10/16の利根川有識者会議

2012年10月17日

 昨日、国交省関東地方整備局により、利根川の有識者会議が都内で開かれました。4年半ぶりに9月25日に開かれてから、10月4日に続き、これで3度目。間隔を置かずに会議が開催されており、八ッ場ダム本体着工の条件をクリアしたいとする関東地方整備局の意気込みがうかがえます。

 昨日の有識者会議では、大熊孝新潟大名誉教授、関良基拓殖大准教授ら、これまでの河川行政のあり方に批判的な委員より、国交省の治水目標流量の根拠となっている資料の捏造や計算の非科学性について厳しい意見が相次ぎました。しかし、国交省の方針を支持する小池俊雄東大教授が計算の正当性を主張し、宮村座長は議論を尽くすことなくマイクを事務方の国交省に戻しました。

 会議終了後、宮村座長はぶらさがり会見で、「目標流量に関する議論はこれ以上やっても平行線である」ことを理由に「議論の打ち切り」を表明しました。これは、八ッ場ダム建設の根拠と国交省が主張する河川工学上の数値が科学的評価に耐えるかどうかを議論で詰めることなく、うやむやのままに八ッ場ダムを利根川の河川整備計画に位置づけてしまいたいという行政の意思を代弁したものです。議論を尽くせば、国交省や御用学者の見解がウソにウソを積み重ねた砂上の楼閣であることが暴かれてしまいますので、長年、巨額の税金をつぎ込んできた八ッ場ダム事業を今さら必要なかったとは言えない国交省としては、この局面では強引な手法をとらざるをえません。

 ぶら下がり会見での座長発言は、有識者会議で承認されたものではありませんが、官僚が有識者会議を仕切っていることを暗黙の了解事項としている新聞各紙は、国交省の思い通りになっている宮村座長のこの発言を今朝の記事タイトルに掲げています。中には、宮村座長の「議論打ち切り」発言が会議終了後のものであったことすら触れていない記事もあります。
 新聞各社には、国交省の意思を先読みするだけでなく、事実経過を正確に伝えることを望みます。

◆上毛新聞 2012年10月17日

 -利根川水系整備計画の有識者会議 流量議論打ち切り 座長方針「出尽くした」-

 国土交通省関東地方整備局は16日、八ツ場ダム(長野原町)の本体着工条件となっている利根川水系の河川整備計画の策定に向けた「利根川・江戸川有識者会議」を都内で開き、前回、前々回に続き今後20~30年で安全に流すことを目指す洪水量(目標流量)について協議したが、賛否が分かれた。会議終了後、座長の宮村忠関東学院大名誉教授は報道陣に「議論は出尽くした」と述べ、目標流量の議論は打ち切り、次回以降は整備内容などの協議に移ると説明した。

 整備局は利根川流域は人口や資産が集中していることから、目標流量は他の河川よりも高い70~80年に1度の洪水規模に当たる毎秒1万7000㌧=基準点・伊勢崎市八斗島(やったじま)町=が妥当と提案している。

 関良基・拓殖大准教授は過去60年間の基準点で実測された最大流量1万㌧(1998年)を基に、80年に1度の洪水規模を算出すると1万3千トンとして「安全にみても1万4千トンだ。1万7千㌧で国民が納得できるのか」と主張。森林の保水能力が増していることも指摘した。

 これに対し、清水義彦・群馬大大学院教授は甚大な被害を出したカスリーン台風(1947年)で利根川上流域3地点での観測値から実績流量は約1万7千㌧と算出されていることから「(過去に)あったものを根拠にするのは一理ある。国交省が示した目標流量は妥当だ」と述べた。

 目標流量の議論を打ち切る方針について、ダム建設に反対する水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之共同代表は「1万7千㌧の目標流量の科学的根拠に疑義がある。もっと議論しなければいけないのにおかしい」と批判した。

 整備局は有識者会議については河川法に基づき「意見を聞く場であり、何かを決める場ではない」とあらためて説明。会議での意見を踏まえ、整備局が目標流量を設定するとした。今後の会議のスケジュールは未定としている。

