水道事業の民営化の問題が注目されています。
静岡県浜松市では、西遠流域下水道事業の民営化が今年度から始まりました。続いて、水道事業も民営化する可能性に関する報告書がまとまりました。
浜松市の下水道の事例は、国内初の下水道の運営権譲渡ですので、注目されていますが、特異な事例ではないかと思います。
西遠流域下水道は元々は静岡県の事業でしたが、2005年の市町村合併に伴い、対象流域が浜松市のみとなり、合併特例法の適用により2016年3月末に浜松市に移管されました。管理は移管前は静岡県下水道公社を通して民間会社に委託し、移管後は市が直接、民間会社に委託していました。したがって、もともと市が直営で運営したものではなく、運営方式を模索した結果、今回の民営化を選択したのであって、他の下水道や水道にそのまま当てはまるものではありません。
浜松市が直接運営していたものではないので、民営化によって「働く人々にしわ寄せがいく問題」「正規職員から非正規職員への転換が進む問題」はありませんでした。また、浜松市も下水管の部分は譲渡されていません。
したがって、浜松市の水道事業について今回、民営化に関する報告書がまとまりましたが、西遠流域下水道事業のように民営化がスムーズに進むとは思われません。
関連記事を転載します。
◆2018年6月11日 毎日新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180611-00000005-mai-soci
ー<水道事業>「コンセッション方式」有利 浜松市の報告書ー
浜松市は、水道事業で施設の所有権を渡さず運営権を民間に売る「コンセッション方式」の導入可能性に関する報告書をまとめた。完全民営化や独立行政法人化など他の運営方法と資産の面で比べた結果、コンセッション方式が最も有利との結論に達した。導入にあたっては、災害時などの対応など40項目の課題を挙げた。【奥山智己】
市は、水道事業でコンセッションの導入を検討している。昨年度、新日本有限責任監査法人(東京都)に報告書の作成を委託した。
報告書では、今のまま市が運営して水道施設を健全に維持するためには、今後50年間で水道管の耐震化や老朽化の対策、浄水場の改築などに約2900億円が必要となると試算。2037年度までに水道料金を約46%値上げする必要があるとした。
こうした状況が予想される中、各運営方法に関して資産上の観点で利点と課題をまとめた。その結果、独立行政法人化なら「弾力的な運営が可能」、完全民営化なら「極めて効率的な運営ができる」という利点を挙げた。
しかし、課題として「独立行政法人化は中期計画などで議会の承認が必要で、独自に長期の借金をすることができない」「完全に民営化すると運営会社に固定資産税などのコストが重荷になる」などと指摘した。
一方、コンセッションについて「(運営会社を監督するため)長期の経営計画策定など市側の技術の育成、継承ができる仕組み作りが必要」などの課題を列記したものの、「契約や条例で料金の大幅な値上げを抑止できる」などと利点を評価。浄水場だけでなく水道管の運営権まで含めたコンセッションが、市の財政健全化が最も見込めると結論付けた。
コンセッションの導入にあたり、管理、運営手法では災害時の役割分担など40の課題も示した。安全・安心な水道サービスを持続的に提供できるよう、「速やかに検討を進めていく必要がある」としている。
国は、厚生労働相が許可すれば運営権者となる民間企業が水道事業を運営できるよう、水道法の改正を目指している。市は法律が改正されれば、その年から最短で5年目にコンセッションで事業を始める方針。報告書は市のウェブサイトで公表している。
◇水道事業でのコンセッション導入で浜松市が検討すべき主な課題
・市職員の派遣が認められない場合、工事の品質管理、確保の方法
・資材倉庫の管理や在庫調整
・運営権者との対話による市の瑕疵(かし)担保の範囲
・運営権者や市による、それぞれの水質チェックの具体的な方法
・運営権者と市の庁舎使用区分
(「市水道事業へのコンセッション導入可能性調査業務報告書」より)