西日本豪雨で愛媛県・肱川の野村ダムと鹿野川ダムが大量放流した問題で、両ダムの操作規則が、より頻度の高い中小規模の洪水を防ぐため、平成8年に事前の放流量を抑える規則に改定されていたことが報道されています。
この改定がなかったとしても、今回の豪雨には対応できなかったと思いますが、ダムの洪水調節効果の頻度を上げるため、中小規模の洪水用にダムの洪水調節ルールを変えることが他のダムでも行われています。
八ッ場ダムもそうです。2013年の基本計画の変更で、大洪水規模用であったダム放流ルールを中洪水規模用に改定しました。この変更によって、大洪水に襲われた時は、八ッ場ダムは洪水調節機能を失ってしまうと予想されます。
この問題については、以下のページで解説していますので、ご参照ください。
「八ッ場ダム基本計画変更案(第四回)に盛り込まれた洪水調節ルールの変更」(2013年10月16日)
https://yamba-net.org/wp/5917/
関連記事を転載します。
◆2018年7月30日 産経Biz
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180730/mca1807301549014-n1.htm
ー愛媛の2ダム規則、豪雨に対応できず 放流量抑制、8年に改定ー
西日本豪雨で愛媛県の肱川(ひじかわ)上流にある野村ダム(西予(せいよ)市)と鹿野川ダム(大洲(おおず)市)が大量放流した問題で、両ダムの放流量などを決めている操作規則が、記録的な大雨に対応していなかったことが29日、関係者への取材で分かった。より頻度の高い中小規模の洪水を防ぐため、平成8年に事前の放流量を抑える規則に改定されていた。
西予市と大洲市では大量放流後、大規模な浸水被害が起きるなどして9人が犠牲になった。規則は20年以上改定されておらず、国などダムの管理側は見直しを検討している。
国土交通省四国地方整備局によると、両ダムは流入量が一定程度になるまでそのまま放流。8年6月の改定で、野村ダムは放流を始める流入量を毎秒500トンから300トンに変更し、放流のタイミングを早めた。
また改定前は、放流開始後もダムへの流入量に応じて放流量を増やし、その後に固定していたが、改定後は貯水量が4割を超えるまでは放流量を固定、その後増やすようにした。改定で放流する量が減り、中小規模の洪水は起こりにくくなった。一方でダムにたまる水の量は増え、記録的大雨に対応できなくなった。
この改定には背景がある。7年、下流の堤防整備が十分でなかったため大洲市で浸水被害が発生。住民や自治体から「大規模な洪水ではなく、頻繁に起こりうる中小規模の洪水に合わせた操作にしてほしい」との声が上がっていた。
同整備局は「記録的な雨では現在の規則ではより危険だと認識していたが、住民の声などから採用していた」と説明。「今回のデータなどを基に検証する。規則は見直さざるを得ないのではないか」としている。
◆2018年7月29日 共同通信
https://this.kiji.is/396251645794878561?c=39546741839462401
ーダム規則が豪雨に対応せず、愛媛 放流量抑制、96年に改定ー
西日本豪雨で愛媛県の肱川上流にある野村ダム(西予市)と鹿野川ダム(大洲市)が大量放流した問題で、両ダムの放流量などを決めている操作規則が、記録的な大雨に対応していなかったことが29日、関係者への取材で分かった。より頻度の高い中小規模の洪水を防ぐため、1996年に事前の放流量を抑える規則に改定されていた。
西予市と大洲市では大量放流後、大規模な浸水被害が起きるなどして9人が犠牲になった。規則は20年以上改定されておらず、国などダムの管理側は見直しを検討している。
—転載終わり—
肱川の野村ダムと鹿野川ダムの流入量と放流量を示すグラフ
(「ダムがあるために避難の時間が失われた(肘川の水害)」より)