◆日本経済新聞 2012年10月17日

 -八ッ場ダム含めた治水目標 有識者、議論打ち切り 意見統一せずー

 八ッ場ダム本体着工の前提条件となる国の河川整備計画のあり方を話し合う利根川・江戸川有識者会議は16日、東京都内で会合を開いた。河川整備によってどの程度の水量に耐えられるようにするかを示す「目標流量」をめぐっては関東地方整備局の方針に反対する賛否が分かれたままで、委員間の意見対立は解消しなかった。
 終了後、有識者会議の宮村忠座長は「意見は出尽くしたと思う。この会議は合意形成の場ではなく(意思統一のため)私が調整することもない」と述べ、目標流量に関する議論を打ち切る考えを示した。
 関東地方整備局は利根川水系の目標流量を毎秒1万7000立方㍍とし、八ッ場ダムを含む河川整備によって治水能力を現在より約3000立方㍍高める方針を示している。有識者会議が目標流量に対する統一見解を示さないまま議論を終えることで、八ッ場ダムの必要性を織り込んだ河川整備計画が策定される公算が一段と高まった。

◆東京新聞群馬版 2012年10月17日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20121017/CK2012101702000152.html

 -議論平行線のまま 八ッ場ダム有識者会議 座長「事務局判断だ」ー

 八ッ場(やんば)ダム(長野原町)の本体着工の条件である「利根川・江戸川河川整備計画」の策定に向け、国土交通省関東地方整備局は十六日、第七回有識者会議を東京都内で開催した。

 前回に続き、ダムの是非の根拠となる数値をめぐり合意は得られず、会議後、座長の宮村忠・関東学院大名誉教授は「あとは事務局の判断だ」と述べた。

 争点は、利根川のある地点で水を安全に流せる量「目標流量」の数値。国交省の試算を「過大だ」とするダム反対派と、容認する委員の間で激しい議論が交わされた。

 反対派の関良基・拓殖大准教授は「戦後の森林の成長で川に流れる雨量が減ったことを試算は考慮していない」と指摘。小池俊雄・東京大大学院教授は「戦後の変化は洪水を大きくしてもいる」と反論した。

 同整備局が示し、大熊孝・新潟大名誉教授が「水没していない所が水没したことになっている」として撤回を求めている一九四七年のカスリーン台風の氾濫の図について、

 東京新聞の野呂法夫特別報道部次長は現地での聞き取りを踏まえ「水没はなかった。とんでもない図だ」と批判。同整備局側は「元データも算出方法も示している」との返答に終始した。

 また同整備局側は「目標流量を設定するのは関東地方整備局。その後、施設計画を含む案を、この会議に提示する」と今後の流れを明らかにし、争点が決着されなくても審議を進めたい模様だ。(伊藤弘喜)

◆読売新聞群馬版 2012年10月17日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20121016-OYT8T01752.htm

 -目標流量意見一致せず 八ッ場有識者会議ー

 利根川水系の河川整備計画策定に向けた有識者会議が16日、東京都内で開かれた。座長の宮村忠・関東学院大名誉教授は会議後記者団に、これまで続けてきた目標流量の議論について「意見は出尽くした。今後も平行線だろう」と述べ、議論を終える考えを示した。

 河川整備計画は、八ッ場ダム(長野原町)の本体工事着工の条件とされ、議論の焦点はダムなどの施設計画に移るが、今後の日程は明確になっていない。

 16日の会議では、洪水時に安全に水を流せる「目標流量」について引き続き議論が交わされた。

 国土交通省は、70~80年に1度発生する洪水にも対応できるよう、伊勢崎市八斗島での目標流量を毎秒1万7000立方メートルとする案を示している。

 これに対し、ダム反対派の関良基・拓殖大准教授は、地中への水の浸透率などが十分に考慮されていないとし、「解析モデルに誤りがある」などと主張。

 一方、日本学術会議の分科会メンバーとして同整備局が示した値を妥当と認めた、小池俊雄・東大大学院教授は計算根拠を示しながら、「国交省の計算は間違いない」と指摘した。別の委員からも賛否両論が出て、意見は折り合わないまま、予定の2時間で終了した。

