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水道法改正案が衆院通過 サービス後退招く 6野党・会派反対

 水道事業の広域化や民間参入を可能とする仕組みの導入が盛り込まれた水道法改正案が7月5日、衆院本会議で行われ、自民・公明両党と日本維新の会と希望の党などの賛成多数で可決され、参院に送付されました。
 
 水道法改正は重要な問題であるのに、マスコミ報道の少なさに驚かされます。日経の記事とNHKのニュースは水道法改正の問題点について何も触れていません。
 
◆2018年7月6日 しんぶん赤旗
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-07-06/2018070602_05_1.html
ー水道法改定案 衆院通過 高橋氏が反対討論 サービス後退招く 6野党・会派反対

 水道事業の広域化や民間参入を促進する水道法改定案が衆院本会議で5日、自民、公明、維新などの賛成多数で可決、参院に送付されました。日本共産党、立憲民主党、国民民主党、無所属の会、自由党、社民党の野党6党・会派は反対し、共産党は高橋千鶴子議員が反対討論に立ちました。

 高橋氏は、水道事業は管路の老朽化や耐震化の遅れなどが深刻になっており、与党が大阪北部地震を口実に成立を急ぐものの「法案は今回の災害に対応できるものではない」と批判。衆院厚生労働委員長の職権による委員会採決に抗議し、海外で進む再公営化の調査や参考人質疑開催など、徹底審議を求めました。

 高橋氏は、改定案が都道府県を広域化の推進役にするものだが、全国の自治体で先行する広域化計画では、住民負担やサービス後退を招いていると告発。それにもかかわらず今回、広域化などの「基盤強化計画」について都道府県議会の議決も不要とし、国の助言、勧告などの権限もなくしたことは重大だと述べました。

 水道事業者の認可は自治体に残したまま、運営権を民間業者に売却するコンセッション方式について、利益優先の民間業者の参入は水道事業の安全・安定性の後退につながると指摘。民間業者への「モニタリング(監視)」も、自治体が人手不足で「第三者機関」に任せることが認められており、安心・安全の水道事業は維持できないと批判しました。

 高橋氏は、水ビジネスは2025年に100兆円の市場になるとの業者の声もあり、「いのちの源である水道事業を、ビジネスの対象にすべきではない」と主張しました。

◆2018年7月5日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32640940V00C18A7PP8000/
ー水道法改正案が衆院通過 広域化で老朽化対策急ぐー

 市町村などが手掛ける水道事業を広域化する水道法改正案が5日の衆院本会議で、与党などの賛成多数で可決、参院へ送付された。広域化や民間企業の参入を促すことで水道事業の経営を効率化し、水道管の老朽化対策などを急ぐ。大阪北部地震で老朽化対策の遅れが注目された。与党は22日に会期末を迎える今国会での成立をめざす。

 改正案は、複数の市町村で事業を広域化して経営の効率化をはかるため、都道府県が計画をつくる推進役を担う内容だ。市町村などが経営する原則は維持しながら、民間企業に運営権を売却できる仕組みも盛りこんだ。

 市町村などの水道事業者は人口減による収入減などで赤字体質のところが多く、老朽化した水道管の更新が遅れている。厚生労働省によると、40年の耐用年数を超えた水道管の割合は2016年度末に全国で平均14.8%だ。更新率は0.75%で、全て更新するのに130年以上かかるペースになっている。

◆2018年7月5日 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180705/k10011510271000.html?utm_int=ns
ー水道事業に民間活用などの改正法案 衆院通過ー

老朽化が進む水道施設の改修を促そうと、水道事業をより多くの自治体が連携して行えるようにして、経営の安定化を図る水道法の改正案は、5日の衆議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党などの賛成多数で可決され参議院に送られました。

水道事業をめぐっては、高度経済成長期に整備された施設の老朽化が進んでいて、40年の耐用年数を超えた水道管の割合は、平成28年度末時点で全国で15%となり、先月大阪府北部で発生した地震では、水道管が破裂する被害が相次ぎました。

