7月の西日本豪雨により、肱川上流では九州地方整備局の野村ダムと鹿野川ダムが短時間で満水となり、緊急放流を行った結果、ダム下流では氾濫により大きな水害に見舞われました。大洲市では4人、西予市では5人の方々が亡くなっています。国交省九州地方整備局が避難のあり方等を検証することになり、これに伴い、地元の市長の発言が報道で取り上げられています。また、中村時広愛媛県知事は、土砂災害で多くの犠牲者を出した広島県と連携して、国に再発防止改革を要望するとのことです。
◆2018年8月1日 朝日新聞愛媛版
https://www.asahi.com/articles/ASL705TH3L70PFIB00N.html
ーダム放流で5人死亡 西予市長が運用見直し求めるー
西日本豪雨による野村ダム(西予市野村町)の緊急放流後に肱川があふれ、下流で5人が死亡するなどの被害が出たことについて、西予市の管家一夫市長は31日の市議会臨時会で「ダムが守ってくれるという安心感が、私を含め多くの人たちがお持ちであった。異常気象が日常化した昨今、従来通りのダムの運用では対応できないことは今回の災害からも明らかだ」と述べ、国に対して抜本的対策を市民に提案するよう求める意向を示した。
市議会は31日の臨時会で豪雨の復興に充てる総額26億5100万円の一般会計補正予算案など11議案を可決、承認。8月6日からは総務企画部に課長以下5人体制の「復興支援課」を新設し、野村支所には「野村復興支援室」を設ける。(大川洋輔)
◆2018年8月2日 愛媛新聞
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201808020082
ー大洲市長「反省」発令基準変更を検討ー
西日本豪雨に伴う大洲市の対応について、二宮隆久市長は1日の記者会見で、鹿野川ダム直下の肱川地域が甚大な浸水被害を受けたことに「避難について考えていく必要があると反省している」とし、ダム放流量や降雨量を勘案し避難情報の発令基準変更を検討する考えを示した。
二宮市長は「ダムが(1959年に)完成してから(肱川地域の)浸水の記録はない」と述べた。現時点の考えとした上で「下流(長浜地域)と中流(大洲盆地)は水位で対応していく必要がある」と話した。避難情報は「確実に伝える方法を考えたい」と強調。メールやサイレンなどの活用も検討したいと語った。
国土交通省が主催する野村、鹿野川両ダムの操作や住民への情報提供の在り方を検証する会合の結果などを踏まえるとした。
市によると、避難情報は市を九つのエリアに分け発令。大洲、長浜両地域は大洲第二と大川の両水位観測所の水位などを基準とし、放流量は含んでいない。肱川地域は水位に関して具体的な発令基準がない。二宮市長は「現行ルールに乗っ取って判断をしたが、大きな被害が出た」と述べた。
国交省山鳥坂ダム工事事務所長とのホットラインで入った「野村ダム2千トン、鹿野川ダム6千トンの放流見込み」との情報については「雨の降り方が本当に尋常ではなく、どういう事態になるか想定できなかった。私自身も経験が浅いこともあり、迷惑を掛けたかなと思う」と振り返った。
鹿野川ダムを管理する国交省の対応には「放流についてはおそらく、決壊の危険性を踏まえ苦渋の上で操作されたのではないかと理解している。ダムにより浸水被害の軽減が図られたと思っている」とし、現時点では問題ないとの認識を示した。
◆2018年8月2日 愛媛新聞
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201808020084
ー愛媛・広島両知事会議 豪雨被害「検証重要」再発防止改革を国に要望へー
広島・愛媛交流会議が1日、広島市のホテルであった。中村時広知事と湯崎英彦広島県知事らは愛媛で26人、広島で108人の犠牲が出ている西日本豪雨被害に関して、教訓を得るために検証が重要と一致。両県が連携し、復旧や再発防止への制度改革を国に要望していくことを確認した。
中村知事は、愛媛では大雨特別警報発令が大きな被害の発生後だったとして実効性を疑問視。避難も、指示ではなく勧告なら大丈夫と考えて行動しない人が多いと指摘し、避難情報の表現や住民伝達の在り方も検討すべきだと提案した。
湯崎知事は、土砂災害警戒区域内で多くの犠牲者が出ており「区域を指定しても避難してもらえなければ命は守れない」と述べ、避難につながらなかった原因の検証が必要と強調した。
両県の商工会議所連合会会頭も出席し、観光や産業の早期立て直しに向けた連携を訴えた。
会議後、中村知事は取材に「(両県は)同様の立場で災害に向き合っており、国への要望は単独でやるより伝わる力が大きいと思うのでスクラムを組んでいきたい」と話した。
愛媛県災害対策本部によると、復旧復興に向け、国や他県と連携した活動が各地で行われている。
行政間の応援職員の状況は1日正午現在、大洲、西予、宇和島、松野の4市町で、総務省が中心となって派遣した県外の自治体職員計109人が罹災(りさい)証明書発行や避難所運営などを担当。経済産業省による中小企業の被害把握や国土交通省の重機提供、自衛隊の給水などが続いている。