◆下野新聞 2012年10月17日
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/local/news/20121016/901071

 -「意見出尽くした」 利根川・江戸川有識者会議 「目標流量」賛否割れるー

 国土交通省関東地方整備局は16日、八ツ場ダム(群馬県)の本体工事着工の前提となる利根川水系の河川整備計画策定に向けた「第7回利根川・江戸川有識者会議」を東京都内で開いた。

 洪水時、安全に流下させることを目指す目標流量について協議し、賛否それぞれの意見が出た。座長の宮村忠関東学院大名誉教授は会議後、報道陣に「目標流量については意見が出尽くしたと思っている」との見解を示した。

 国交省は70~80年に1回の割合で発生する洪水を想定。利根川の基準点(群馬県伊勢崎市内)で、安全に流す目標流量を「毎秒1万7千立方メートル」としている。会議では目標流量に関連し、計算方法など学術的な議論が交わされた。

 国交省が示すデータの算出方法の不備や資料の誤りを指摘する意見の一方、「国交省の計算は間違いではない」「目標流量は妥当」とする声もあった。

◆毎日新聞群馬版 2012年10月17日
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20121017ddlk10010151000c.html

 -八ッ場ダム建設:利根川有識者会議 「目標流量」は棚上げ、一致できず 個別整備の検討へ /群馬ー

 八ッ場ダム(長野原町)本体工事着工の条件である利根川水系の河川整備計画の策定に向け、第7回利根川・江戸川有識者会議が16日に東京都内で開かれた。ダム建設の根拠となる「目標流量」についての議論で一致点が見られず、座長の宮村忠・関東学院大名誉教授は議論をいったん打ち切り、八ッ場ダムなど個別の整備内容の検討に入る方針を示した。

 目標流量は、1947年のカスリーン台風並みの水害があった場合、被害が出ないようダムなどで調節すべき流量のことで、国土交通省関東地方整備局は毎秒1万7000トンと算出している。これに対し、複数の委員が根拠資料や算出モデルの不整合性を指摘していた。【奥山はるな】

◆朝日新聞群馬版 2012年10月17日
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581210170001

 -目標流量の議論を打ち切る 八ッ場ダム巡る国交省の有識者会議ー

  八ツ場ダム本体着工の最終条件の一つ「利根川・江戸川河川整備計画」の策定をめぐり、国土交通省関東地方整備局は16日、再開以来3回目の有識者会議(座長=宮村忠・関東学院大名誉教授、委員21人)を都内で開いた。宮村座長は、治水対策の目標流量についての議論は「今日で終わり」と打ち切りを明言した。

 有識者会議は4年4カ月ぶりの再開以来、利根川の洪水対策で、「毎秒1万7千トン」とする基準点(伊勢崎市八斗島)の目標流量に議論を絞ってきた。見直し派委員の問いと整備局の答えがかみ合わないまま、この日は見直し派、推進派双方が持論を展開した。

 見直し派の大熊孝・新潟大名誉教授(河川工学)らは、カスリーン台風時の県内の水害被害図について、「実際に現地に行って確認したのか。資料が間違っているから、水の流出体積の試算が過大」と指摘。整備局は「この資料は試算には用いていない」とした。

 関良基・拓殖大准教授(森林政策学)は「現在の山の保水力は上がっており、試算のパラメーターが過大」と指摘したが、国交省の再検証に関わった小池俊雄・東大大学院教授(地球環境科学)は「過去から連続して計算すると、試算は妥当だ」と反論した。
 過熱する意見の応酬に、一部の委員からは「目標流量の現実性は分からないが、何が安全かを議論すべきだ」と見直し派をいなす発言もあり、議論は依然、平行線のまま終わった。

 会議終了後、宮村座長は「有識者会議は合意形成する場ではない。意見は平行線だが出尽くしたので、施設整備計画など議論を次に進めたい」と話した。(牛尾梓)