ダム放流と水害と新たなダム事業(肱川など)

 7月5日からの記録的な豪雨により、西日本の各地で大きな被害が発生しています。今朝(7月8日)7時のNHKニュースは、51人死亡 6人重体 46人安否不明というすさまじい被害を報じました。
 愛媛県の肱(ひじ)川では、国土交通省の野村ダムの放水量が一気に増加したことなどにより、逃げ遅れた5人が亡くなりました。
 また、京都府の桂川では水資源機構の日吉ダムで貯水能力を超える恐れが生じ、6日夕に毎秒約900トンの放流を始めたため、水位が急上昇し、氾濫した水が道路に流れ込みました。日吉ダムは洪水調節と、京都・大坂・兵庫の水道用水開発のために水資源機構が1998年に建設した多目的ダムです。総貯水容量が6600万㎥、洪水調節容量が4200万㎥もある大規模ダムですが、今回の大雨では満水になって洪水調節機能が失われてしまいました。

 治水を目的としたダム建設では、あらかじめ机上で洪水規模を想定し、想定規模の洪水に効果を発揮するとしてダム計画を進めます。しかし、想定以上の雨量が増れば、ダムは洪水の調節機能を失って、逆に水害を増大させます。
 
 今回、甚大な被害が発生した愛媛県の肱川流域で、国が治水対策として進めているのが山鳥坂ダム事業です。山鳥坂ダムは当初の利水目的が不要となり、1998年には当時の与党三党(自民党・公明党・保守党)が中止を勧告しましたが、加計問題でも知られる加戸守行知事(1999~2010年)の強硬な働き掛けにより、治水専用ダムとして計画が継続された、いわくつきの事業です。ダム建設地は肱川の支流の河辺川で、山鳥坂ダムの流域面積は僅か64.7平方キロメートルと、肱川全体の流域面積の5.4%しかありません。しかも、ダム完成は2026年度が予定されており、完成までにはまだ時間がかかります。
 今回の水害をつぶさに検証すれば、巨額の費用と長い歳月を要しながら、治水効果が小さいダム事業に治水予算を集中させてきた河川行政の問題が浮かび上がってきます。

 こちらは、山鳥坂ダム事業について、今本博健京大名誉教授が人命を第一に考える河川工学の視点から問題を指摘した論考です。

 「山鳥坂ダムはいらない」市民集会
 あるべき治水対策-肱川治水の七不思議-
 http://suigenren.jp/wp-content/uploads/2013/04/c41c6da2e79cdcfa149b93a5db4b7af5.pdf

 こちらは、2018.7.8 西日本豪雨災害「愛媛県の河川の状況とダムについて」、ジャーナリストのまさのあつこさんのツイートまとめ
 https://togetter.com/li/1244693

◆国土交通省四国地方整備局 野村ダム 公式サイト
 http://www.skr.mlit.go.jp/nomura/index.html

◆国土交通省四国地方整備局 山鳥坂ダム 公式サイトより 鹿野川ダム管理
 http://www.skr.mlit.go.jp/yamatosa/kanogawadam02/index.html

下図=上記サイトより 肱川流域図

◆2018年7月8日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASL775CYGL77PTIL027.html?iref=comtop_8_07
ーダム放流、迫られた厳しい判断 「想定外の状況だった」ー

 「ここまで広範囲の大雨は、私の記憶の中でもかなり珍しい」。気象庁の梶原靖司・予報課長は7日の記者会見で、今回の記録的な大雨をこう表現した。

 数十年に一度の重大な災害が予想される場合に出される大雨特別警報。気象庁は6日午後5時10分、福岡と佐賀、長崎の3県で発表。その日のうちに広島、鳥取、岡山、兵庫、京都の5府県で出し、7日に入って岐阜県でも発表した。2013年に運用を始めて以来、9府県で発表したのは初めてだ。これまでは3自治体が最大だった。

 「記録的な大雨」はデータが物語っている。

 西日本では5日昼すぎから雨脚が強まり始めた。気象庁によると、岡山県内の7日昼までの48時間降水量は、鏡野町で421・5ミリを観測したのをはじめ、25カ所の観測地点のうち20カ所で観測史上最大を記録。残りの5カ所でも7月の観測史上最大の48時間降水量を観測した。広島県内でも33カ所のうち24カ所で観測史上最大を記録した。