水道法の改正案では、老朽化が進む水道施設の改修を促そうと、水道事業をより多くの自治体が連携して行えるようにして、経営の安定化を図ることや、水道事業者に水道施設の情報をまとめた台帳の整備を義務づけること、それに、経営に民間のノウハウを取り入れようと、運営権を民間に売却できる仕組みを導入することなどが盛り込まれています。

法案は5日の衆議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会と希望の党などの賛成多数で可決され、参議院に送られました。

一方、立憲民主党などは「民間企業に運営権を移すと安定的な給水が維持できなくなる」などとして反対しました。

◆2018年7月6日 ハーバービジネスオンライン
https://hbol.jp/169803
ー安倍政権が推進する「水道事業民営化」は、「水という人権」を蹂躙するー

 大阪北部地震では、老朽化した水道管が破断するなどして21万人以上に被害を及ぼしたことは記憶に新しい。また、7月4日未明には東京都北区の西ヶ原でこれまた老朽化した水道管が破裂し、地面が陥没。にわかに「老朽化した水道管」問題が取り沙汰されるようになっている。
 そしてこの「老朽化した水道管」問題を機に、安倍政権が密かに進めようとしているのが「水道の民営化」を含む水道法改正案だ。6月27日に審議入りしたこの水道法改正案、あっという間の7月5日、衆院本会議で、与党などの賛成多数で可決、参院へ送付された。

 表向きは「水道管の老朽化対策」を掲げているが、その実、中身は地方自治体の水道事業の運営権を民間企業が獲得する「コンセッション方式」を推進する内容となっており、本音は水道事業の民営化だと言われている。

 その地固めはすでに進んでおり、5月にはコンセッション方式の導入を促進するPFI法改正案も衆院本会議で可決している。この改正案には上下水道事業に限り導入のインセンティブとして保証金免除繰り上げ償還を認めるなどの内容が盛り込まれているのだ。

麻生財務相やパソナ会長竹中平蔵氏もご執心
 水道管の老朽化対策というのは方便で、実際のところ水道事業民営化は自民党は長年温めていたプランだ。

 2013年には、麻生太郎財務大臣がアメリカのシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)で行われた講演で、「日本で水道というものは世界中ほとんどの国ではプライベートの会社が水道を運営しているが、日本では自治省以外ではこの水道を扱うことはできません。しかし水道の料金を回収する99.99%というようなシステムを持っている国は日本の水道会社以外にありませんけれども、この水道は全て国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものを全て民営化します」と言及していたこともあるほどだ。

 また、郵政民営化や高プロ制についても暗躍していたパソナ会長である竹中平蔵は、同年に行われた「産業競争力会議」の席上で、「官業の民間開放の象徴としてのコンセッション、つまり、インフラの運営権を民間に売却して、その運営を民間に任せる。世界を見渡してみれば、港湾であれ空港であれ、インフラを運営する世界的企業が存在します。(中略)これを上手くやれば、実は、非常に大きな財政への貢献にもなります」と、積極的に外資に売り飛ばすべきとも取れる発言をしているのだ。(参照:「平成25年第6回産業競争力会議 第6回産業競争力会議議事録」)

 麻生・竹中それぞれの発言を見ても、視野にあるのは単なる民営化ではない。明らかに「外資の参入」を誘っているのだ。

水メジャーによる民営化
 竹中の発言にもあるような「世界的企業」というのは、いわゆる「水メジャー」といわれる巨大企業であり、日本の水道民営化を虎視眈々と狙っている。

 水メジャーとしては、再編が激しい時期を経て、現在は事業運営においてはスエズ・エンバイロメントがフランスや中国、アルゼンチンに進出、ヴェオリア・エンバイロメント(以下、ヴェオリア)が中国、メキシコ、ドイツに進出し、2強を形成している。

 日本は素材や水処理機器市場では旭化成や日東電工、クボタ、三菱レイヨンや東レなどが存在感を示しているが、水道利権に直結する給水事業やエンジニアリングについては低シェアにとどまっているのが現状だ。

 しかし、ヴェオリアやスエズといった巨大水メジャーは、その傍若無人ぶりから、一部からは「ウォーター・バロン」(水男爵)と呼ばれ、水に関する利権を掌握すべく、世界各地の水道事業などに入り込み、その結果大幅な値上げなどが発生し、で反対運動などが起きているのである。

