているとして、処分費用2億9千万円が不適切な支出だったと国交省に指摘する方針。
—転載終わり—
この記事は会計検査院が11月初頭に出す平成23年度の検査報告に含まれる内容のようです。
記事の重要部分は、以下の箇所です。
「申請時に国から提出された計画の図面では、溝を設けることになっていたという。県は05年に、処分場の使用前の検査をしたが、その時には、溝が「未完成」のままで使用を認めていた。埋め立てが進んでから、改めて確認することにしていたという。
だが結局、約7年にわたり問題を放置してきた。取材に対し、「事務の引き継きか十分でなく、不手際があった」と話している。
さらに、管理型の処分場で叫地下水の汚染を防ぐためシートで遮水したり、排水処理設備を造ったりすることも法律上必要だが、いずれも設けられなかった。法令には、汚染の恐れがない廃棄物に限って設備を省くことを認める例外規定かあることから、こうした構造を容認していた。」
周辺の雨水が処分場内に流れ込まないようにする溝は当然必要ですが、それだけではきわめて不十分です。処分場内に降った雨が、処分場の地下に浸透しないようにする遮水シートと、処分場の浸出水を処理する排水処理設備も必須のものです。しかし、それらは無しでよいとして、群馬県が黙認しています。