川原湯温泉の新駅と駅前整備事業

2012年10月24日

 今朝の上毛新聞にJR吾妻線の新「川原湯温泉」駅の記事が載っていました。
 以下に転載します。

◆2012年10月24日 上毛新聞社会面より転載
 http://www.raijin.com/ns/7513510541394384/news.html

 -新川原湯温泉駅 月内にも着工―

 八ツ場ダム(長野原町)生活再建事業の一環で、川原湯地区の移転代替地に計画されているJR吾妻線「新川原湯温泉駅」の建設工事が月内にも始まる。地元の川原湯地区は、22日夜に開いたダム対策委員会で了承。事業主体のJR東日本はすでに施工業者と契約を結んでおり、2014年2月ごろの完成を予定している。

 ダム建設により、吾妻線は岩島駅から長野原草津口駅まで約10・4キロ区間の路線付け替え工事が進められている。新駅建設はこれに伴うもので、代替地での用地取得や工事用進入路などが確保できたため、着工に移る。

~~~転載終わり~~~

 八ッ場ダムのダムサイト予定地にはJR吾妻線が今も通っています。ダムの本体工事を本格的に始める為には、どうしても線路の付け替えが必要です。
 現在の吾妻線の列車は、吾妻川沿いに谷間を縫って走りますが、八ッ場ダム事業で標高の高いところに敷設される線路は、約10キロメートルの殆どがトンネルの中です。その中で、わずかに地上部に出るのが新しい川原湯温泉駅の部分です。

 新駅予定地は川原湯地区で唯一、水没線より標高の高いところにある、温泉街の坂上の原と呼ばれる土地にあります。下の写真は、今月初めに撮影したものです。
 すでにプラットフォームが造られています。
     

 川原湯温泉の新駅は、駅舎がプラットフォームの上につくられる「橋上(きょうじょう)駅」となります。ここは金鶏山(金花山)の麓に位置する傾斜面で、平らな土地がありません。そのため、駅予定地の山側に擁壁を造り、人工的に平らな土地を造りました。
 遠くから眺めると、山がすぐそばまで迫っているのがわかります。ここは、かつて土石流が何度も襲った場所です。
     

 擁壁は巨大です。地上部も人間の背丈よりはるかに高いのですが、地下深くまでコンクリートが打ち込まれています。金鶏山に雨が降ると、山の水が吾妻川のある谷側に流れていきますので、自然の沢や地下水の流路を知悉している住民の中には、巨大な擁壁が地下水の流れを阻害し、山側の土地の地盤を脆弱化させることを不安視する声もあります。けれども国交省は安全性に問題はないとして擁壁工事を進めてきました。
     

 新聞記事にもあるように、国交省は近々、新駅の建設工事を始めますが、駅前整備事業の方は用地取得が難航しています。駅の建物ができても、駅に通じる道ができなければ、駅は利用できません。川原湯温泉駅ができても、JR線の付け替えが国交省の思い通りに進むかどうかわかりません。

 もっともJR線の付け替えは、国交省の工程表ではとっくに完成している筈でした。平成20年1月10日付の「都県合同による八ッ場ダム現地調査報告」(東京都、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県」によれば、鉄道の付け替えは平成22年度に完了している筈でした。八ッ場ダムの完成は平成27年度とする現在の工程表は、付け替え鉄道の遅れによって見直さざるをえない状況です。
 国交省も関係都県も、民主党政権のせいでダム事業が遅れていると、民主党に責任を転嫁していますが、2009年に政権交代が起こらず、自公政権が続いていたとしても、JR吾妻線の付け替えのメドがいまだに立っていないのですから、本体工事を始めることはできませんでした。

 こちらが新駅周辺の計画図(国交省資料)です。ここはいくつもの交通ルートが集中する場所です。新駅予定地周辺の状況は、八ッ場ダム事業全体に影響を及ぼします。
 川原湯新駅予定地の図

 現在の川原湯温泉駅は、駅前に国道が走っていますが、付け替え国道は吾妻川の対岸の川原畑地区を通ることになりました。これまでの国道は谷間を走っていましたから、両岸の地区住民が利用しましたが、ダム湖ができると対岸はこれまでよりずっと遠くなります。そのため、付け替え国道の通らない地区住民からは、国道並みの道路を求める声があり、国道並みの県道が川原湯地区を通ることになりました。それが県道・林岩下線です。

 上の図を見てもわかるように、県道は駅予定地よりかなり山側を走ります。2009年の政権交代当時、十字架上の橋脚がテレビでしばしば取り上げられた湖面2号橋(不動大橋)は、この県道の上流側にあります。その後まもなく湖面2号橋は完成しましたが、駅予定地の下流側の区間で用地が取得できず、迂回路を通っているため、今も大型車両は通行できません。

 新駅のアクセス道路となるのは町道です。図を見ると、駅前広場に接して町道が走る予定であることがわかります。この町道は、下流側の打越代替地に再建される新しい川原湯温泉街と駅を結ぶ道でもあります。
 しかし、町道の建設は見通しが立っていません。群馬県議会における県の説明によれば、町道予定地は現在の川原湯温泉街の背後にあるため、温泉街の建物が移転しないと町道は建設できないということです。その他にも、町道建設には用地取得の難航などの問題があります。

 駅予定地から下流方向を撮ったのが下の写真です。
     

 今春の写真なので、まだプラットフォームができていませんが、前方に山が見えます。線路はこの山からトンネルに入りますが、町道のルートは山を越えていきます。川原湯の温泉を運ぶ管も、町道に埋設される予定ですが、町道建設の見通しが立っていないため、水没予定地を通る暫定的な引湯管が今年になって敷設されました。

 現在の川原湯温泉駅前には、JRバスの停留所もありますが、11月からJRバスは川原湯温泉駅には立ち寄らず、対岸の付け替え国道を走ることになりました。
 八ッ場あしたの会の関係者には、川原湯温泉のファンが多く、特に若い世代の人たちは、東京方面からの手軽な交通手段としてJRバスを利用することが多かっただけに、路線変更は残念という声が少なからず寄せられています。
 *11月1日からのJRバスの運行表
 http://www.jrbuskanto.co.jp/bus_route/cotimep01.cfm?pa=1&pb=1&pc=j0010331&pd=1&st=1

 1992年、国は地元に無理矢理ダム計画を受け入れさせ、国、群馬県、長野原町は協定を結びました。国と群馬県は川原湯温泉をダム事業で再建することを約束しましたが、この20年の間に川原湯の旅館は次々と姿を消し、残る旅館は5軒のみとなりました。そのうち2軒は代替地に旅館を建設中です。けれども代替地は観光地としての条件が整っておらず、新温泉街再建の見通しは不透明です。また現温泉街に残る旅館も、観光客の減少に苦しんでいます。

 川原湯地区の農村地帯(上湯原の水没予定地)では、ほとんどの家屋が移転しています。