 ちなみに、ヴェオリアはすでに日本の水道事業に食い込んでおり、2006年には広島市の西部浄化センターの運転・維持管理を3年間、約29億円、埼玉県の荒川上流及び市野川水循環センターの運転・維持管理を3年間、約6億円の契約を相次いで受託し、業界では「ヴェオリア・ショック」と呼ばれ、大きな衝撃を与えたほどだ。

 その後も各地の上下水道事業や料金徴収業務・システム開発事業食い込み続け、2017年10月30日には、前掲した「コンセッション方式」の国内第一号案件として、「浜松市公共下水道終末処理場(西遠処理区)運営事業公共施設等運営権実施契約」を締結している。

世界の流れと逆をゆく「水道事業民営化」
 しかし、安倍政権が水道事業民営化に邁進する一方で、世界の潮流は「再公営化」に踏み出す事例が増えている。国際公務労連(PSIRU)の調査によれば、2003年の時点で水道及び下水道事業を再公営化した自治体は3件だったが、2014年の時点では35か国の少なくとも180の自治体が再公営化に踏み切っているという。地域も、欧米からアジア、アフリカと世界中で行われており、180か国の内、高所得国が136、低所得国が44と先進国・途上国問わずに再公営化が実施されているのだ。

 なぜそのような事態になっているのか? その理由の多くは、民間の水道事業者が約束を守らず、利益ばかりを追いかけ、ローカルな人々のニーズを無視したことが主因だ。

 しばしば、水メジャーの非道として紹介される最も有名な事例は、1999年のボリビアの事例だ。

 1999年に深刻な財政危機に陥ったボリビアは、世界銀行から債務軽減や開発援助を受ける代わりに、財政再建の一つとして、世銀の指導通り水道事業を民営化した。ボリビアの水道事業に参入したのは、アメリカのベクテルであった。

 ベクテルは、ボリビア・コチャバンバ市の水道事業に参入、その後水道料金を一気に倍以上に引き上げたのだ。この頃のボリビア・コチャバンバ市の平均月収は100ドル程度。そんなところで一気に月20ドルへと値上げしたのである。住民たちは猛烈は反対運動を行い、数千人の住民がデモを計画したところ、それを当時の政権側は武力で鎮圧、死者や失明者、多くの負傷者を出す事態になったのだ。これだけでは終わらない。さすがに住民の猛反対を受けたコチャバンバ市はベクテルに契約解除を申し出ると、同社は違約金と賠償金を要求してきたのだ。

 料金の値上げだけではない。劣悪な管理運営や、設備投資の出し渋り、財政の透明性の欠如、品質低下などさまざなま原因で世界中の自治体が水道事業民営化に反旗を翻し、「再公営化」しているのである。

 水道料金が4年で倍になった上に、寄生虫が混入するという事故が起きたにもかかわらず、住民にはその事実が隠蔽されていたというシドニーのような例もあるほどだ。

だんまりを決め込む自称保守の不思議
 不思議なのは、「中国が日本の水源地を買収しまくっている」というニュースには怒りの反応を見せる「保守」や「愛国」を自称する人々が、安倍政権のこうした潮流については何も発言しないという点だ。

 PSIRUの資料では、冒頭で述べた安倍政権が推進している「コンセッション方式」について、“民営化は不評を買うことが多いため、コンセッションやリース契約などのPPP(編集部注:パブリック・プライベート・パートナーシップ。いわゆる官民パートナーシップ事業)は独自な手法であり、民営化とは違うのだと人々に思い込ませる宣伝手法をとってきたが、それは虚偽である。名称にかかわらず、それらはすべて事業の経営権を民間部門の手に渡すことを意味する。”とさえ書いているのだ。

 安倍政権の決めたことならば、外資に水道事業が売り渡されても大賛成、というのであれば、それは果たして「愛国」と言えるのか。老朽化対策をするのになぜ大前提として民営化する必要があるのか。全く意味がわからない。

