八ッ場予定地下流域 洪水氾濫図「捏造」

2012年10月20日

 利根川・有識者会議で問題となっている国交省の資料について、昨日の東京新聞が大きく取り上げました。

 この資料は、八ッ場ダム計画の契機となった昭和22年のカスリーン台風の時の氾濫図です。国交省の資料は、実際には氾濫していない群馬県平野部の広範な地域を氾濫しているとしています。その中には、標高200メートル近い高崎市の観音山丘陵も含まれており、氾濫図が事実を反映したものであったなら、洪水が山に上ったことになります。
 氾濫地域を実際よりはるかに広く設定することで、洪水時の利根川の流量が過大に設定されることになり、それが利根川の治水上、八ッ場ダムを建設する必要があると国交省が説明する根拠にもなっています。

 利根川・有識者会議は、八ッ場ダム本体工事着工の条件である、利根川水系河川整備計画の策定作業のために開催されています。国交省関東地方整備局では、現在、有識者会議のテーマとなっている、利根川の目標流量の数値は、この図を使ったものではない(ので氾濫図の内容は問題ない)としていますが、目標流量の過大な設定と問題の氾濫図は切っても切れない関係にあります。

 東京新聞の記事を転載します。

◆2012年10月19日 東京新聞一面
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012101902000134.html

 -八ツ場予定地下流域 47年洪水の氾濫図「捏造」
  国交省が昨年作成 標高200㍍も浸水ー

  建設の是非が問われている八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)をめぐり、国土交通省関東地方整備局が、一九四七年九月のカスリーン台風の洪水により同県高崎市など利根川上流域で発生した水害の氾濫地域を過大に示した図を作成していたことが分かった。 

 この氾濫図は昨年六月、国交省が日本学術会議分科会の資料として作成し、ダム本体着工の条件である「利根川・江戸川河川整備計画」の策定に向けた有識者会議にも示された。一部の委員から「捏造(ねつぞう)した氾濫図」として撤回を求める意見が出ている。ダム建設の根拠となる治水の必要性の議論に影響を与えそうだ。

 氾濫図で示された上流域は、烏川や鏑川(かぶらがわ)が流れる高崎市、鮎川の藤岡市、利根川右岸の玉村町など。

 実地調査した有識者委員の大熊孝新潟大名誉教授によると、氾濫図にある氾濫地域(青色)のうち、烏川左岸の高崎市役所や高崎駅がある市街地部分は川から十メートルを超える高台で、鏑川左岸の上信電鉄の西側は標高約二百メートルの山間部だった。

 さらに鮎川や烏川と鏑川が合流する辺りの右岸の一部を除き周辺のいずれも浸水していなかった。玉村町のほとんどが氾濫したことになっているが、半分以下しか浸水していなかったという。

 整備局は有識者会議で氾濫図について「群馬県発行の『水害被害図』と『カスリン颱風(たいふう)の研究』に記録された浸水の深さを基に、見取り図的なひずみを現在の地図の正確な位置で補正して作った」と説明。現地での地形確認や聞き取り調査は行っていなかった。

 建設省(現国交省)は一九七〇年、カスリーン台風の利根川上流域における洪水被害の実態をまとめ、氾濫図を作成した。今回新たに作成された氾濫図では氾濫地域が大幅に拡大している。

 下流の治水基準点・八斗島(やったじま)でカスリーン台風の洪水時、整備局の推計で最大毎秒約一万七千立方メートルの水が流れ、新たな流出計算モデルでは同約二万一千立方メートルの水が出た(最大流量)としている。差の同約四千立方メートルが上流域で氾濫などしていたとする。

 大熊委員は「国は最大流量をかさ上げするために、つじつま合わせで、上流域で大規模な氾濫が起きたように捏造している。氾濫水量は八分の一程度ではないか」と批判する。

 整備局河川計画課は「被害地域を唯一、示していた水害被害図の資料に基づき、機械的に作った。氾濫図は最大流量の算出で使っていない」としている。

 
 -利根川の洪水氾濫図「捏造」 「八ツ場」推進 狙いかー
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2012101902000159.html

 八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の建設をめぐり、国土交通省関東地方整備局が高崎市周辺の利根川上流域の浸水状況を説明するために作った氾濫図に、大きな欠陥があることが明るみに出た。氾濫地域とされる山間部や高台で、氾濫の形跡は見当たらない。本体着工を急ぎたい国交省の思惑も透けて見える。「捏造(ねつぞう)」の現場を歩いた。 (荒井六貴)

 高崎駅から南東に約五㌔。上信電鉄山名駅前に、安産と子育ての祈願で知られる山名八幡宮がある。ここは「氾濫図」でCにあたり、氾濫地域に入れられている。
 八幡宮は南北約一㌔先になる利根川支流の烏川と鏑川に挟まれた形になっているが、背後の山に向かって高台になっている。

 ー以下略ー