 広い範囲で長時間にわたって降り続いた雨は、河川に流れ込み、各地で氾濫(はんらん)を引き起こした。

 「本当にもう、驚きました。2日間で約300ミリ近くという大雨が一気に降った」。日照時間が長く、「晴れの国」とも呼ばれる岡山県を襲った豪雨について、倉敷市の伊東香織市長は7日夕、やつれた表情で言葉を振り絞った。

 倉敷市真備(まび)町では、1級河川の高梁川の支流の小田川などで堤防が切れ、約700ヘクタールの範囲で浸水。屋根の上や木によじ登り、助けを求める人が相次いだ。救助が難航していることについて伊東市長は「一番大きな原因は、浸水域が広くなっていること。ボートを使って近づくことになり、難しい」と述べた。

堤防超えた水流

 愛媛県西予(せいよ)市野村町の肱(ひじ)川では、水流が堤防を越え、逃げ遅れた5人が遺体で見つかった。両岸の地区で床上浸水約570戸、床下浸水80戸に及んだ。

 西予市は3〜4キロ上流の野村ダムの放水量が一気に増加したことが原因の一つとみている。野村ダムは7日午前6時すぎ、放水量を1時間前の4倍以上に増やした。ダムを管理する国土交通省四国地方整備局野村ダム管理所によると、上流河川が未明に氾濫危険水位に達し、ダムも満杯になって貯水能力を超える恐れがあったためという。

 担当者は「今回はダム周辺に長時間、雨が降り続いた特異なケース。こんな状況での大量放水は想定していなかった。やむを得ない措置だった」と説明する。

 ダム管理所は放水の1時間前、サイレンや市内アナウンスでダム放水に伴う河川水位の情報を流し、西予市も防災行政無線で避難指示を呼びかけたという。愛媛県の中村時広知事は「本当に難しい判断だと思う。マネジメントを間違えると逆に決壊ということにもつながる」と述べた。

 観光名所の京都・嵐山を流れる桂川では6日夜に水位が急上昇し、氾濫(はんらん)した水が道路に流れ込んだ。近畿地方整備局によると、上流の日吉ダムで貯水能力を超える恐れが生じ、6日夕に毎秒約900トンの放流を始めたためという。

各地で土砂崩れ「現場に近づけず」

 土砂崩れも各地で頻発した。広島、愛媛、岡山、京都、兵庫など、広範囲で死者や行方不明者が出た。

 4年前の土砂災害で77人が死亡した広島県では、今回の大雨による死者・行方不明者が50人を超えた。「広島県内も広島市内も、救助の必要な場所が多すぎる」。広島市危機管理室の担当者は悲鳴を上げた。

 現場に至る道は、土砂や冠水で容易に近づけない状態だ。記者会見した松井一実市長は「なかなか現場に近づけない。救助を待っている人もいるので、早急に対応したい」と述べた。

 7日午前に記者会見した菅義偉官房長官は「全国に広がるような形で、東日本、西日本、さらには北日本にかけて、記録的な大雨になる恐れがある」と注意を呼びかけた。

◆2018年7月6日 産経新聞
http://news.livedoor.com/article/detail/14974929/
「上流のダムが貯水限界超えており放流」桂川水位上がり氾濫の危機も

 国土交通省近畿地方整備局は6日、降り続く大雨の影響で水位が上がっている京都府を流れる桂川について、上流にある日吉ダム(同府南丹市)が同日午前7時時点で貯水できる限界を超えたため、毎秒約1千立法メートルの放流を行っていると明らかにした。

 桂川下流にある京都市右京区の嵐山などでは同日夜に最大水位に達する見込みで、「氾濫の可能性もある」と注意を呼びかけている。

 同日記者会見した近畿地方整備局の中込淳・河川部長は、「(放流で)ダム下流の水位が急激に上がっている。長時間の雨で堤防が弱くなっており、最悪の場合、堤防が決壊して氾濫する可能性もある」などと話し、周辺自治体に対して、川の近くに住む住民に避難を呼びかけるよう連絡していると明らかにした。

◆2018年7月6日 京都新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180706-00000069-kyt-l26
京都・日吉ダム、初の非常ゲート放水 最高貯水位超す

 大雨の影響で京都府南丹市の日吉ダムは6日午後2時に最高貯水位を超過したため、1998年のダム運用開始以来、初めて非常用ゲートによる放水を実施した。
 水資源機構日吉ダム管理所は「2013年の台風18号以来の非常事態」としている。