「水は人権か?」
 2010年、ベクテルによる水道民営化によって痛い目にあったボリビアの国連大使は、国連で“The Human Right to Water and Sanitation(水と衛生に対する人権)”と題した演説をした。

“飲料水と衛生の権利は、人生を最大限に謳歌する上で必要不可欠な人権です”

 自国の水道事業を、民営化によって無茶苦茶にされ、自国民の死者まで出したボリビアだからこそ出た、心からの主張であった。

 水は、間違いなく誰もが享受でき得るべき人権なのだ。

 水道事業民営化の危険性は、「外資に売り飛ばされる」などという稚拙な感情論ではない。民営化で合理化・採算性向上といえば聞こえはいいが、JR北海道の路線がどのようになったのか、さんざん報じられている現実を見ればその行く末もわかるだろう。鉄道であればバスなどの代替手段に変わることも可能だが、果たして「水道」という人間にとってもっとも欠くことのできないライフラインで合理性や採算性などという市場原理が相応しいのか甚だ疑問である。

 水道事業民営化の根本的問題は、合理性・採算性を大義名分として、「人権」が切り捨てられかねない点にある。 <文/HBO取材班>

◆2018年7月7日 文春オンライン  大山 くまお
http://bunshun.jp/articles/-/8096
ーオウム死刑執行とW杯に埋もれた「水道民営化」問題の“重要発言”まとめー

 W杯での日本代表の活躍に湧き、オウム真理教の松本智津夫被告ら7名の死刑執行に驚かされた7月第1週だったが、7月5日、水道事業の運営権を民間に売却できる仕組みを導入することなどが盛り込まれた水道法の改正案の採決が衆院本会議で行われ、自民・公明両党と日本維新の会と希望の党などの賛成多数で可決された。

 老朽化が進む水道施設の改修を促すための改正案だが、一方で「水道の運営権を民間企業に移すと安定的な給水が維持できなくなる」という批判もある。“水道民営化”にまつわる発言を集めてみた。


麻生太郎 副首相兼財務相
「この水道は全て国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものを全て民営化します」
ハーバー・ビジネス・オンライン 7月6日

  水道法改正案が審議入りしたのは6月27日のこと。働き方改革関連法案に押されて審議入りは未定だったが、6月18日に発生した大阪北部地震により21万人以上が水道の被害を受けたことで、「老朽化した水道」という問題がクローズアップされ、一気に審議入りした。与党は22日に会期末を迎える今国会での成立を目指している。

 市町村などの水道事業者は人口減による収入減などで赤字体質のところが多く、老朽化した水道管の更新が遅れていた。水道法改正案は、民間企業の参入を促すことで水道事業の経営を効率化し、水道管の老朽化対策を急ぐというもの。そのため、市町村などが経営する原則は維持しながら、民間企業に運営権を売却できる仕組み(コンセッション方式)も盛り込んだ。

 自民党は以前から水道民営化を推進しようとしていた。麻生太郎氏による「この水道は全て国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものを全て民営化します」という発言は、2013年4月にアメリカのシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)で行われた講演でのもの。麻生氏は「水道の民営化」を目指すと断言している。


山口那津男 公明党代表
「大阪の地震の被災地に関わる与野党の方々の理解も得て成立をはかりたい」
日本経済新聞 6月27日

 今国会で水道法改正案の成立を主導しているのは公明党だ。山口那津男氏は大阪北部地震を引き合いに出して成立への意欲を示していた。また、井上義久幹事長も自民党の二階俊博幹事長との会談で、「水道の老朽化に対応しなければならない」と強調していた(日本経済新聞 6月27日)。

 公明党が水道法の改正に積極姿勢を示すのは、来年の統一地方選や参院選をにらんだ動きだとされている。水道事業の経営悪化は地方の生活に直結するため、3000人の地方議員を抱える公明党は水道法改正案の成立にとりわけ熱心である。

水道法改正案とほとんど同じこと言ってた竹中平蔵

竹中平蔵 パソナグループ取締役会長
「国や地方などの公的部門がインフラの運営権を売却しその対価を得れば、それは間違いなく財政に貢献する」
日本経済研究センター 2015年6月3日

