水道民営化問題について、荻原博子さんの「女性自身」のインタビュー記事がBLOGOSに掲載されています。
問題を整理してわかり易く伝えています。
◆2018年8月17日 BLOGOS
http://blogos.com/article/318624/?p=1
ー世界では死者も出て再公営化に…水道民営化はこんなに危ない!ー
7月22日に国会が閉会した。モリカケ問題で紛糾していた印象があるが、実は、政府が先の国会に提出した法案65本のうち、60本が成立している。「議論を尽くしたとは言えない法律が多すぎます」と語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。なかでも私たちの生活を揺るがしかねない進行中の法案を荻原さんが解説してくれた――。
特に、「水道法の改正」は衆議院の委員会で、わずか2日間のべ8時間しか審議されていません。それでも衆議院で可決。参議院では時間切れで継続審議になりましたが、次の国会は、参議院審議から始まります。残念ながら、成立はもう時間の問題でしょう。
しかし、改正水道法には、私たちの生活を揺るがしかねない大きな問題が含まれます。
これまでは、水道事業を民間に委託することはあっても、主体は自治体にありました。ですが、改正水道法が成立すると、運営権そのものを民間にゆだねる“実質民営化”となってしまいます。私たちの大切な生活インフラを、民間に任せていいのでしょうか。
1つの答えとして、約30年前に分割民営化された国鉄、今のJRを見てみましょう。明暗がくっきり分かれています。
“暗”の代表はJR北海道です。営業赤字が年400億円を超え、先月、5路線5区間を廃止する方針を固めました。また、国土交通省も2年で約400億円の財政支援を決定。危機的な状況が続いています。
いっぽう、“明”はJR東日本、西日本などで、収益は右肩上がり。今年3月期決算でも、純利益が過去最高を更新しました。
もし、全国を一括管理する国営だったら、これほどの差は生まれなかったでしょう。生活インフラは、民営化にはそぐわないのです。
世界を見ると、水道の民営化は’90年代から盛んに行われました。しかし、水道料金の引き上げや水質の悪化などを招いた、失敗事例がたくさんあります。
【ヨハネスブルク(南アフリカ)】’94年民営化
水道料金が高騰し、料金未納で1,000万人以上が給水停止に。汚染された小川や井戸などから水を飲んだことで、コレラが大流行。300人以上が死亡。→’02年に一定量の水を無償化。
【マニラ(フィリピン)】’97年民営化
水道料金が4~5倍に上昇。料金が払えない貧困層に給水を停止したうえ、水を分けたり売ったりすることも禁止。水質が悪化し、コレラに600人以上が感染。→’02年に再公営化。
【アトランタ(アメリカ)】’98年民営化
排水管の破損や泥水の噴出が相次いで起こる。その対応も遅く、不満が続出。→’03年に再公営化。
【コチャバンバ(ボリビア)】’99年民営化
水道料金が2倍以上に上昇。料金が払えない家庭には給水を停止。’00年に起きた大規模デモで死傷者が約200人にのぼり、「水戦争」と呼ばれる。→’00年に再公営化。
19世紀、水道の開設当初から民営のフランスでさえ、値上がりがひどく、’10年に公営化しています。世界で民営化された水道事業はたくさんありますが、そのうち、37カ国の235の民営化事業が、再び公営化しているというデータもあります(’00~’15年3月・公共サービス国際研究所)。今から民営化して、うまくいくとは思えません。
また、今でさえ、水道料金には大きな地域差があります。家事用20立方メートルあたりの1カ月料金が、もっとも高いのは北海道夕張市で6,841円。もっとも安いのは兵庫県赤穂市の853円と、実に、約8倍です(’16年・日本水道協会)。
利益を追求する民間が運営すれば、水道管の老朽化が激しい地域、人口の少ない過疎地域などで、水道料金がもっと上がっていくのではないかと心配でたまりません。