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役割が終わったフルプラン、国交省が延命策

 昨日(3月6日)、国土交通省で国土審議会第18回水資源開発分科会が開かれました。この会議は、フルプラン(水資源開発基本計画)の延命策を審議するものでした。
 その配布資料が国土交通省のHPに掲載されましたので、お知らせします。

◆第18回 水資源開発分科会 配付資料
 http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/water02_sg_000078.html

 フルプランは利根川・荒川・豊川・木曽川・淀川・吉野川・筑後川の7水系について水需給計画をつくり、ダム等の水源開発事業が利水面で必要であることを示すものです。利水面での水源開発事業の上位計画になります。八ッ場ダム事業がフルプランに最初に組み込まれたのは1976年のことです。当時、ダム予定地住民はフルプラン組み入れに反対、抗議を繰り返しましたが、国はこれを無視しました。

 しかし、今では水需要が減少の一途をたどり、水余りが一層進行していく時代において、水需給計画で新規のダム等水源開発事業を位置づけることは困難になってきました。
 フルプランの指定水系では、八ッ場ダム、思川開発、霞ケ浦導水事業(以上、利根川水系)、設楽ダム(豊川水系)、川上ダム(淀川水系)、天ヶ瀬ダム再開発(淀川水系)、小石原川ダム(筑後川水系)などの事業が進められ、木曽川水系連絡導水路が計画されています。国土交通省、水資源機構はこれらの事業を推進するため、「リスク管理型の水の安定供給」が必要であるなどの新たな理由をつけて、これらの事業をフルプランに位置付けることにしました。

 今回の水資源開発分科会はこのフルプランの延命策を審議するものでした。
 例えば、資料のうち、

03-1_(資料3-1)次期水資源開発基本計画策定に当たっての検討事項(一覧表)を見ると、次のように書いてあります。 http://www.mlit.go.jp/common/001224391.pdf 

水需給バランスの総合的な点検

不確定要素を考慮した需要量の見通し・供給可能量の検討
① 水需要予測
② 安定供給可能量の点検
▷ 10箇年第1位相当の渇水年の安定供給可能量
▷ 既往最大級渇水年の安定供給可能量     

リスク管理の視点による評価
▷ 起こり得る渇水リスクを幅広に想定した評価
▷ 実際に発生した渇水を対象として水資源開発施設の効果検証

 従来の水需給計画では新規の水源開発事業の必要性がなくなっても、万が一の大渇水等のリスクに備えるために、上記の水源開発事業が必要だとするために、各水系のフルプランを変更していくというものです。

 水需要減少の時代においてフルプランはその役割が終わっているのですから、フルプランを廃止し、新規のダム等事業は利水面の必要性がなくなったことを明言すべきなのですが、国土交通省はフルプランの延命策を図っています。困ったものです。