 内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、内閣府特命担当大臣(金融)などを歴任し、内閣日本経済再生本部産業競争力会議(民間)議員などを務めるパソナグループ取締役会長の竹中平蔵氏は、「『コンセッション』は日本を変えるか?」と題した記事で、「国や地方などの公的部門がインフラの運営権を売却」することを提案している。記事では空港の事例が取り上げられているが、語られている内容は今回の水道法の改正案にそのままあてはまる。 

 竹中氏は2013年4月に行われた第6回産業競争力会議でも「インフラの運営権を民間に売却して、その運営を民間に任せる。世界を見渡してみれば、港湾であれ空港であれ、インフラを運営する世界的企業が存在します」と発言している(議事録)。


麻生太郎 副首相兼財務相
「そんな技術ないです、ほかの国にそんな高い技術ないですから」
参議院議員 山本太郎 ホームページ 2017年3月22日

 2017年3月15日の参院予算委員会で山本太郎自由党共同代表に「人間が生きる上で二番目に大切なもの、何だと思われますか」と質問された麻生氏は、「人間で生きていく上に大事なことは、朝、希望を持って目覚め、昼は懸命に働き、夜は感謝と共に眠る、この気持ちだと思っています」とポエムで答えて話題となった。

 ちなみに山本氏は、一番目は「空気」、二番目は「水」だとしている。このとき、山本氏は麻生氏の「水道の民営化」発言について、「麻生大臣は、例えば海外の水メジャーが日本に入ってきてその民営化の一端を担うということがあったとしてもオーケーだと思われますか」と質問したが、麻生氏は「そんな技術ないです、ほかの国にそんな高い技術ないですから」とかわした。

マニラとボリビアの「民営化」失敗例
 そんなことはない。「水メジャー」は世界各地の水道事業に入り込んでいる。グローバルウォータ・ジャパンの吉村和就代表は、フランスのヴェオリア、スエズ、イギリスのテムズウォーターを「3大水メジャー」と呼ぶ(プレジデントオンライン 2013年9月19日)。なお、ヴェオリアは2012年4月から松山市の浄水場の運転業務などを受託している(水道事業の運営自体は受託していない)。

 しかし、民間の水道事業者が利益ばかり追いかけたことにより、「再公営化」が世界の潮流となりつつある。国際公務労連(PSIRU)の調査によれば、2014年の時点では35か国の少なくとも180の自治体が再公営化に踏み切っているという(ハーバー・ビジネス・オンライン 7月6日)。

 水道の民営化の失敗例としてよく知られているのが、マニラとボリビアの事例だ。マニラは1997年に水道事業を民営化したが、米ベクテル社などが参入すると、水道料金は4~5倍になり、低所得者は水道の使用を禁じられた。またボリビアは1999年に水道事業を民営化したものの、やはりアメリカのベクテルが水道料金を一気に倍以上に引き上げた。耐えかねた住民たちは大規模デモを起こし、200人近い死傷者を出す紛争に発展した。

「外資乗っ取り懸念は杞憂だ」
高橋洋一 嘉悦大教授
「水道の民営化は欧州で歴史がある。現在も5~6割以上で民営化されている。さすがにそこまで民間比率が高くなると、変な民営化の事例もなくはないということだ」
zakzak 2018年1月13日

 一方、「外資乗っ取り懸念は杞憂だ」と明言するのが経済学者で嘉悦大教授の高橋洋一氏である。高橋氏は「(水道民営化への)批判の根拠とする海外事例も極端なものばかりだ」と反論しているが、ライフラインの水がたとえ一箇所でも「変な民営化」されてしまったら大問題ではないだろうか?


山本太郎 自由党共同代表
「ライフラインは、水道は国民の命の源ですよ。これを税金でしっかりとやっていく、この最低限の憲法二十五条とつながった部分は国が責任を取るというのは当然のことです」
参議院議員 山本太郎 ホームページ 2017年3月15日

 先の麻生氏との質疑の後、山本氏はこう結論を述べて、水道法の改正案に反対の意を示した。しかし、実際に水道法の改正案は国会を通過しつつある。今後、“水道民営化”がどのような道を辿るのか、注視が必要だ。